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鶏屋栄/夢鮪 20↑
2024-02-13 00:13:26
1392文字
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心中ごっこ
本橋と希死念慮を抱えた夢主の話。
「心中ごっこ、しよう」
平和な昼下がり。お昼を食べた皆さんもどこかへ出かけたり部屋に戻ったりして閑散としたリビングで、彼女がそう言った。
「心中ごっこ? なにそれ」
死にたいわけじゃないのかな、彼女がよければ死ぬまで付き合うんだけど。そんなことを考えながら言葉を返した。「うん」と普段と変わらない調子で肯定するので、真意が読めない。
「あの、近くに浅瀬の川があるでしょ。横たわっても死にそうにないところ。そこで、一緒に横になってくれるだけでいいの。一人は、寂しいから。」
それは一歩間違えたら心中にならないのかな。と不躾な言葉は喉の奥に仕舞う。それが彼女の命令なら。
「わかった。じゃあ行こっか。」
「うん。あ、濡れるから、着替えとか持っていこう? タオルも」
思ったよりも現実的に彼女は心中をごっこ遊びとして楽しむつもりらしい。それを聞いてなんだかほっとした。
「じゃあ、終わったあとに飲む温かいものも準備しておくね」
そう言えば彼女はこくりと頷いて、僕が給仕したお茶を飲んだ。
◆
「準備できたよ」
そう声を掛ければ、スマホを弄っていた彼女がそれをしまって僕の傍に来る。
「じゃあ、行こっか。」
手ぶらの彼女と少し大きな荷物を抱えた僕。歩く道では他愛のない言葉を交わして、程なくして目的地に着いた。
僕は荷物を下ろして、彼女は靴と靴下を脱いだ。「帰る時濡れてるのじゃ嫌だもん、本橋も脱いだら?」そう言われて僕も脱ぐことにした。
先に彼女が水に足を浸す。「つめた」当たり前の感想を当たり前のように言いながら、彼女は僕に手を差し出した。
「おいで、本橋。手は繋いだままで
……
」
彼女の手を取って、横並びになる。そのまま一緒に川床に腰を下ろして、寝そべった。
◆
水の流れるのが、心地よかった。じわじわと水温に蝕まれる体温の中、本橋の手の温かさだけが私を繋ぎ止めているような感覚。今この瞬間だけは独り占めできているという優越感。
ああ、このままなら死んでもいいなあ、と思った。きっと、誰かと繋がったままなら苦しみも心地よいはずだと、感じている。
そうして、冷たい水の中で意識が微睡みに溶けかかった頃。
私は体を起こした。手を繋いでいた本橋もそれに追従する。
「満足した?」
「うん」
死のうかな、と思ったことは本橋には言わないことにして、私はざばざばと岸まで歩く。本橋は私より早く陸に上がって、レジャーシートを敷いて、タオルと、それから着替えも用意して私を待っていた。
自分は乗らないままレジャーシートに上がる前の私の足を丁寧に拭き、服を差し出す。それから本橋は後ろを向いたので、着替えろということだろう。着替えさせてくれないかな。いや、それはここで何かしらの尊厳が終わってしまう気がする。やめておこう。
濡れた服を脱ぎ捨てて、体をぬぐい、着替える。髪はある程度搾っているし、体を拭いたタオルでまとめておく。
そうこうやっている間に本橋のほうも着替えが終わったらしい。
「ココア用意するね」
そう言ってからしばらくして差し出されたココアを受け取って、飲んでいる間に洗濯物が片されていく。
「本橋」
「はい」
「もし一緒に死のうって言ったら、お前は死んでくれる?」
私の問いかけに、本橋は唸る。
「
……
うん、一緒に死のうか」
どこか諦めたような笑みを浮かべる顔が綺麗だった。
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