Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
美結
2024-02-22 06:21:28
7006文字
Public
ロール
Clear cache
足りないのは?
とある能力者の攻撃を受けてしまった🐯👒とそれを見た仲間達のお話。恋人同士の二人です。
生えている。誰がどう見たって生えていた。
「何やってんのよ、二人して」
「好きでこうはなってねェ」
「私は騒ぎを起こすなって言ったはずよ?」
呆れた表情のナミの一言に、並んで立っているトラファルガー・ローとモンキー・D・ルフィはチラッと視線を交わし合った。
「だから起きる前に片付けてきたぞ」
「そうじゃない!元に戻ってないでしょうが!」
実際、こうなった元凶への対処は既に完了している。ただ、元凶を潰すだけでは足りなかっただけなのだ。
ナミの後ろに居るルフィの仲間達と、情報交換の名目でサウザンドサニー号に来ていたローの仲間達も二人の今の姿に言葉をなくしていた。こんな状態になって帰ってくる二人を、誰が想像したことだろう。
生えているのだ、二人の頭上と腰に。
猫の耳と尻尾が。
ローの頭上に生えている猫耳は角度によっては銀色に見えなくもないシングルコートのものだ。尻尾も同じ色で緩々と左右に動いている。
ルフィの頭上に生えている猫耳は茶色の柔らかそうなダブルコートのもので、尻尾は同じ色だが、ローの尻尾よりもふさふさとしていた。
「身体自体に異常はなさそうだから、あとは元に戻ればいいんだけど」
ナミの隣で念の為に二人を診察したトニー・トニー・チョッパーの判断にローは軽く頷き返す。
「元に戻る方法なら海に放り込む前に吐かせた」
「どうすればいいんだ?」
「なんかよ、おれ達の周りにいるヤツらから愛でられないとダメなんだってよ」
ルフィの一言にローは浅い溜息をこぼす。その顔には不本意だと書いてあった。愛でられなければ元に戻れない。その条件を聞いた皆は顔を見合わせる。目の前に居るナミとチョッパーも顔を見合わせ、そして────。
「へえ、つまり可愛がればいいのね?」
ニヤリと悪巧みをするように笑ったナミの確認。その横では医療道具を片付けたチョッパーが目を輝かせて身を乗り出す。
「触っていいってことか!?」
「あァ、構わねェ」
「触って移ることはねェんだって言ってたからな!いっぱい触ってくれよ、チョッパー」
渋々頷くローとは対照的に笑って答えたルフィは、チョッパーが触りやすいようにと早速その場に屈み込んだ。チョッパーは嬉しそうに頷くと、救急箱と鞄を一度置きに保健室へ戻っていく。
「キャプテンに猫耳とか、レアすぎるでしょ!」
チョッパーの診察が終わったところで、離れたところに居たシャチが声を上げた。
「油断しすぎっすよ、キャプテン。どんだけ浮かれていたんすか、麦わらと一緒で」
「うるせェ」
シャチと共にローの方へやって来たペンギンが呆れた声を出す。帽子を目深く被っている為にその表情までは読めないが、間違いなく呆れていることだろう。痛い所を突かれたローは睨みを利かせるが、大した効果はない。
「トラ男だけじゃなくってよ、おれも浮かれていたからお互い様だ」
ししし、と笑うルフィの尻尾が分かりやすく楽しげに揺れている。久しぶりに会えたのだから互いに浮かれるのも無理はないのだ。
「ったく、四皇と三〇億の首が聞いて呆れる話ね」
仕方ないんだから、と笑うナミからローは視線を外した。
「それはそれとして、似合うよ!キャプテン」
ナミとの情報交換を終えたばかりのミンク族のシロクマ、ベポは素直な感想を口にする。
「折角だから写真に残しておきましょうか」
読んでいた本に栞を挟んで閉じたニコ・ロビンの提案に、いいっすね!とシャチとペンギンが盛り上がった。写真と聞いてナミの瞳に浮かんだのはベリーのマーク。嫌な予感にそっと構えたローの手は、ロビンの能力で押さえ込まれてしまう。
「っおい、離せニコ屋!」
「ダメよロビン、そのまま捕まえておいて!ウソップ!」
「そう言うと思って、準備はできてるぜ!」
撮影用の小型電伝虫を手にやって来たウソップの横を走り抜けて戻って来たチョッパーは、屈み込んでいるルフィの肩に飛びついた。
