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望月 鏡翠
2024-02-12 21:11:44
870文字
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日課
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#1263 「蛇」「心臓」「枠」
#毎日最低800文字のSSを書く
人に味方する良き神も入れば、人に仇なす悪しき神もいる。だが最も始末に追えず、かつ人々に愛されるのは、おそらくトリックスターだろう。敵とも味方ともいえない。ただ共通する性質は、気まぐれで悪戯者でそして何よりトラブルメーカーだということだ。
この世にある必ずしも人を利する訳ではないが、付き合い方を間違えなければ害するわけでもない存在が曖昧なものは、大抵が悪戯の結果生まれたものである。私の国に残っている物語を一つ聞かせよう。トリックスターが作り出したものの中で、もっとも厄介な存在の一つが、巡回ゴーレムである。
特定の場所を守り、ぐるぐると決められた場所を歩いて侵入者を見れば攻撃してくる。非常に厄介極まりないものだった。人間であればお構いなしに攻撃してくるし、どこを守っているのかはトリックスターの気まぐれ次第だったからだ。
晩御飯の残りを取られないように。こっそりと見つけたお花畑。景色のいい昼寝場所。そういうところにゴーレムが設置され、人が入れなくなった。入れなくはないが、人間と思われないような工夫や視界に入らないような注意深さが必要だった。
それらの中で、破壊されたのは一つだけ。花畑を守るために配置されたのに花畑を壊してしまった一体だけだ。
そんな面倒なもの、早く壊し尽くしてしまえばいいのに、良い神も悪い神もそうしなかった。厄介なことにそれらの被造物は、どれもこれも美しいのだ。人の美的センスにはそぐわない場所もあったが、大抵は神の好みに合うもので、そのまま放っておかれた。
酒や煙草が人の元に残されたままなのも、それが理由だった。
蠢く蛇が、そのゴーレムの心臓であった。象牙を削り出して作った美しい枠の中でとぐろを巻き、時折首をもたげて真っ赤な舌をちろちろとさせた。
たった一体の破壊されたゴーレムの心臓から、その蛇が逃げ出した。この世界に生じた最初の蛇である。全ての蛇はそこから生まれた。
それは巡回ゴーレムだった頃を覚えてるから、時折人を見つけたあとガブリと噛みついて命を奪ったりするのだった。
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