はなおぼろ
2024-02-25 22:04:35
1991文字
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縁巌覆面作家企画4:Hグループ感想

作品の雰囲気に引っ張られてテンションが上下左右しております。予めご了承ください。

H-1:悲しみと喜びが入れかわる詩(うた)

 なにこれ凄い。タイトルの通り詩形式の作品なのですが、こんなにも大胆に、それでいて巧みにリバースというお題を使っている作品はそうそう無いかと。
 所謂前から読んでいっても後ろから読んでいっても詩として成り立ち、なおかつ印象が変わるというタイプの詩ですが、そういう詩を作るハードル激高なので、発想を真似ようと思っても無理ってやつです。少なくとも私には出来ない……
 悲しみの詩を先に提示して、喜びの詩へと反転させるところに作者様の優しさが窺えます。子どもたちが眩く光る世界へと駆けて行く、希望ある終わりになっているのが素敵でした。



H-2:生々流転

 非常に丁寧で読みやすいと同時に、どこか淡々としているようにも捉えられる文体は、『縁壱』という一人の人間として見てくれる相手以外興味が希薄な作中の縁壱そのものにも思えました。作品全体が彼を表現している感覚といいますか。
 継国の家にいる頃も最低限の人たちとしか関りがなく、出奔後も子どもだけで大きくなり、人の心の機微を学ぶ機会って本当に殆ど無かったのだろうなぁと改めて考えてしまいます。うたはきっと言葉で何でも伝えてくれただろうから、余計に。
 美しいと信じていた時期より、醜悪な世界だと気づいてからの時間の方が長かっただろう縁壱を思うと、切なくなる一作でした。



H-3:うつつにおり

 どうも、私の作品です。
 地の文だらだら書いちゃう癖があるのでSS不得意なのですが、頑張ってみました。A-5はハピエンだったので、こちらはトンっと突き落とす気で書いています。



H-4:今宵あなたの月になれたら

 夜に身を寄せ合って星を眺める二人……圧倒的好きシチュエーションです。合掌。徐々に触れる面積が増え、ぴたり寄り添うその姿に、読んでいるこちらも心が温かくなり、縁壱に全てを委ね無防備に甘える兄の姿に愛を感じます。
 月とは縁巌的にはどうしても巌勝を連想するので、月は普段縁壱が兄から受け取っている愛情を指すのかなと思った次第です。今宵本物の月は空に浮かんでいないけれど、兄の様に縁壱からも愛情を返せたら、というタイトルなのかな。勝手な妄想ですが。
 読んでいるこちらも優しい気持ちになれる、素敵な作品でした。
(作中の季節は秋だから、オリオン座流星群なのかな?)



H-5:蘇生

 鬼になったゆえの人間的思考からの乖離か、兄が弟を想う優しさなのか、その両方なのか。歯車のずれた絡繰り人形が、ちぐはぐな動きであってなお動き続けているような不気味さともの悲しさを感じる、味わい深い作品でした。
 修験者は本当に弟を生き返らせたのか、それも不確かだと感じてしまいます。弟の言葉は本物の弟の言葉だったのか、兄が夢想した弟のものだったのか。読み手によって捉え方が違いそうです。
 雪の中に落ちたものを弟の端くれと言っていたし、身体はもうないと語ってあったから、胎の中に入れたのはもしかすると笛だったのかなと思ってしまいました。



H-6:まじもの

 国を治める弟と、弟のために人ならざるものの依代になることを選んだ兄……ということなのでしょうか。依代に頼り、儀式めいたことをするに至るまでの経緯がとても気になります。
 座敷牢の中で拘束されている兄上の描写が痛々しく、それでいて不気味で、読んでいて心臓がぎゅっと握られたような気分です。
 青い羽織とあるので、これは鬼狩りではない縁壱を指すのか、それとももう縁壱は亡くなっていて依代が子孫に受け継がれて縁壱のように振る舞い接しているのかどちらなのか……。いずれにせよ、たとえ兄の姿がどんなに変わり果てようと、その指で触れ優しい眼差しで見つめる弟がいたのだろうなと思いました。



H-7:はんてんこうせい。

 手紙形式の作品ですね。本当、覆面企画は色々な形式の作品が読めるなぁ。手紙の内容から、その時の二人に起きた出来事を想像したり、使用される漢字が増える様子に成長を感じたりと、最初は微笑ましく読んでいたのですが、徐々に不穏な気配が……。うん、タイトル反転攻勢だもんね、そうきましたか……といった感じです。作家様にしてやられたなぁ、脱帽です。
 最後の手紙は、もしかしたら手紙じゃなくて相手を想って心で呟いた言葉なのかなと思ったりして。〇〇様・〇〇よりって無いのと、この手の内容の手紙は恐らく出せない状況下なので。
(あの、その、巌勝氏の結婚式前夜の話を詳しく、詳しく……





 どれも巧みな作品ばかりで、読んでいてSSとは思えない時間を過ごさせて頂きました。このグループでご一緒出来たこと、とても光栄に思います。
 作家の皆様、素敵な縁巌作品を生み出して下さり、本当にありがとうございました!