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望月 鏡翠
2024-02-12 18:41:11
850文字
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日課
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#1261 「城」「岸」「切る」
#毎日最低800文字のSSを書く
難攻不落の城塞は、本当の意味で誰も立ち入ることができない場所に相成った。それは見晴らしのよい岬にある、美しい城だった。
壁や瓦は黒く塗り込められ、天気がいい日は青空を背負ってよく映えた。その外観をから、城の名とは別に漆城とあだ名されていた。
岬にある城で、高台からは海も陸もよく見渡すことができた。片側の岸はスッパリと斧で立ち落としたような断崖で、攻め入ることは愚か、打ち付ける波と岩礁に阻まれて近づくことすら難しかった。
つまり陸から攻め入るしかないわけだが、そちらもものを運び込むために付けられた道以外は、険しい岩場でうっかりと転んで手をつけば、岩で肌を切る。
まさに天然の要塞だった。
その道が、断たれてしまったのである。原因は地震だった。切り立った崖ができてるということは、岩肌の角が丸くなるほどの年月は立っていないということで、もともと地殻変動が多い土地柄であったのだろう。
そして縦に割れやすい場所でもあったのだろう。
城に向かう道の間には、覗き込めば海が見えるような、深い深い地割れができてしまった。
まだ城には人がいて、なんとか脱出の手段を考えねばならなかった。
しかし険しい岩場である。
建築物を作るのは簡単ではなかった。そもそも城を立てるときですら、基礎を作るのに最も時間がかかったような有様である。
その上、城側には大工の心得があるものはいない。こちらには学があるものが少ない。なんとか矢文で会話をするも話は遅々として進まなかった。
籠城の備えがあるのは、戦に備えているときだけだ。必要な時以外は、必要以上の米は徴収できない。何より岬の城には水を得にくいという致命的な弱点があった。
道がなくなってから、気がつけば三ヶ月経っていた。城からの言葉を届けるものはいなくなっていた。そのことが恐ろしくなり、城に入って中をのぞいてみようというものはいなかった。
だから橋がかけられることはないまま、真っ黒な廃墟の城は今も岬に佇んだままになっている。
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