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望月 鏡翠
2024-02-15 23:08:35
926文字
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日課
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#1269 「河原」「食べる」「小間物屋」
#毎日最低800文字のSSを書く
楽しかったのは、待ち合わせて数刻だけだった。俺はすぐに自分の不出来が恥ずかしくなった。
彼女は素晴らしい人だった。今日ももちろん、可愛らしくて、日の打ちどころがなかった。
だが一番素晴らしいのは、その心根なのだ。俺のような人に優しくしてくれた。告白したとき、断られることを覚悟していた。それは当然の結末だからだ。
気持ちが悪いと罵られてもう二度と会ってくれなくてもいいとすら思っていた。それでも、この思いを秘めたままにしておくよりは、その優しさが心に届いたというのを知らせたかったのだ。
だが驚くべきことに、彼女は地面に額を擦り付けんばかりにしている俺の手を取った。
にっこりと微笑んで、いいわと言った。
何を言ったのか、聞き取れないくらいに俺は混乱していた。いいわ。いや言い訳がない。彼女のような人と付き合っていいわけがない。
夢から覚めるために頬を引っ叩いた。あまりにも俺に都合がいい夢だ。だが夢から覚めることはなく、彼女はびっくりして俺を見つめて、困った人といって口元に手を当てて笑った。
そうしてデートの日がやってきたのだが、街を歩けば俺と彼女が不釣り合いであることを揶揄う視線が飛んできた。ものすごく惨めな気分だった。
一張羅は、周りの人間から見れば新品の普段着だ。
小間物屋で簪の一つでも買ってやることができたらいいのだろう。だがそんな小遣いはない。俺が彼女に買ってやることができたのは、いつも食べている草団子だ。丸めて串を打ち、囲炉裏端で炙ってからみたらしをかける。団子屋の主人は彼女のような人を茶屋に連れていく余裕もなく、こんなところに連れてきている俺を憐れんだのか、一本分おまけしてくれた。
それを持って河原に行く。汚れていない大きめの石を探して、二人で並んで食べる。
惨めで泣き出しそうになったが、それでも団子はうまかった。
「美味しい。これ今まで食べたお団子の中で一番美味しいわ。みたらしなのに、蓬がはいっているのねぇ珍しい」
彼女が目を丸くしている。
俺も嬉しくなって笑う。
「そう、安もんだけど、俺はあそこの団子が一番好きだ」
「やっと笑ってくださった」
そういって彼女は優しく微笑んだ。
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