はなおぼろ
2024-02-25 12:29:10
1777文字
Public
 

縁巌覆面作家企画4:Cグループ感想

作品の雰囲気に引っ張られてテンションが上下左右しております。予めご了承ください。

C-1:<<

 冒頭のシーンから体倒してゴロンゴロンしていました。
 二人の歳の差、関係性から織りなされる甘くも切ない恋の記憶を、彼の心のアルバムを優しい手つきでゆっくりとめくっているようでありながら、走馬灯のように駆けめぐったようにも思える物語の構成。しっとりとした文体が、巌勝少年の高校生らしい柔らかく繊細な感情にとてもマッチしていて、胸がきゅっとなるけど心地よい、そんな作品でした。感動のラストに目頭が熱くなりました。ハンカチが手放せない……
 タイトルは二重不等号(ではないような気がする)? なんと読むのでしょう。気になるので、作家様の後書き待機です。



C-2:夜話

 所謂脚本・台本形式なのですね。()で台詞主の動作等が補足されているので、台本の方が近いのでしょうか。
 縁壱の耳飾りが何故片耳しかない理由、なるほどなぁといった感じです。無惨と兄上が邂逅する前にもし縁壱と無惨が交戦していたら……における新たな可能性が提示されていて興味深いです。
 男は噂の緑壱さんなのでしょうか? 実は緑壱小説は未読なので、もしそうならこの作品が初めて読んだ緑壱が出てくる小説になります。ある種の痛快さを持った存在だなぁ。
 棘と毒の応酬、腹の探り合いと、形式を生かした会話劇が巧みな作品でした。



C-3:霧らふ

 己が読解力の乏しさに打ちひしがれています。悔しいぃ。電報や列車等の描写、携帯電話等が描かれていないことから、時代は昭和なのかな……くらいしか分からない。
 閉鎖された、恐らく外の世界にはない風習が残っている田舎で生まれた双子。弟が勘当されたのは風習ゆえか禁に触れたのか。あの金鏡は一体何なのか。金鏡なのは月の異称でもあるからなのかしら、とか。埋葬品に使われたって部分が不穏すぎる。まさか石灰の湖に二人で身投げしないよ、な……
 決して明言してくれない仄暗い文面も相まって、読者も霧の中に囚われていくような、そんな感覚を味わいました。



C-4:その弟、理の外につき。

 縁巌において縁壱の方だけ女体化とか珍しいなとか思って読み進めていたんですけど、物凄い方向に縁壱が舵を切り出して、もうね、発想が理の外だよ。その後も理の外の連続で、読んでタイトルの如く。
 縁壱の常人離れしているという側面を、ここまで拡張してコミカルに描いている作品もそうそうないのでは? 突拍子もない設定・展開が続くのにスラスラ読めちゃう。作者様天才。
 そんな弟(今世は母)に振り回されている兄上、爆速で恥の上塗りがされていくのがお労し過ぎて可愛いです。そして結局は弟に甘いところも可愛いです。



C-5:ひぐまとつき

 おお、こちらも脚本・台本形式。こちらは上手下手、場面暗転など記載されているので、舞台用の台本ですね。また違う味わい。
 羆壱だ! あれ、羆壱って姿そのままを指す呼称だったっけ?(混乱)それと隊士イロハ、読み進めていると愛着がわいてきます。なんか凄く良いな、彼ら。
 羆壱と月柱が入れ替わっていたという事象、イロハと共に私も首を捻ってしまいました。あの時名前を呟いていたのは兄上じゃないですって言いたかったってこと……
 ハッキリとわかったのは、兄上には羆であろうと小熊な弟で、二人は懇ろってこと。兄上を抱き上げて歩く弟ににっこりです。



C-6:愛すべき未来へ

 アルビノ上、触れてしまえば溶けてしまう雪のような儚さと繊細さが、本当に美しく描写されていて、如何に縁壱が兄を恋し愛したのかが伝わってきます。
 対価の一つとして兄の記憶から縁壱の存在が消滅したわけですが、これは前世の縁壱に関する記憶も消滅したのかな。どちらにせよこのことが兄にとって幸か不幸かが決まるのは、今後の二人が歩む道によって左右されるのかな……せめて穏やかに共に時を紡いでほしいと思いを馳せずにはいられません。
 薄氷の上で一人ワルツを踊っているような、美しくも悲しく、どこか危うさをはらんだ素晴らしい作品でした。





 素敵な作品ばかりでした。また様々な形式の作品が集うところに、企画の真髄を感じずにはいられません。
 作家の皆様、素晴らしい縁巌作品を生み出して下さり、本当にありがとうございました!