鹿
2023-12-31 19:35:29
1909文字
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男にモテる斎藤

waveboxに男性にモテまくってしまう斎藤というのはどうでしょうとリクエストをいただいたので書いてみたもの。
2023年12月31日現在見てみると「パチはそんなこと言わねえ!」案件すぎるけど、これを書いた時はぐだイベが年内にあるかどうかもわからない状態だったので…許されよ…

伊東先生が斎藤を気に入っているのを知ってて潜入させた副長だけワンチャンあるかもしれない。そんなところは的中しなくていい。

 それはいつものカルデア新選組屯所における、ミーティングと言う名の暇を持て余した時間のこと。
「土方くん、マスターがこの日程で編成の確認をしたいそうなんだけど……
「いや、その時間はカーミラと先約がある」
 カルデア拷問会という死んでもお近づきになりたくない会合にて、土方はハンガリーの女城主と何かと交流がある。
「さすが幕末一の色男。モテモテでうらやましい限りですね」
 斎藤としては単なるいつもの軽口として言ってみただけのこと。しかし土方は、妙に怪訝な顔で応えた。
「いや、お前もモテるだろ」
「え? 別にいいですってそんな」
 慰めや軽口を返したと言うには妙な顔だと思った。まるで不可解なことを言っているのは斎藤の方とでも言いたげである。
「まあ確かに、こう見えて遊び人なんで。副長ほどじゃありませんが……
「お前の周りには『皆は知らないだろうが、斎藤はああ見えて情に厚く忠義心がある、誰より信頼できる男だからな……』って内心思ってるやつが常に五人はいるじゃねえか」
「それモテてるって言います⁉︎」
 予想外の方向性と言わざるを得ない。確かに斎藤は間者働きもしていたので、嫌われて遠ざけられるような行動は避けてはいたが。だがしかし。
「なんでそんな、今ひとつメジャーになりきっていないバンドを見るような態度なんですか⁉︎」
「お前気づいてなかったのか? 生前からずっとそうだし、なんなら伊東もそう思ってたぞ」
「いやそれは、間者として潜入してたからであって……
「逆だ。伊東がそう思ってたから、俺が伊東一派への潜入を命じた」
「何ですかその百五十年後に明かされる真実は⁉︎」
「土方くん、君なんてことを……
 しれっと言ってのける土方にツッコむ斎藤、ドン引きする山南。屯所の雰囲気はいよいよ混沌としはじめていた。
「ああそれなら」
 そしてせんべいを食べながら聞くともなく聞いていた沖田まで加わってくる。
「近藤さんもそんな感じのこと言ってましたね。『一はちょっと誤解されやすいところがあるからなあ』とか」
「何? なんで局長までそんな感じなの? 新選組って後方理解者面腕組み野郎の集まりなの?」
……いや、そういえば永倉くんも言っていたね。『斜に構えるのをやめたら俺以外にももっと真っ当に評価されるだろうに』って」
「なんでテメェまで理解者ヅラ列並んでんだ永倉ァ!」
「お前なんでいつも永倉にそんなキレてんだ?」
「っていうか、言ってる土方さんが筆頭ですよね。その後方腕組み男の列の」
「舐めるな。俺は後方腕組み理解者ヅラしてる奴らのさらに後方で『フン……ようやく気付いたか……』ってツラしてるぞ」
「古参のマウントみたいなことやめようか土方くん……
 聖杯はサーヴァントに召喚された状況に対応した知識を与えるものだが、歴の長いファンが取りがちな鬱陶しい態度まで教えて聖杯戦争をどうするつもりなのか。問うものはここにいなかった。
「てかそもそも、なんでみんな無言後方腕組みスタイルなんですか? 俺皆から面と向かって褒められることそんな無いんですが!」
「それは本当謎ですね。私は褒める時はちゃんと褒めますし、このヘラヘラ男がって思った時はそう言うのに」
「うーん……それこそバンドと同じで、自分以外にも理解されてほしいと思いつつ、そうなったら寂しいという気持ちがあるのかな……?」
「そうなんですか副長⁉︎」
「いや、俺はかなり褒めてる方だろ」
「全然足りませんね! いつも黙って『フン……あいつなら当然だ……』みたいな顔ばっかしてますよあんたは! 生前はそれこそ潜入とかあって距離置いてましたけど、別にここではそんな理由ないでしょう⁉︎」
「ですって土方さん。たまには腕組んでないでコール&レスポンスしてあげたらどうです?」
「それはもうバンドというか地下アイドルなのでは……
 山南の発言は斎藤と土方の声で遮られた。
「はい大きな声で! 斎藤一は⁉︎」
「絶対に裏切らねえし死なねえ!」
「それもう聞いた! 他には!」
「剣の腕も立つし頭も切れる!」
「もう一声!」
「スーツが似合う! 顔も良い! 俺ほどじゃねえが!」
「一言余計だよ!」
「羽織はもっと似合う!」
……そいつはどうも」
「声が小せえ! 腹から声出せ!」
 突如始まったコール&レスポンスは、その後も斎藤がいやもういいですと言いそうになる度、古参ファンが延長を要求し、小一時間ほど続いた。
「山南さん、これなんなんですか?」
「なんなんだろうね……?」
 古参ファンのノリについていけない二人はただ茶を飲んでいた。