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スサ
2024-02-25 23:07:45
1427文字
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【ヴィク勇】とあるパーティーにて
勇利君のこと一番わかってて貢いでるの自分だと思ってたのに違うかもってなってショックを受けるヴィクトルについて考えていて…
侮っていたわけじゃない。
けれど、自分がいて勇利を初めて輝かせられるのだとどこかで思っていたことは否定できない。だから、その姿を見た時にひどくショックを受けた。食い入るように見つめ、立ち尽くすしかできなかったのだ。ヴィクトル・ニキフォロフが!
──夜が人間の形をとったような、そんな、美しくもなまめかしい青年が歩いてくる。しん、と水を打ったようにホール内は静まり返っていた。皆が彼の一挙手一投足に注目している。あからさまに見つめる者ばかりでなく、気にしないふりを装いつつ盗み見ている者まで、皆がだ。その証拠に、誰も彼も会話をやめてしまっている。
だが、ボーイが開けたドアから堂々と歩いてく青年自身は、そのことをちっとも意に介していないようだった。絹のような黒髪を上げてさらした額はしみひとつなく、真珠のようなつやを放っている。すっと通った鼻筋、自然な赤みのさす形の良い唇、深い色の大きな瞳。童顔と表される顔の作りが変わったわけではないのに、どれもこれもが魅力的、いや、蠱惑的ですらある。それなのに同時に清楚さを失っておらず、滴るような色気をうちに秘めた冬空のような美貌を、青年は惜しげもなくさらしている。身につけているものだって実に上等だ。一目見てわかる。オーダーメイド以外にありえない
一目見て、ヴィクトルが彼に贈ったものとは違う、とわかった。
ヴィクトル以外にも、もしかしたらヴィクトル以上に青年を飾り立てることができる人間がこの世にいる。
ヴィクトルがショックを受けて固まってしまったのは、それを覚ったことが原因だ。自分こそ彼の美質を理解し、彼を世界に向けて完璧に演出できると信じて疑っていなかったから。
完璧に美しい歩き方で、青年はヴィクトルの前までやってきて、そして足を止めた。照明を反射しているからなのか、今の瞳はまさに夜の色だ。ヴィクトルのように瞳の色素が薄いわけではないのに、勇利の虹彩も見る時によって違うような気がしている。心理的なものではないはずだけれど
…
。
ヴィクトルはまだ動けない。
他人からはわかからないかもしれないが、ヴィクトルの胸中は非常に混乱していた。誰が、自分以外の誰が、勇利を
…
、肩を強く掴んで揺さぶりたいのをどうにかこうにか押さえ込んでいる状態なのだった。
「──ヴィクトル」
桜の花びらのような唇が動いた。ヴィクトルの名前を呼んで、美しい夜のような青年は薄く微笑んでいた。あたりから感嘆のため息のようなものがもれ聞える。皆、つめていた息をやっと吐き出したといったところだ。
ヴィクトルは瞬きし、それからゆっくり手を持ち上げ、白い頬に振れた。いたずらするように、耳にかかりきらなかった髪をそっと掬い上げる。普段の勇利だったら赤くなったりうろたえたりしてもおかしくないと思うのに、今の彼はただ目を細めるだけ。まるで、それで?とでも言っているような顔だ。
「
………
勇利」
ヴィクトルは声にすべてを込めた。気持ちのすべてを。
果たして、勇利はといえば、一度すうっと目を細めた後、余裕のある表情で微かに笑った。身長差があるので当然彼はヴィクトルを見上げているのだが、とてもそんな風には思えなかった。なんといえばいいか、まるで女王然とした態度で、勇利は今、ヴィクトルを見つめている。どうかすると跪いて頭を垂れたくなる。そんな雰囲気が、今の勇利にはあった。
話を遡ること、四時間前。(続)
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