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小椋
2015-07-24 23:42:33
1364文字
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【つるみか】ワンドロ第十三回
※ お題:色とりどり、明日虹が出たら
そろそろ行くかと腰を上げようとしたところで、三日月は一つの足音が近づいてくることに気づいた。聞き慣れた微かな響きは、いつもより心なしか弾んでいる。思った通り、三日月の部屋の前でぴたりと収まった。
「三日月。入ってもいいか?」
聞き間違えるはずもない。鶴丸の声だ。
「いいぞ」
「邪魔するぜ」
すらりと障子戸を開けて、目当ての相手が入ってくる。今夜はこちらから赴くつもりでいたのだが、見事に先を越されてしまったようだ。とはいえ、こうして会えたのだからよいかとすぐに片づけて、三日月は傍に腰掛けた鶴丸に笑いかけた。
「ん? なんだか今日は機嫌がいいな」
「そうか?」
そんなに顔に出ているのだろうか。首を傾げつつ頬に手を当てれば、鶴丸は喉を鳴らして笑ってみせる。
「お前こそ機嫌がよさそうに見えるぞ」
「いいことがあったからな」
「いいことか」
「ああ。昼過ぎに雨がざっと降ったかと思えば、すぐに晴れてな。見事な虹が出た」
「そうか」
「だいたいは欠けてるもんだが、珍しく綺麗な太鼓橋になっていたからな。短刀たちも喜んでたぜ」
虹の立派さを身振り手振りを交えて語る鶴丸は、無邪気に金の眼を輝かせている。それだけの驚きを得られたということなのだろう。
「君にも見せたかったな」
ぽつりと落ちた呟きに、三日月はゆるりと目を細める。
遠征に赴いていたのだから、居合わせられなくても仕方のないことだ。それでも残念だと感じていた気持ちを、そっと掬われた気になった。
「俺もいいことがあったぞ」
「おっ、なんだなんだ?」
懐に隠し持っていたものを差し出せば、鶴丸は目を丸くしながらそれを受け取った。丁寧に畳んだ懐紙が、掌の上でゆっくりと開かれていく。
「こんぺいとうか」
丸みがかった角の生えた小さな飴は、桃色と黄色、水色、黄緑色、紫色、橙色、白色のやわらかな輝きを帯びている。任務を達成して無事に帰還するなり、労いの言葉と共に主が振る舞ってくれたものだ。
「遠征が大成功に終わった褒美だと言っていたな」
「おやおや。普段はそんなもんくれないくせになあ」
「万屋で目についたらしい。虹とは違うが、これも七色だぞ」
「ああ。綺麗なもんだ」
返そうとしてか寄越された手から、三日月は直接こんぺいとうを摘み上げた。ぱくりと含めば、舌の上に優しい甘さが広がっていく。
そのまま目で促すと、意を解した鶴丸がそれを口に運んだ。ひょいと放り込んだかと思えば、からりと澄んだ音を鳴らしている。とげとげした感触ごと味わっているのだろう。
「ちょうどいい甘さだな」
「うむ」
三日月はもらい受けてすぐに一粒だけ舐め、あとは大事にとっておいた。鶴丸と一緒に食べたかったのだ。気に入ってくれたのならなによりだと、三日月は口元を綻ばせる。喜びと共に甘味をじっくりと堪能していると、鶴丸はにやりと口角を持ち上げてみせた。
「いいものを分けてくれた礼に、明日は俺がいいものを見せよう」
「虹か?」
「ああ」
今日の明日で出るものではないだろうに、鶴丸の顔は自信に満ちている。
さて、いったいどんな驚きをもたらしてくれるつもりでいるのだろうか。
新たな約束と確かな楽しみが増えたことに、三日月はそっと微笑んだ。
小椋@OgrYtk
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