雨月 ひより
2024-03-02 22:14:19
5667文字
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Jealousy and hatred swirling

Twitter(X)のハッシュタグ『#ハロウィンなのでトリックオアトリートってリプしてくれた人にさらさら〜とお菓子という名のSSをあげる』
のリクエストで書いたライオコンボイさんとスタースクリームさんのお話。
リクエスト内容は『ドライと言うか暗めのSS』
タイトルは『うず巻く嫉妬と憎しみ』と言う意味です。

ザアァァ

雨が降り続いているからもあって、ここの所ずっと彼がデストロン基地に留まったままでいた。

今日みたいなある雨の日、ガルバトロン様は突然、デストロン全員をメインルームにお集めになられたと思ったら、彼を一緒に連れて来て、まさかの『親しい間柄宣言』をなされた。

それに驚いたのも束の間

『有無は言わさん』と念を押されて聞きたかったことは何も聞けなくなってしまった。

(何故、ガルバトロン様は

彼とはいつの間にそんな関係になったのかしら



ある時から毎晩、遅い時間にガルバトロン様が基地をお出になっていたことは知っていた。

でも、何処へ行っていたのかまでは分からなかった。

だって聞くのは野暮でしょう?

その日の任務が終わればあとは各自プライベートな時間だから、何をするのかなんて聞くことはしなかった。

私達も聞くことなんてしないし、聞かれたくもない。

ガルバトロン様だってそれは同じことでしょう。

そうやって毎晩遅い時間に彼との逢瀬を重ねて愛を育まれていたと言うことなのね

それはとてもロマンチックで素敵な話でもあるけど、問題はそこではないのよ。

「っ

何故、ガルバトロン様は彼をお傍に置きになるの

彼は我々デストロンと敵対する者なのに

ガルバトロン様が親しくなり基地に連れて来たのは、我々デストロンと敵対するサイバトロンの戦士であり、上に立つ者。

サイバトロンの総司令官のライオコンボイだった。

我がデストロンの破壊大帝とサイバトロンの総司令官が親しくなることも問題だけれど、それ以上に、ライオコンボイがガルバトロン様と互いに惹かれ合っていると言うことが一番納得がいかなかった。

ガンッ!

雨が降る窓の外を見ながら、握り拳を壁に振り下ろした。

少し強めに叩いたから、手が痺れて痛い

(何故なのですか、ガルバトロン様っ!)

私はデストロンの航空参謀、スタースクリームよ。

私の役目はガルバトロン様のお傍で補佐をすること

今までずっとそうだったのに、ガルバトロン様は彼を連れて来てから変わられたように感じた。

今、ガルバトロン様のお傍にいるのは私ではなく、敵であるライオコンボイ。

ガルバトロン様のお傍で補佐出来ることが私にとってどんなに名誉なことか



私がまだ何処の小隊にも属していなかった頃、ガルバトロン様が小隊を立ち上げると噂で聞いた時、すぐ赴いて自ら入隊を希望したの。

ガルバトロン様はデストロン軍の中でもとても秀でておられて、私にとっては雲の上の存在だった。

これからもずっとガルバトロン様とは関わらずに一生を終えるのかと思っていたけど、チャンスは突然、巡ってきたの。

ガルバトロン様がご自分の小隊を立ち上げると聞いた時、入隊を希望した。

希望しても受け入れられるかは別問題で不安はあったけど、すぐに受け入れられたことは物凄く嬉しくてその時のことは今でも鮮明に思い出す。

尊敬しているお方のお傍にいられると言うのは本当に嬉しいことなのよ。

「それをっ」

連れて来て間もない、ましてや敵である彼にその隣を奪われた。

今、ガルバトロン様はライオコンボイと一緒におられる。

きっと、お二人で談笑しているのでしょうね

惹かれ合っているのなら一緒にいるのは当然のことなのだけど、私は認めたくなかった。

ずっと憧れのお方を取られたと言う気持ちが強くて、彼が来て幾分か経っているけど未だに受け入れることが出来ないでいた。

ガルバトロン様は私の物ではないし、私はガルバトロン様にとってはただの部下である、そこは弁えているわ。

弁えてはいるけど、認めたくないこともあるし、受け入れたくないことだってあるの。

ただでさえ雨だと憂鬱になるのに、ライオコンボイが留まっていて、ガルバトロン様と共におられるのが私を更に憂鬱な気分にさせているわ

こんな気分になると、いつもスパークの中で得体の知れない嫌なモノがぐるぐると巡っているの。

お二人だけでいるのを想像するだけで、この嫌なモノが更に渦を巻く

(まさか、この感じって

スパークの中で渦巻いているこの嫌なモノが嫉妬と言うモノだと気付いた

だとすれば、私はライオコンボイに嫉妬していることになる。

(何故?)

