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ree_1116
2017-07-19 16:57:44
2648文字
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あいのうた(ルロー)
そのうちちゃんと書きたい…
何処からともなく、
「
……
?」
風に乗って流れてくる音階になんとなく出た、先。
いつもであれば騒がしいだけの、甲板。動く影すらない。皆が皆、
ああ、
「上手いもんだな」
聞こえる音は、麦わら屋のもの。
お気に入りだかなんだかでナミ屋に落ちても知らないわよと散々言われているにも関わらず、大抵いるそこに、今日も座り込んで、だた前だけを見据えている、背。揺れる、麦わら帽子。そこから、潮風に乗って流れてくる、音符たち。
「綺麗な曲だな」
奏でる旋律はあいつらしくもない、何処か穏やかで優しくもあり、果敢無げでもあるような。なのに、情熱を仄めかせ。そんな、
「愛の唄、ですよ」
一人入り浸っていた本が並ぶ部屋から出て、真正面から風を受けながらなんとなく立ち止まって、聞いていた俺の横に並んだのは、音楽家。骨屋だ。バイオリンを片手に、素晴らしいですねぇと感嘆の声をあげる。
染み渡るような声に、伸びる音。響く、テノール。
クルーたちが聴き入っている。どこかうっとりと。
愛の唄って、あいつ、
「東の海に昔から伝わる曲です。前からよく歌っていたのですけどね。こんな風に、情感込めた歌い方になったのは最近で」
「
……
へぇ」
「私が仲間になった頃なんか、ナミさんにもっと心込めて歌えとか怒られてましてね。ルフィさんは、なんのことだかわからないご様子だったのですが」
そこで、ひとつ。
俺を見て区切ったからなんだ?と思ったら、
「恋、しちゃったんですかねぇ」
「こい?」
「ええ、好きな方でも出来たのではないでしょうか。だって、」
こんなに素晴らしいんですよ、と続く賞賛。
それにも、へぇとだけ答えた。
確かに、その相手に向けて歌っていると思えば、そんな感じにも聞こえる。
好きな、人。
恋の相手。
単語を並べて、思い浮かぶ面影は、ひとつ。
きっとそうなんだろう。
いいよそれはおれがやるから、と言い切った。
そうして、薄れる意識の先にあった光景。
皆と離れて向かった、先。
そうなんだろう。
そう、なんだ。
「なら、」
「はい?」
「無理やり強引にでも奪えば良かったってのに」
「トラ男さん?」
「だって、そうだろ?」
あんな風に歌で愛を奏でてるのに。
どうしてそうしなかったのか。
奪いに行ったのだと思った。なのに、一人戻ってきた。
思えば、その後、どことなく雰囲気が変わったようにも思える。ああ、そういうことだったのかと、今になって納得した。
「バカだな」
「あの、トラ男さん?」
「
……
バイオリン」
「はい?」
「弾かないのか?」
「あ、ああ
……
ええ
……
音を合わさせて頂きたいと思って急いで取ってきたのですが、折角の唄声に私の伴奏は必要ないかと」
「んなことねぇだろ」
「っ!! ですよねっ!!!」
「ああ」
「トラ男さんもご一緒にいかがですか?」
「俺はこの曲知らねぇよ」
「そうですか?」
「
……
聞いてるよ」
あいつがただ一人の為に、その人を思い浮かべて、想いを込めて歌う、曲を。
それくらいなら、
「
……
ぇ?」
では、早速と声に合わせた音が重なり、それはもう美しく青く壮大な空に響く、中。
馬鹿だよな、と思った。
他の人へのものだってのに、もっと聞いていたいと思った。
そんな、自分に気付いたこと、ひとつ。
「あ~、」
未だ、聞こえる音の中。
また一人、籠った部屋。
だから、俺もあんな風に歌えるのではないかと思って。
誰も居ない部屋で一人、聞こえる声に合わせて音階を連ねてみたが、あいつのように歌えるわけもなく。
「これじゃ、」
愛の、ではなく、悲恋の唄になってしまうなんてことを思って、やめた。
「何やってんだ、俺は」
なんとなく、何処かで、薄々と。
不思議な感覚に捉われていることに気付いたのは、きっとそれなりに前、だ。
再会した時からそうだったのかもしれない。
笑っているやつに、良かったと思ったのが間違いだったんだろう。
あんなこの世の果てのような場に乗り込んだのは、別に他意があったわけではない。ただ、単にDだから、だ。何故か死なせてはならないと思った。そうして、自分のみではなくクルーたちの命すら賭けて、あいつの元へと行っていた。あいつには気まぐれとは言ったが、Dというだけでどうしてそこまでしたんだ、とは思っていた。あの場に他にもDはいたってのに。どうして、と続けて、あの時既に俺はあいつを選んでいた、という事実に気付いた。賭けるならこいつ、とでも思ったのだろうか。その答えは、未だに定かではない。でも、此処に至って、あの選択は間違ってなかったんだ、と思えている。あの人の本懐を成し遂げる為に、幾多もあった選択肢の中から選んだものは、間違いではなかったと思えている。例え、思い描いた先とは異なっていても、13年間、全てを向けたものは遂げることが出来た、事実。感謝してる。だからといって、
「バカなのは、俺か」
命を、賭けた。
あいつが負けるのであれば、俺も共にと思った。
命を預けた。渡した。
俺のすべてをあいつに。
「ああ
……
」
そうか。
あの時、13年間の全て、俺の全てだったことを、あいつが引き受けてくれた。受け渡してしまった。
俺が、と思っていた本懐。他の人の手でもなんでもかんでもどんな手を使ってでもとは思ってた。けど、結果。その思いの結果、果たせた先にこんなになるなんて思ってもなかった。
全てを、預けた。
渡してしまった。
命も、体も、心もだ。
「なんだよ、それ」
同盟は継続だ。失くすと思っていたものが続いてるとなれば、それも当然の流れだ。この先、あいつの為に、動く。それは、借りを返すようなもんだ。それだけだってのに。それだけだったってのに。
「なんで、あんな歌、」
聞いてしまったのだろう。
他の人の為の、俺ではない人に向けての、愛の歌。
わかってるってのに、その先を勝手に自分に置き換えてしまっただ、なんて。
ここにきて、認めてしまうなんて。
「嫌だ」
認めたその時が、失った瞬間なんて。
ああ、そうか。
「俺、失恋したんだ」
声にして、更に実感してしまって。
「あ~、」
また、あいつと同じ曲を音にしてみた。
矢張り、悲しい恋の歌にしか聞こえなかった。
*
書き切れれば死にネタになります
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