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片瀬真
2024-02-14 23:44:58
3574文字
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PCたちの小話
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遠い昔に聞いた歌@いわひら
SSと言うほど長くもない、ちょっとしたエピソードみたいな。
「鰯と柊」のネタバレはあるので、現行未通過さんは×
冴玖さんとハルのお題【遠い昔に聞いた歌】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
元々上手く眠れる訳ではなかったが、最近また一段と下手になった。
なった理由については、全て自分の所為なのだと自覚している。
判断を誤り、人生を掛けて大切にしようと決めていたものを生涯奪われ、中途半端な状態で生き残った。
得たものと言えば、かつて自分を助けてくれた人の亡骸と、気を抜けば震えるばかりの身体だけ。
(いや
……
奪われたは可笑しいな
……
。これがオレに下った天罰。自分の命に価値なんてないんだから、そりゃ取るなら冴玖の命の方だ)
幼い日に尽きようとしていた命を、彼女が手を差し伸べてくれることで救われた。
オレの神様だったヒトの為に役に立とうと決めたのに、肝心なところで役に立たなかった。
敬虔な信者になりきれなかった。
振り返って、後悔して、自分の所為だと責めるだけ。
生きているのが嫌で嫌で仕方ないのに、震えるばかりの手はナイフをどうしても取り落とす。
手ばかりではない。
我慢すれば動きはするが、治るまでに時間のかかる怪我をしている。
自分で死ぬことも出来ない。
「
……
なんの役にも立たねぇな
……
」
ぼやくばかりで仕方ない。
そうして、眠ることを拒否した。
しかし、そんな無気力な生活は一変する。
「壱葉様! 起きてますか?!」
ばん、と大きな音を発てて自室の扉が開かれた。
地獄のような出来事を越えて混乱は続いているが、教団の中には無事だった人間も何人かいる。
教祖様どころか拝掌教の運営に関わっていた人間が大幅に減ったため、解体するにしても縮小するにしても人の手は必要だった。
冴玖の遺体を抱え、ボロボロでオレが帰ってきたものだから同情されたというか
……
なんというか。
兎に角、見放さなかった数人が少しばかり手伝ってくれており、乱暴気味に入室してきたのもそんな一人だった。
「
……
起きてる。なんだよ、また警察か
……
? それとも、性懲りもなく新聞記者でも再来したとか?」
大拝祭があるからとお帰り願った警察は、最終的に証拠不十分でオレが悪人だとは言ってくれなかった。
あの新聞記者は、言っておいてなんだがあれだけ脅しておいたんだからもう来ないだろう。
……
じゃあなんだ?
「
……
まあ、いいか。オレのところに来たんだから、対応しろって話だろ? 何、どんな人
……
」
眠れないから"壱葉様"を繕うだけの元気がない。
冴玖が築いた教団だから、せめて"壱葉様”の時くらいしっかりしていたいが、そうもいかない。
兎に角疲れていた。
彼女の傍に逝きたかった。
生きてと言われて、願われたけど。返事をする気が起きないくらい、会いたくて会いたくて仕方なかった。
だからだろうか。
「雪割様が
……
。教祖様が、お帰りになられました!!」
聞き間違えが無い程はっきり言われたのに、いよいよ耳まで都合よく聞こえるようになったのかと可笑しくなって笑ってしまった。
「はは
……
そんな訳ないだろ。今、そういう冗談言わないでくれよ。棺に入れて、ちゃんと埋葬したろう
……
?」
「冗談じゃありません!」
「
……
なら夢か? うわぁ
……
嘘だろ、オレ寝てる
……
? 寝てるのか」
夢だと言われたほうが納得がいく。
そんな訳ない。
目の前が真っ赤になって、熱が無くなって、命が流れていった。
冷たくなっていく彼女の身体を抱えて帰って来たのは、他の誰でもない自分なんだから。
間違いないんだ。
「壱葉様!」
煩く名前を呼ばれるので、言い返そうと息を吸いこむ。
夢なら夢でいい。
早く目を覚ましてくれ。休んだら生きれてしまう。彼女に会うのが遅くなってしまう。
嫌だと思わず睨み、そのまま、折角吸い込んだ息を吐きだした。
「なんだい、随分な様子じゃないか」
「
……
」
「ただいま、ハル」
声が出ない。
やっぱり夢だ。
目の前に、死んだ筈の彼女が居る。