「記念撮影するならおれも一緒に写りてェぞ!」
「勿論いいぞ!ナミ、いいよな?」
「いいわよ。後でルフィとトラ男だけの写真も撮るから。勿論単体でもね!」
「何枚撮る気だ、ナミ屋!」
「撮れるだけ撮るに決まっているじゃない」
即答したナミに眉間の皺を濃くするローだったが、ロビンの手によってその場へ半ば強制的に屈み込まされてしまった。見上げる形になった体勢のローの目の前に屈み込んだナミは、ローの耳元に唇を寄せる。
「それに。あんたも欲しいでしょ?猫耳と尻尾が生えたルフィの写真。ツーショットもつけてあげるわ。特別にタダでね」
協力してくれたらの話だけど、と微笑みかけてくるナミの提案にローは言葉を詰まらせた。
バレている。彼女にはお見通しかもしれないと、以前笑って言っていたルフィの姿を思い出したローは小さく舌打ちする。
「
……
条件は守れよ」
「勿論。交渉成立ね!」
折れたローににっこりとご機嫌な笑顔を向けるナミ。それを合図にロビンの能力からも解放されたローだったが、離れたところから事の成り行きを見守っていたサンジの鋭い視線からは逃れられそうになかった。夕飯のおにぎりに梅干しを入れられなければいいが。
「トラ男を言いくるめるなんて流石ナミだなァ」
「おれ達じゃどうやっても無理だもんなァ」
チョッパーの感心にルフィが同意する。チョッパーはともかく、ルフィに本当の意味で言いくるめられるようになったらおしまいだ。
ひとまず芝生の上に座り直したローは、傍に来ていたベポへ鬼哭を預けると肩の力を抜く。猫耳と尻尾を生やされただけとはいえ、不意を突かれた攻撃のせいで少し身体に力が入りすぎていたようだ。
「それで、どう撮るんだ」
「ポーズとか指定していいの?」
「こんな事は今日限りだからな。多少のサービスはしてやる」
ローの許可にわっと盛り上がる面々を見て、ルフィも嬉しそうに笑う。けして、この笑顔に絆されているからではない。
「じゃあまず、チョッパーを間に挟んで三人で一枚撮りましょう」
「おれ、二人の肩に手を置きたいな!」
「おっ、いいなチョッパー!じゃあおれはトラ男と肩組みてェ!」
「
……
仕方ねェな」
肩を組まれるからには組み返す必要もあるだろう。必然的に三人で身体を寄せ合い、密着するように並ぶ。ルフィの腕が回り込んできて、ローもまた同じようにルフィの肩へ腕を回り込ませた。
「じゃあ行くぞ、一枚目!はい、チーズ!」
こうしてウソップの掛け声を合図に、怒涛の撮影会がスタートした。
*
「疲れたって顔してんな、ロー」
「黒足屋か」
怒涛の撮影会は今もまだ続いているが、確かに疲れたローは騒がしく撮影を続けるルフィとウソップ達から少し離れた場所にある椅子に腰掛けていた。猫耳や尻尾を触られる事にすぐ慣れたルフィは彼の仲間達やローの仲間達から文字通り猫可愛がりされている。擽ったそうに笑いながら受け入れているが、猫耳と尻尾が消える気配は皆無だった。
「消えねェな、一向に」
「あァ。
……
何か足りねェ要素があるのかもしれない」
近くのテーブルに運んできたグラスを置いたサンジの言いたいことは分かる。ローもルフィもあれから数時間は仲間達に可愛がられているのだが、一向に消えないのだ。猫耳も尻尾も。
「最後の最後に悪あがきしていきやがったんだな、敵は」
「どうやらそうらしい。あれだけ追い詰めて口を割らなかった事は褒めてやる」
今頃海の中でほくそ笑んでいるかもしれないと思うと腹立たしくはあるが、してやられたのは事実だ。眉を顰めながら苦い声で呟くローにサンジは緩く口角を持ち上げて笑いかける。
「本当に浮かれてやがったと」
「蒸し返すな」
「待てよ、そういう話じゃねェ」
「あ?」
「足りないもんってのは、つまりそれじゃねェかと思うんだが」
「
……
そういう事か」
サンジの指摘にローはウソップやチョッパーと戯れているルフィを見やる。自分の猫耳と尻尾も彼の猫耳と尻尾も消えない理由。
ローとルフィが互いに互いを愛でなければ消えないのでは、と言いたいのだろう。言われてみれば互いに互いの猫耳と尻尾には触れていない。触って何かあるといけないと思い、二人とも触れ合わずにサニー号へと帰ってきたからだ。
