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鹿
2023-12-31 19:21:12
2075文字
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聖杯戦線楽しいね
聖杯戦線は推しでゴリ押しできるから大好き。実際のドレッドノートは斎藤単騎で撃破した。
『マスター! 悪い知らせだ! 霊脈から影の騎士のお代わりが来るぞ!』
「もう⁉︎ええーっと、プトレマイオスはスキル的に複数で組んで動かしたいし、そっちに割ける戦力っていうと
……
!」
物見の杉谷善住坊からの報告に、カルデアのマスターはにわかに混乱した。この特異点はサーヴァントの戦術的な同時個別運用が求められる、いわゆる聖杯戦線である。多少の訓練は受けているとはいえ、敵の追加など初めて遭遇する状況も多く、苦戦を強いられていた。
『うろたえてんじゃねえ! 一人ひとりは大した相手でもねえだろ!』
しかし、そこに通信越しにもとてつもない圧を放つ声が響く。
「土方さん、そっちは⁉︎」
『まだガッツ一回残ってる、増援は必要ねえ! お前は!』
追い詰められようと普段と変わらぬ新選組副長の怒号は、マスターの頭から不安を追い出すのに最適だった。落ち着きを取り戻せば状況も見えてくる。
「
……
無敵スキルがまだあります! これは、これから敵の足止めに行く人に回して大丈夫ですか⁉︎」
『任せる!
……
聞こえたな? 存分に働け!』
カルデア側の通信は皆共有している。黙っていても、彼は自分のやるべき仕事を了解していた。
「はいはぁい
……
ほんっと、人使い荒いねマスターちゃんも、あの人も!」
頼んだよ、はじめちゃん! 通信の向こうの無邪気な声と、無言の期待を感じながら、新選組三番隊隊長斎藤一は、羽織を翻し物言わぬ影の軍勢に向かって行った。
「参っちゃうよね、僕ってば単なるマイナー人斬りよ? それこそ今回みたいな超ビッグネームが来るような戦場、荷が重いんですって」
そう言いながらも歩みに迷いはない。否、迷わされるのはむしろ向かい合う影たちの方だった。
「というか、そうやって複数人でひとりを囲むのって、本来うちの得意とするところなんだけど
……
ねえっ!」
ゆったりと向かってきていたかと思えば、瞬時に速度を上げる。神話の英雄のような最高速度などないはずなのに、影たちはその動きを目で追えない。
「
……
はい、まずはひとり」
その奇妙な踏み込みの謎を考える暇もなく、気がついた時には取り囲んでいたはずの男は、隊列の後ろで狙いを定めていたアーチャーの懐に潜り込んでいた。
「悪いが、あんたはここまでだ」
揺らめくように、男の両手の二刀が舞う。めちゃくちゃに振り回しているようにも見えるのに、その実まるで隙が見えない。
ここまで、の言葉通り、相性の不利などなかったかのように、アーチャーは瞬く間に切り伏せられていた。
「
……
さて」
肩の辺りまで伸ばした髪がふわりとなびき、隙間から目が覗く。胡乱げでありながら抜け目なく、爛々と不気味に光っている。
顔のない影たちは驚いたようにも見えたが、瞬時に動き出してふたたび男を取り囲む。
「形無きが故に無形、流れるが故に無限、故に我が剣は──」
だが、取り囲めたと思ったのがそもそも間違いであったようだ。男はまた一見フラフラとした態度で、包囲の隙を抜けていた。
「──無敵!」
そう言った時にはもうキャスターが、返す刀でバーサーカーを仕留められた。必死に攻撃を繰り出すも、強化不足のランサーでは太刀打ちできない。
気付けば、霊脈から湧いた増援は綺麗に消え去っていた。
「よし、雑魚はまあ、こんなもんか。あとは
……
」
瞬間、斎藤の身体を衝撃が襲う。
「
……
っ、ありがとね、マスターちゃん。やれやれ、一息つく暇もねえってか!」
攻撃の直前にマスターが無敵スキルを使ったことでダメージはないが、相当な距離を吹き飛ばされ、そのまま崩れかけた城壁に突っ込んだ。
影たちとは大きさも質もまるで異なる咆哮が響く。
『ドレッドノート
……
まずいな、追いつかれたか!』
脚の一本だけで斎藤の重量の何倍あろうかという巨獣は、それでも小さな獲物を見逃しはしない。唸り声を上げながら、瓦礫に埋まった斎藤に狙いを定めた。
「あらら
……
ちょおーっと危ない感じ?」
その時、斎藤の頭上から何かが跳んだ。
「ここがっ!
……
新! 選! 組だあぁぁぁっっっ!!」
吠えながら獣に銃を向けるのは、言うまでもなく新選組副長、土方歳三その人である。既にガッツを消費したか、立っているのが不思議なほどの負傷であったが、それ故に彼の宝具は一撃でドレッドノートの体力を大きく削り、後退させるに至った。
「
……
副長! あんたまたそんなボロッボロになって
……
!」
「うるせえ! わかってんならとっととあのデカブツ仕留めてこい!」
ようやっと立ち上がろうとする斎藤に、土方は手を差し伸べながら怒鳴る。
どこまで人使いが荒いのかとか、あんたのそれは信頼じゃなく無茶振りなんだよとか、助けに来てくれてありがとうございますだとか、言いたいことは色々あって、妙にぎこちなく彼の手を取り、立ち上がる。
副長渾身の宝具を受けてなお巨獣は健在。だが正直、斎藤に不安はない。
「負ける勝負はしない主義でね
……
」
無敵の男は、既に勝機を見出していた。
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