自分で立って、いつものように声をかけてくれる。
変わらない調子で名前を呼ばれて、信じられなくて目を閉じた。
「
……
また、返事をしないつもりかい?」
呆れたような、苦笑するような声は、駆け込んできた信者に対して何やら言っている。
傍で会話が成されているのに、全く聞き取れない。
混乱しすぎて、余裕が無かった。
震える手をきつく組み合わせて爪を立てる。痛い。痛いから、現実なのだろうか。
現実だとしたら、どんな顔を向ければいいのか分からない。
「
……
ハル。いい加減目を開けてくれない? 折角帰って来たのに、そんな調子では困るよ」
恐る恐る目を開ければ、やはり彼女はそこに居た。
変わらない調子で立っている。
「
……
ほんとに、冴玖?」
どっちの自分で話せばいいのか困って、困ったまま疑問を口にする。
「そうだよ」
どうして。どうやって。なんで。
尋ねたいことが山ほどある。謝りたいこともある。
守れなかったこと、判断を誤ったことを、罵ってくれてもいい。
本当に帰って来たというなら、彼女が齎すものならなんでも受けるつもりでいたのに。
どれひとつとして言葉にならず、現実なのだと思ったら涙が溢れて来て。
彼女を失ったあの日のように、体中の水分がなくなるのではというくらい、泣いて、泣いて。
情けなくも、そのまま意識を失ってしまったというオマケつき。
身体が限界だったのだろうと思うが、随分長く眠り込んでしまったのは言うまでもない。
それから、それから。
教団内も落ち着きを取り戻しつつあり、信者の数は減ったが、それでも彼女を信じて頼るものは多い。
悍ましい神の力は消え失せたが、世界で有名な救世主が如く復活したのだ。
教祖様として、迷えるものを救う導き手として、これからも頼られていくのだろう。
拝掌教が齎す加護は幾分か優しいものになっていくのだろうが、今後のことは今一つ分からない。
一方で、孤児院としての形も整いつつある。
こちらのほうが重要で、生き残った子供たちの居場所になれれば、というのは個人的な考えだが。
それでも、最近は大分安定してきたように思う。
そうなってくると、眠れないというのは困ったことで。
いつぞや、訳の分からない出来事に遭遇した際にぽろっと零したところ、改善のために冴玖が協力してくれることになった。
業務が終わった後、眠るまでの間の僅かな時間に少しだけ時間をとって話をしたりするようになって。
幼い日に差し伸べてくれた彼女の手を特別視しているものだから、安心を得るために繋いでほしいと強請れば快く触れ合ってくれたりして。
今では、恋人として少しだけ独占できることも出来て。
全部夢なのではないかと疑うことも未だにあるが、それならそれで甘んじようとも思うようになった。
今日もそうして貰ったひと時で、隣に座って手を握りあって、他愛ない話をしているだけで安らぐなと思えてくる。
やることが兎に角多く、疲れもあるのだろう。
珍しく自分より早くうとうととする様子を見て、寝入るまではそのまま様子を見ようと伺うことにした。
「~~♪」
本当に小さかった時。まだ両親が、自分に対して優しかった時。
母がこうして手を握って、寝入るまで歌をうたってくれた気がする。
思い出すのも嫌なのに、こうしたことも覚えて居るんだなと思うと笑ってしまうが。
受け止められるようになったということなのかもしれない。
「
……
子守歌
……
?」
瞼を上げないまま、眠たげな声が問う。
「
……
遠い昔に聞いた歌。煩いか?」
「
……
ううん。そのまま歌っていて」
ふふ、と小さく笑う声が寝息に変わるのを聞いていた。
(幸せだな
……
)
幸福を感じることに罪悪感も覚えるけれど、罰はまた、自分が死んだときに改めて受けるのだろう。
碌な死に方もしないかも知れない。
自分がしたことは必ず巡ると思っているから、そういうこともあるかも知れないけれど。
今はただ、安心できるこの場所を今度こそ守り通したいと思っている。
・あとがき
どう足掻いても今幸せで仕方ないので中身として「お幸せに!!」と思っています。
いつか報いを受ける日が来るのでしょうが。
それまでは、復活して傍に戻ってきてくれた冴玖さんをいっぱい大切にしていきたいですね。
ハル本人は、いわひら始まる時から「自分の人生は全部この人に捧げよう」と思っているとして作った子なので、今度は末永く一緒に居られますようにと願うばかりです
書いてる時のBGMはコニシユカさんの「星の終着駅」という曲で、これが壱葉家の子守歌イメージです(笑
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