燐々
2023-11-27 21:24:44
1215文字
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家族のなか

ゲ謎見て、村に心を置いてきてしまったので書きました。水木さんならきっと子育てもすぐに慣れるはずだし、夫婦も見守ってるよなぁ…目玉の親父としての体があることは重々承知の上で、ゲゲ郎さんの体はない訳だしなぁ…という妄想の産物です。
諸々甘い所は何卒ご容赦ください。
○映画の後日のような立ち位置ですので、視聴後の閲覧をお勧めします。
○ネタバレ等の責任は負えませんので悪しからず…

「我が子というのは、ここまで愛いものか」
 丸く白い頬と繋がった小さな口をむぐむぐ動かしながら眠っている息子の横に座って顔を眺めていると、ゆるゆると頬が溶けていく。
「これは水木の顔がだらしなくなるのも納得じゃ」
 座っているのすら距離が遠い気がして子の横へ頬杖をついて横たわる。妻と二人の家で猫を眺めている時も一生眺めていられると思った物だが、それとはまた違う感覚が胸に湧いていた。
ぅ」
「んん?」
「わぁぁあん!」
「おおっ!?」
 小さな呻き声に首を傾げているうちに、ぱかりと開いた口から飛び出した大きな泣き声に飛び起きた。
「水木ぃ!大変じゃ!!早く来てくれー!」
 顔を真っ赤にしたまま泣き続ける子を見ているとこちらまで泣きそうになる。慌てて頼りになる相棒の名前を叫ぶと、席を外していたらしい男が戸から顔を覗かせた。
「起きたのか」
「悠長に言っておる場合か!」
 スタスタとワシの横を通り過ぎて、火がついたように泣く子を抱き上げ、布団に座り込んだ水木は、慣れた手つきで小さな体を揺らしてあやし始める。
「本当によく泣く奴だな」
「ううっ」
 呆れたような声を出しながらも、泣いて赤くなった頬を突く手つきは優しい物で見ていて微笑ましい。涙でびっしょりになった顔を着流しの袖で拭った男は分かりにくく目元を緩めた。
「ったく誰に似たんだか」
「ワシじゃろうな」
 最愛の子の中に親に似た部分を見つけられるのはこの上なく嬉しい。きっとこの後も、この子の中には次々とワシら夫婦に似た部分が芽吹いていくことだろう。
「まぁいいか、子供は泣くのが仕事だ。たんと泣けよ」
「さすがは水木じゃ。良いことを言うではないか」
 子供が泣くのは健康の証。もちろん不調の時もあるだろうが、声の一つも出せないよりは大きな声で泣くくらいで丁度いい。
 
 わあわあと泣いていた子は、うつらうつらとした後に静かに目を閉じていく。その子がしっかりと眠ったのを見届けた水木は、腕の子諸共そっと布団へ寝転がった。

……泣き声に釣られてお前の親が見に来てたりしてな」
「見ておるよ。ワシらはずーっと見ておるよ」
 
 ツンと白い頬に触れた自分の指が、柔らかさに触れることは無い。けれど、ワシの指を追うように水木が我が子を撫でてくれる。
───だから、それでいい。
「お主が一緒ならそれでいいんじゃ。なぁ、お前?」
 ひたりと隣に寄り添う美しい妻の肩を抱き寄せて、希望の光とそれを守ったまま眠り始めた男を見下ろした。
 
 触れる指がないことは何ら問題にはならない。頼れる相棒がぎこちなくとも愛情を注ぎ続けてくれるなら、愛しい光が黒く濁ることは無い。それを疑っていないから、ワシら二人は穏やかに笑っていられる。
「これからも、よろしく頼むぞ水木」
 その呟きに、パチリと視線を上げた男は不思議そうに眉を寄せてから再び目を閉じていった。