HAZURE_Mapo
2024-02-29 22:21:42
1596文字
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根底の思い

勢いで書きました。CPクロレナ。ほんの少しBL。何でも許せる方向け。

 十賢者を倒した後、クロードとレナはエクスペルに戻ったが、特に定住地を決めずに2人で各地を移ろいながら気ままに暮らしている。
 この日は久しぶりに港町ヒルトンで宿を取り、潮の匂いが程よく漂う青空市場で目新しいものはないかと散策していた。特に変わったものはなかったが、人だかりが出来ている場所があった。気になった2人は近寄ってみると、最近ここで商売を始めたというケーキ屋だった。ケーキが好物のレナは鮮やかな色合いのケーキが並ぶショーケースに自分の顔が写し出されそうなぐらい近づき、どれにしようかなと目を輝かせながら自分の位置を右へ左へ移動している。こうなったら購入することは決定済みだ。


「(前にもこうやって、どれにしようと2人で迷ったことがあったな。どれでもいいというぼくに、もう少しこだわりを持てと言われたっけ)」


 悩んでいるレナに、後ろの人が待ってるから早く選んだほうがいいよと話しかけると、私は決められないからクロードが決めてと主導権が戻ってきた。たまに出る優柔不断がここで出たかと少し困り顔になったクロードだが、これだけ悩んでるレナならどれを選んでも美味しいと言うだろうと考え、自分が今一番食べたい洋梨のコンポートを選んだ。もちろん2個注文した。

 食べた事のない店のケーキに上機嫌のレナは、手繋ぎながら宿に帰ろっかと満面の笑みでクロードの顔を覗き込み、返事も待たずにクロードの左手に自分の右手を絡めた。クロードはそんなレナを見て目を細める。


「(昔は恥ずかしそうに言ってきたのに、今は堂々としているな。ぼくもそうだったらよかったのに)」


 宿に着き、部屋の2人掛けソファに並んで座り、購入したケーキを鼻歌混じりに取り出すレナ。
 美味しそう!さ、食べましょ。
 食べる合図をレナが掛ける。いただきますと2人は感謝を述べ、パクりと一口。とろけそうだと頬を抑える仕草をし、美味しい美味しいと味わいながらフォークを進めるレナを見つめる。やっぱりぼくは正しかった。レナは美味しくないと言う訳ないんだとクロードはほくそ笑む。

 ふと見ると、レナの左耳の後ろから伸びる少し長い髪の束に何かが付いているのに気がついた。
 「レナ、ちょっとそのまま」
 「? えぇ、わかったわ」
 「……よし取れた。何だろう、ベタベタするな」
 「あら、コンポートの上にかかっていたシロップかしら。いつの間に付いたのかしら。食べるのに夢中で気が付かなかったわ。ありがとう、クロード」


 「(あぁ……あの時も腹が減ったと食べる事に夢中になって、長い髪の毛に付いた焼き鳥のタレに気付いていなかったな。すまない、礼を言う、と少し笑って言われたな)」


 紺碧色の髪、跳ねた頭頂部の癖毛、はにかんだ笑顔。
 脳裏に浮かぶのは、過去に愛した彼の事。

 その彼は、もういない。


 クロードはシロップの付いた親指でレナの下唇に触れ、そのまま顔を近づけて口づけした。

……急にどうしたの、クロード。」
 驚きと不安が入り混じった表情をするレナだが、クロードもまたそれに近い表情を一瞬だけ見せ、すぐにいつもの柔和な顔に戻った。
「何でもないよ。
 いや、何でもなくはないけど、レナが可愛いなって思ったから。それにしても、レナの唇、甘くて美味しかった。ごちそうさま」
「もう!クロードったら!」


 レナを大事に思っている気持ちに偽りはない。
 けれどその奥にある、もう一つの閉じ込めている大事な記憶がレナを通して思い出される。
 クロードは自分がレナを通してディアスを見ていることに申し訳なさを感じているが、どうする事も出来ずに踠いている。

 いつかこの事をレナが知ったら、どう思うだろうか。
 その事を考えてしまい、自分が好きで選んだはずの洋梨のコンポートは、まるで味がしなかった。