ずっと憧れているガルバトロン様のお傍を取られたからなの?

それとも、ガルバトロン様とライオコンボイが惹かれ合っているから?

考えてみると、そのどちらにも当てはまっていた。

(浅ましいわね、私も

ライオコンボイに嫉妬すると言うことは、私はガルバトロン様に対して尊敬や憧れ以外の感情を持っている言うことよ。

尊敬や憧れ以上に私はガルバトロン様のことを想っている証拠

(私ったら、それ程までにガルバトロン様のことをお慕いしているのね

嫉妬によって露になった自分の本当の気持ちに気付いてしまった。

私は自分のこの感情に気付かないふりをしていただけだったのね

本当は私は

その感情を声に出してしまったら私はガルバトロン様の補佐をすることが出来なくなる。

お傍にいられなくなってしまうのが恐いから気付かないふりをしていたのに

お傍だけじゃない、この小隊にもいられなくなってしまうわ

自ら入隊を希望して受け入れられたのに、拒否されたら、これまでの努力は水の泡になるのよ

その方が辛くて堪えられないから、この感情を押し殺していたのに。

気付かないふりをしてきたのに

だけど、気付いたところで、この気持ちを言う訳にはいかないのよ。

言わなくてももう、答えは出ているじゃない。

(だって、もう



シュン

外で降る雨の音に混じって遠くから扉が開く音も聞こえてきた。

そして、何かを話している声も遠くから聞こえてきたわ。

何を話しているかまでは分からないけど、二人程いるのは何となく分かった。

そして、遠ざかる足音と此方に向かって来る足音も聞こえた。

シュン

………………

もう一度扉が開く音がすると、今度は私がいるこの部屋に誰かが入って来たような気がした。

声は発していないけど、後ろから気配だけは感じる。

確認の為だけに振り向くのも面倒だから、私は外を見たままでいた。

誰なのか確認しようにも窓ガラスは外の雨で濡れた水滴しか見えないわね

まぁ、興味ないから誰が入って来たって構わないけど。

「先客がいたのか

小さく呟いた声が後ろから聞こえてきた。

ピク

さっきの誰が入ってきてもは訂正する。

その声は私が今、一番会いたくないし、聞きたくない相手のものだった。

(ライオコンボイ!)

彼の姿も見たくないから私は窓の外を見たままやり過ごすことにするわ。

ライオコンボイが此処に来たと言うことは、先程までガルバトロン様と一緒にいたことを意味する。

遠ざかって行った足音はガルバトロン様の方だったのね。

「雨、まだ止みそうにないな

独り言なのか私に話しかけているのかは分からない。

後ろの足音は此方に近付いて来ると私の隣で止まり、窓の外を見始めた。

(よりにもよって何で隣なのよっ!)

嫉妬の原因がすぐ隣にいる。

此処が基地の中じゃなくて外だったらすぐに銃口を向けているわ。

だって私達は敵対する者同士ですもの。

デストロンとサイバトロンは相容れない存在だと私は思っているからよ。

目指すものも違うし、根本的な考えも違うわ。

「憂鬱な顔をしているな、君も雨が嫌いなのか?」

窓の外を見ながら隣にいる私に話しかけてきた。

彼が話しかけてこなかったら無視するつもりでいたけど、話しかけられてしまったら仕方ないから答えてあげることにする。

「えぇ、嫌いよ」

『あなたのこともね』とは言わなかったけど、わざと語気を強めて答えたわ。

元々雨は嫌いな方でもあるけども。

「確かに、お互いに機械の身体だ。濡れてしまうと支障を来すな

このヒト、はっきり伝えないと分からないタイプみたい。

嫌味を含めて言ったのに、全く気付いていないわ

私が憂鬱な原因は雨だけじゃない。

その原因が隣で私と同じく窓の外を見ている彼なのに全然気付かないなんて、鈍感ね。

「しかし、これ位の降りなら私は好きだ。音が心地良い

「そう

何だか調子が狂うわ。

サイバトロンの総司令官ってこんな感じなの?

上に立つ者ってもう少し堅物と言うか、威厳がある感じじゃないの?

何なの、この穏やかな感じ。

このヒト、本当に総司令官なの?

隣りにいるのが本当にあの、サイバトロンの総司令官なのかと疑ってしまう雰囲気を出していた。

(もしかして彼のこんな感じの所が?)

