Cii
2024-03-01 17:30:35
285文字
Public アイデア
 

いちごアイス

台本にするには足りない話

試食で手渡されたのは
食えないフレーバーのアイスだった
十五年前は口内に放り尽くす程食べていたらしいが
もうこの舌では受け付けてはくれない様で
十年前から美味しいと言う感想を
吐けた試しがない

とはいえ笑顔で用意してくれた店員の好意を
無下にするのも嫌で
スプーン一さじすくわれた
そのアイスを口に放り込んだ
酸っぱくて、酸っぱくて
やっぱり食うんじゃなかったと思うのに
嫌いなその味がどうしてか懐かしくて
手渡されたたったの一口が
どうしようもなく物足りなかった

もう覚えてもない十五年前の喜びを
再び感じたいのだろうか
記憶というのは、どうにも厄介だ