わんほり
2024-02-28 00:37:38
577文字
Public 小説
 

手探りの夜

2/11 奏まふ版深夜の真剣一本勝負にて、お題「甘い時間・指先」で書かせていただいた作品です。
短い。

 自分の手のことなんて、楽器が弾きやすいかどうかでしか意識したことがなかった。

 薄明かりの中、まふゆのからだを辿る手を、なめらかで白い肌に這わせた指を、伏せた目でそっと追う。

 甘い吐息に誘われて、柔らかな唇を撫でて、キスを落とし淡い微笑みを交わした。

 滅多に変化を見せないまふゆの顔が上気し、おずおずとわたしにその手を差し出した。その手を取って、手のひらを重ね合わせる。

「手は私の方が大きいのに、指は奏の方が長いね」

 低く艶のある声で囁くと、まふゆはわたしの指先にくちづけ、わたしを見つめた。

 深い夜を思わせる紫紺の瞳と、わたしの空の蒼色が交差する。

 わたしは指先でまふゆの手のひらを確かめながら、まふゆの手を頬に当てて目を閉じた。

「わたしはまふゆの指も、大きくて柔らかい手のひらも、全部好きだよ」

 この小さな手でぬくもりを辿れることも、奥深くに触れて愛せるよろこびも、痺れるような甘い声を奏でられることも、まふゆがいなければ、わたしはずっと知らないままだった。

 まふゆを知って。
 まふゆを探して。
 まふゆを見つけて。
 そして、わたしは……今まで知らなかったわたしを見つけている。

 痺れるような甘い夜に、辿々しく手探りでまふゆを愛して、わたしを受け止め寄り添ってくれるまふゆの心を、探し続けている。