梶間
2024-02-21 21:38:14
931文字
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王と宰相と配下

ライオスとヤアドとカブルーがわいのわいのしてる小噺

『セイレーン愛好会クラブ船上ツアー
特等席でセイレーンの歌声を聴こう!なお専門家による安全監修はありますが、船のマストに縛り付けることになりますのでご利用の際には……

王の執務机にうさんくさい内容が書いてある紙を見つけた。

「なんですこれ」
「近隣の海でセイレーン愛好会による歌声を聴く船上ツアーがやりたいって意見がきてて」
「却下」
「新しい特産になると思ったのに」

次の紙を手に取るカブルー。

『悪食王も愛食!千年続く伝統の宮廷魔物料理フルコース体験!』

「却!下!なんですか宮廷魔物料理って。誇張したもので人を呼ぼうとしないでください」
「それは俺じゃなくて……
「僕です……

ライオスの横で政務指導をしていたヤアドが背中を丸めてしょんぼりした顔で手を挙げた。

「久しぶりに食べ慣れたものが食べたいなあと思って……魔物って地上だと普通食べないですもんね……

塵になる前に故郷の味が食べたいなあ、と遠くを見るヤアド。

普段ヤアドから政治学を学んだり、共にライオスに対して頭を悩ませたりしているからつい忘れていた。そうだ、生まれも育ちも迷宮で、食べ物といえば魔物で育ったヤアドも食物に関しては大概突飛な感性だった。

ヤアド並びに元黄金郷の住民たちは魔物食に一切の抵抗がなかった。なぜなら彼らは迷宮で生まれ、迷宮で育ち、地上を知らずに生き、魔物を食べて過ごしたからだ。千年の時を生きるうちに、食欲が減退して食べることもなくなっていたが、地上で生きるうちにすっかり旺盛な食欲が戻っていた。地上での普通の食事を楽しんでいたが、それでも彼らが食べ慣れたのは同じく迷宮で生まれ、迷宮で育った魔物の味だった。

故郷の味、という一言にカブルーは大分絆された。

……許可」
「船上ツアーはダメなのにか!?」

納得がいかない、と文句を垂れるライオスに本来の目的だった新しい稟議書を押し付ける。

「仕事全部終わったらまた考えてもいいですよ」

にこり、と引き攣った笑顔のカブルーに気圧されて渋々仕事に戻るライオス。

その横では久しぶりになに食べようかなあ、ミノタウロスの牛乳使ったやつがなにか食べたいなあ、とヤアドがにこにこしていた。