鹿
2023-12-31 20:01:16
2809文字
Public
 

クリスマス現パロ土斎2022

クリスマスはなんも考えてない現パロラブラブ恋人設定の推しCPを書いていい日なので書いたもの。2022年に書いたので脳内ツッコミ役が沖田さんしかいないが、今書いたら確実にパチもいるはず。

「斎藤、お前何か食いたいものはあるか」
 イルミネーションに彩られた街明かりの下、僕にそう聞く土方さんの姿は映画のワンシーンのように様になっている。残念ながら隣にいるのが見目麗しい女優ではなく、目の下に隈を作った貧乏学生のため、なんのジャンルの映画かわからない状態だが。
「そうですねー、こないだ一緒に行ったラーメン屋。あそこの冬季限定辛味噌ラーメンが気になってて」
 ダウンジャケットのポケットに手を突っ込んだまま答える。何シーズンか前の古着だけど防寒性能はなかなかのもので、雪が降ったって耐えられるのがお気に入りだ。対する土方さんはスラリとした長身によく似合う細身のシルエットのコート、かっこいいけど寒くないのかなあとは正直思う。
……それは別に今日行ったっていいだろ。週末の話だ」
「ラーメンはいつ食べてもうまいですよ。クリスマスだってそうです」
 世間的にはイベントの日であることまで忘れているような粗忽者とは思われたくない。この人が、強面に似合わず季節の行事を大事にする人だと知っているので。
「それに土方さんが連れてってくれるようなお高いお店じゃ、緊張しちゃって味がわかんなくなりそうです」
 これは嘘だ。以前僕の常識とは桁が一つ違う焼き肉に連れて行ってもらった時、確かに緊張はしたが肉はとてもおいしかった。いくらなんでもずうずうしいと思われそうでおかわりまではしなかったが、正直後悔している。でもこの人にとっての僕はカワイイ年下の男の子だから、夢を壊しちゃいけないし。
「お前がそう言うから、三ヶ月前から予約するようなとこは止めたんだがな」
 だからそういうのはいいですってと軽く答えたけど、三ヶ月前からずっとクリスマスを僕と過ごすつもりでいたことには正直にやついてしまう。僕は知らないと思ってるかもしれないけど、土方さんは昔よく一ヶ月持たずに彼女と別れていたのだ。
「クリスマスだからって無理して外に行かなくてもいいじゃないですか。本来は家で静かに家族とかと過ごす日ですよ」
 さて、勝負はここからだ。自然に、警戒させず、懐に潜り込まなくては。
「まあでも僕のボロアパートじゃいくらなんでもわびしいですね。暖房も最近効きづらいですし」
 がっついていると思われないようにしないといけない。この人は意外と真面目だから、こちらの下心に気づいたら「お前が学校を卒業するまでは……」とか言い出しかねない。
「クリスマスっぽいことするなら、土方さんの家にしましょうよ。チキンとケーキ買って……そうだ、土方さんが見ててくれるなら、ちょっとくらいお酒飲んでもいいですか?」
 ね、土方さん。と上目遣いでねだってみる。脳内で共通の友人である沖田が「え……何かわいこぶってるんですか…………」と白い目を向けてきてちょっと心は折れかけている。それでもクリスマスの大目標のため、僕は悪くない! 筋肉分自分より重い成人男性をかわいいと思っている人が悪い! と自分を励ましながら、甘えん坊の年下の恋人感を演出した。
 そんな健気な僕の顔を見つめる土方さんは、僕が思ってたより驚いているようだった。なんというかきょとんとしている。眉間にシワがよってないと、顔立ちが整っていることがよくわかるな。
…………そうか」
 ずいぶんと長い沈黙の後、ふ、と微笑みながら土方さんはそう言った。うわ、顔がいい、と思わず口に出すところだった。危ない危ない。
「わかった。土曜は一緒に買い物するか。迎えに行くからな」
「行きます行きます、やったぁ」
 僕の頬に手を添える様があまりにも伊達男で、そんなのいいから早くホテル行きましょと口にしそうになったのを、ぐっとこらえて無邪気な笑みで応えた。
 よし、これでイブの夜を土方さんの家で過ごせる。あとは当日「もう暗くなったな、送ってくぞ」などと野暮なことを言い出さないよう、うまいこと酒を呑ませないと。そしてクリスマスの雰囲気に乗じて「僕がプレゼントです♡好きにしてください♡」と言ってやるのだ。
(え……キモ……
 脳内の沖田がドン引きしているけどかまうものか。まだ学生とはいえこちとら成人だ、いつまでも触れるだけのキスで満足できるわけがない! せっかくの恋人と過ごすクリスマスイブ、セックス以外何をするっていうんだ⁉︎と、僕は大いにはしゃいだ気持ちでイブ当日を迎えたのだった。
 それがまさか、あんなことになるなんて……この時は思ってもいなかった。
 
 イブの朝、土方さんから迎えの時間連絡で目を覚まし、ウキウキで準備を済ませた僕の耳に一台の車のエンジン音が聞こえた。六畳一間のボロアパート前の道路に一時停止してていいはずない高級車から、これまたモジャ頭の一般学生なぞ迎えにきてる場合ではない色男が降りてくる。
「すみません、わざわざ来てもらっちゃって」
「俺が一緒に行きたいんだ、気にするな」
 フッと笑う顔がいつにも増して男前で、速くベッド行きましょう! と言いたくなったのを飲み込んだ。
「まずどこ行きます? チキンとか惣菜とかですかね」
「いや、料理はもうデリバリーを頼んであるから行かなくていい」
 おや? では一体どこに行くというのだろう。
「クリスマスプレゼントを買いに行くぞ」
 わあ~とニコニコしながら僕は内心焦っていた。そういえばあったなそんなの、何も用意してないぞ。プレゼントは僕です♡がスベったら目も当てられない。当初の予定よりベロベロになるくらいまで呑ませるしかないかもしれない。酒で土方さん勃たなくなったらどうしよう。
「着いたぞ」
 そんな計画を練っていたらいつの間にか目的地に到着していたようだ。
……え、ジュエリーショップ?」
「ああ」
 迷いなく突き進んでいく土方さんに慌ててついて行くが、ジーンズの学生が入っていい場所なんだろうか。
 正直気後れしかしない高級感あふれる店内を、土方さんは背筋を伸ばしてずんずん進んでいく。そうしていかにも落ち着いたベテランの雰囲気の店員に、堂々と注文を述べた。
「エンゲージリングを作りたいんだが」
 ぽかんと間抜けヅラを晒す僕の手を取って、土方さんは百人の女が百人ときめきそうな甘い声と表情でこう言った。
「本当はお前が卒業するまで待つつもりだったんだがな。お前が家族と過ごす日を、俺と一緒にいたいと言ってくれて決心した」
 そうだっけ? いや確かにクリスマスは家族と云々とか言ったかもしれないけど、そこ全然主題のつもりなかったんだけど。
「正月はお前の実家にも挨拶に行こう。改めて言う、俺と結婚してくれ」
 唖然とした僕の口から、ついなんの思考も介さない本音がまろび出た。
「えっ? クリスマスセックスは?」
「今したら婚前交渉じゃねえか、お前のご両親に許してもらうまでするわけねえだろ」
「そんなあ!」