「今日は泊まっていくんだろ、お前」
「あァ、あいつらは帰すが」
「ならあとで試してみろよ、このまま消えなかったらの話だが」
頷こうとしたところへキャプテン!と声が掛かる。手招いている仲間達はまだ愛でたくて仕方がないと言った表情だ。やれやれと首を小さく横に振ったローは、サンジが淹れてくれたアイスコーヒーのグラスに手を伸ばしながら呟いた。
「あいつらの気が済んだ後にでも」
*
何度立ち寄っても、ここの水槽には圧巻されるとローは思う。
時刻は既に夜の二二時を過ぎていた。
ベポ達を自船に帰し、夕飯をご馳走になって風呂も借りた。風呂に関しては嫌がりがちなルフィを一緒に入れるという条件付きだったが、それであの大浴場を借りられるなら悪くはない話だった。
そうして、今ローとルフィはサウザンドサニー号が誇るアクアリウムバーの中に居た。
水槽の中で煌めく魚達は、昼間ルフィ達が釣り上げたものだ。ローもその様子は近くで見ていたから知っている。今日はよく当たる日だったらしく、おかげで夕飯には新鮮な海の幸が並んでくれた。
巨大水槽の近くにあるソファーへ並んで腰を下ろしたローとルフィは向き合うように体勢を変える。相変わらず、互いの猫耳と尻尾は消えていない。
「あれだけ触られたのに消えねェとはな」
「能力持ってたヤツ、助かったって事だよな?」
「近くに仲間が居たんだろうよ」
流石に三〇億の首を単独で狙ってくるほど間抜けではなかったのだろう。もしかしたら、完全な猫にされてしまう危険性もあったのかもしれない。そうなる前に気付くことが出来たのは幸いだった。
「でもよ、おれは楽しかったぞ!ちょっと擽ったい感じもあったけどな」
「おれは今日みたいな目に遭うのは二度とゴメンだ」
普段からスキンシップに遠慮のないルフィと違い、ローは必要以上に他人から触れられる事を良しとしていない。仲間達にはまだいくらか気を許しているが、今日ほど盛大に触れられた事はなかった。思い出すだけで疲れが滲み出てくる。溜め息を吐いたローの顔を覗き込むように見たルフィは笑った。
「ししし!」
「なんだ」
「こうやって近くで見るとよ、トラ男に似合ってるなって」
「お前ほどではねェよ」
「そうか?」
似合っていると暗に伝わったのか、笑顔を絶やさないルフィにローは小さく頷いて片手を伸ばす。昼間から脱いだままの麦わら帽子に触れる事はなく、ルフィの頭部に生えた猫耳へそっと触れた。ピクピクとローの手の中で猫耳が動く。
「敏感だな」
「おう、昼間からずっとこんな感じだぞ。トラ男もか?」
「あァ、触れられると無意識に反応する」
だからといって嫌な感覚にはならない。猫の生態についてローはある程度知っているが、耳と尻尾だけが生えた自分達にそれが丸々当てはまるとも思えない。
「おれも触っていいか?」
「構わねェ。お前をここに誘った理由もそれだからな」
ローも猫耳が生えてからいつも被っている帽子は脱いだままだ。ルフィの手が優しく猫耳に触れるとピクリと反応を返す。興味深そうな顔をして猫耳を撫でるルフィに、ローも同じ行為で応える。
「柔らけェんだなー」
「触り心地は確かに、悪くねェな」
「な、尻尾も触ってみてェ!」
この柔らかさなら確かにずっと触れていたくなるのも頷ける。一旦猫耳から手を離したルフィの希望に、ローは尻尾を緩く動かして手前に持ってくる。
「触ってもいいが、あまり力強く掴むなよ」
「おう、分かった!」
素直に頷いたルフィの手が尻尾に触れてくる。するりと尾の先から元までゆっくりと滑り降りてくる手の心地良さに、ローは目を瞠った。もっと雑に触れてくるかと思っていただけに、意外だ。暫くそのまま撫でられていると、ローの目の前にルフィの尻尾がやってくる。
「トラ男も触りてェだろ?」
ローに生えた尻尾と違い、ふさふさとした毛並みの尻尾だ。返事の代わりに手を伸ばし、同じように撫でてやるとルフィは楽しそうに笑った。
その笑顔を見て、こういった触れ合い方もたまには悪くないと思ってしまうのだから恋とは困りものだ。生えるのは二度とゴメンだとあれだけ言っていた昼間が嘘のように。
「気持ちいいなー」
「撫でる方がか?」