この穏やかで優しい雰囲気にさせる所にガルバトロン様は惹かれたと言うの

穏やかで優しい雰囲気これは私には無いものだった。

無いどころか私には無縁のものよ。

(私に無いものを彼は持っているのね

自分が持っていないそれを見せ付けられたように感じて、とても悔しい。

スパークの中で嫌なモノの渦が増した気がした。



シュン

再び扉が開く音がした。

「ガルバトロン」

隣りにいたライオコンボイが扉が開いた音に反応して振り向くと、ガルバトロン様がいらしたみたい。

(ガルバトロン様!?)

私が振り向くと彼はガルバトロン様の元へと歩き出していた。

「あぁ、分かった。すぐ行く

近付いてきた彼と何かを話すとガルバトロン様はすぐ部屋を出てしまわれた。

彼の話は聞こえてきたけど、ガルバトロン様が彼に何を話していたのかは聞こえなかった。

ほんの僅かでも二人だけの時間を見せ付けられたみたいで少し嫌な気分になったわ。

それを見たくなかったから、視線を変える為、ちらりと窓の外を見ると、薄暗くなっていた。

雨が降っている日は日中でも暗く感じるのに、更に暗くなるのも早いような気もする。

それ程彼とも話していないのに、時間が過ぎていくのが早く感じるわ。

今思い出したけど、私にもまだやらなきゃいけないことが残っていたんだった

そう、此処にいたのはただ休憩をしていただけだったの。

それがこんなに時間が過ぎていたなんて

早く済ませなくちゃ。

用事を片付けに部屋を出る為、ライオコンボイの近くを通り過ぎた時だった。



「君が奴のことを慕っているのは見ていて分かった。だが

突然のその言葉に慌てて振り返ると、彼が此方に向かって歩いて来ていた。

「私は君以上に、奴を愛している。君には渡さない」

そして、すれ違いざまに釘を刺された。

先程までの穏やかで優しい雰囲気は一気に無くなった。

発せられた言葉には笑みが含まれていたけど、彼の黄の目の奥にあるレンズは私を睨んでいるように見えた。

「ッ!」

彼はそのあとは何も言わず、軽く手を振ると、私よりも先にこの部屋から出て行った。

シュン

彼より先に部屋を出る筈が、突然の宣言によって出られなくなってしまった。

扉が閉まって漸く我に返る。



「な、何よ、あれっ!?」

彼のスキャン元であるライオンの特性なのもあるのか、私を睨み見たあの目はまさしく獲物を狩る目だった。

あの黄の目に睨まれて怯んでしまった。

そのあとは何も言わなかったけど、あの目は確実に『邪魔者は消す』と訴えていた。

(こ、恐かった

突然のことで驚いたのもあったけど、恐くて何も言い返せなかった。

「あれが、サイバトロン総司令官の本性なのっ?!」

穏やかで優しい雰囲気は、一瞬だけ見せたあの殺気を隠す為のものだったのよ。

『私が本気を出せばこんなものでは済まない』と言うことを思い知らされた。

(私は、ライオコンボイには勝てないっ)

流石は我がデストロンの宿敵であるサイバトロンの総司令官よ。

戦いの実力は私よりも遥か上でしょう。

当たり前よね、総司令官なんですもの。

戦いでは勝てないことが分かっているけど、ガルバトロン様をお慕いすることだけは負けていないと思っていたのに。

…………………

スパークに渦巻いている嫌なモノが身体中を巡って噴き出してきそうだった。

嫉妬以上に彼には激しい何かが込み上げていた。

実力で勝てないのなら私はどうしたら

どうすれば彼に勝てるの?!



ガンッ!

私は再び壁を叩いた。

ガン、ガン、ガンッ!!

今度は何度も拳を振り下ろす。

叩いている手はとても痛いけど、壁には傷一つ付かなかった。

悔しい、悔しい、悔しいっ!!

「ッ!」

スパークから感じていた嫌なモノは身体中を、とうとう全てを巡った。

彼に感じた嫉妬以上のモノ、その正体は憎しみだった。

嫉妬以上に憎しみが勝り身体中を巡っていた。

私が無いものを持ち、私が欲しいと思ったものを奪っていこうとする彼が憎くなった。

「良く分かったわ

『奴を愛している。君には渡さない』と、私を睨みながら言ったあれは宣戦布告として受け取ったわ。

あちらがその気なら私も堂々と彼から奪い取るまでよ。

このデストロン軍に、いえ私にとってとても大事な、大切なお方であるガルバトロン様を彼から奪い取る!

どんなに汚い手を使ってでも彼から奪い取ってみせるわ。

ライオコンボイが悔しさ、私に対して憎しみを浮かべる顔を必ず見せてあげる

「それまで覚悟しておくことね、ライオコンボイ!!」



ガンッ!

最後に思いっ切り壁を叩くと、私は部屋を出た。