「どっちもだ!多分、チョッパーも撫でられているとこういう気持ちになるんだろうな」
「成る程、トニー屋の気持ちになれるとは。盲点だった」
他愛もない話をしながら、お互いに撫で合いを続ける。どれくらい撫で合えば消えるのか分からない以上、今はこうするしかない。
「うーん、消えねェなァ」
「まだ足りねェのか、これで」
「撫で方が悪ィとかか?」
「撫で方か。
……
なら、こうしてみるか」
首を傾げたルフィの尻尾の撫で方を、ローは意図的に変えてみる。先端から根元にかけて動かしていた指先を、根元に集中させていく。そのまま親指の腹で少しだけ擦るように撫でてやると、ルフィの尻尾がビクンと跳ねた。
「うわっ!?な、なんだ、今の!」
「撫で方を変えてやったんだ」
「そ、そりゃそうだけど、なんか
……
」
先程までとは違う感覚に、ルフィの身体がソワソワと落ち着きなく動く。ローは気付いていながらも撫でる手を止めず、片膝を立てて身を乗り出し、ルフィとの間にあった距離を詰めた。
「っ、トラ男」
「どうした、麦わら屋」
「お、お前ばっかりズルいぞ!おれにも」
触らせろ!と動いたルフィの手元からローの尻尾がするりと抜け出る。逃れる尻尾を掴もうとして身を乗り出したルフィの猫耳に、今度はローの唇が触れた。
すると驚きで目を見開いたルフィの頭上に、ポンっと白い煙が立ち込める。煙が晴れた後には、何もない。
「あっ!?」
「
……
消えたな」
ルフィの猫耳と尻尾は、跡形もなく消えていった。自らの頭上に触れて確認を取るルフィにローはフッと静かに笑う。
「トラ男、お前
……
」
「黒足屋に試してみろと言われたんでな。半信半疑だったが、どうやらそういう事らしい」
「サンジが!?」
さらに驚くルフィを見て、ローは確信する。ナミとサンジには気付かれているのだろう。自分とルフィの関係が、敵船同士の船長から違うものへ変化したことを。ただし、ルフィの反応を見る限り、彼が自ら話したという線はなさそうだ。
「無事に消えて良かったじゃねェか、麦わら屋」
「あ、あァ
……
ありがとな、トラ男」
楽しくはありつつもやはり消えない事には思うところがあったのだろう。安心した笑顔を見せるルフィに頷いて、ローは立ちあがろうとした。が、その腕をルフィが掴んで引き留める。
「
……
おい、この手はなんだ」
「何って、決まっているだろ。今度はトラ男の番じゃねェか」
「は?」
何が、と問う前に事は動いた。そのまま腕を引っ張り込んだルフィの唇が、今度はローの猫耳に触れたのだ。驚いて身体を硬くしたローに構わず、ルフィはもう片方の手でピンと伸びた尻尾も捕まえるとその先端にも唇を寄せてきた。
「っ、麦わら屋」
「言ったろ。トラ男ばっかりズルいって!」
ししし!とイタズラが成功した子供のような笑みを至近距離で見た直後、ローの頭上にも白い煙が立ち込めた。
*
「あら、残念。もう消えちゃったのね」
翌朝。起きて一緒にダイニングへやって来たルフィとローの容姿を見たロビンがそう寂しげな声で呟くと、ナミがにっこりとこちらに笑いかけてきた。
「大丈夫よ、ロビン。昨日の撮影はバッチリだったんだから」
「フフッ、そうね。現像が楽しみだわ」
ウソップの姿が見当たらないのは現像に入っているからだろう。写真そのものは良いが、いくらでも刷れるままにしてはおけない。サニー号を離れる前に回収しようと決意するローの傍から離れたルフィは、キッチンへ立つサンジの背中に声を掛けた。
「サンジ!昨日はありがとうな」
「おれは可能性の話をしただけだったんだが
……
」
可能性が確証になってしまった事に朝から頭を抱えたそうな顔をするサンジ。
その様子を見て笑うルフィに、ローは小さく息を吐いた。この様子では、彼の仲間達に知れ渡るのも時間の問題だろう。いつ、どのように話すべきか。早いうちに固めておいた方が身の為かもしれない。
「それで、結局どうやって二人は元に戻ったんだ?」
起きて来たばかりのチョッパーから尋ねられた核心について、ルフィとローは視線を重ねてからフッと笑い合って答えた。
「「触れ合っただけだ」」
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内