ree_1116
2017-07-03 19:58:23
4119文字
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夕日(ルロー)

ルローワンライお題【夕日】あんま夕日メインじゃないっぽくなったってか…色々迷子になったあげくよくわかんなくなってしまいました…残念(´;ω;`)

瞼の裏側に、映る夕陽に、


ザァ、と行きかう音を聞きながら。
連なる白波の向こう。水平線の彼方にある風景に、ああ、と思う。
沈みゆく、橙。淡く緩やかな陽射しに、心が鎮まりかえるのを感じた。
もう拝むことなんてないと思っていた、色。
ある意味、覚悟していた。大地に降り立った時から、もう海を行くなんてこともないのだろうと。十三年間、そのためだけに生きて来た。だから、どうなっても人としての形を失っても構わないと思ってたってのに、

「綺麗だな」

一人。
その色を堪能していた。
何故か子供のころから好きだった。
光り輝く朝のそれより、強過ぎる真昼のそれより、何処か薄く柔らかでいて、果敢無さを浮かべるこの刻を好んでいた。
ひとつ手前の島では見ることの出来なかった、夕日という一日の終わりを告げる色に、身を晒す。明日なんて来ないと思ってたのに、


今はこの時を、と思って此処に来た。
乗った船は、変な船。
それでも、あいつらの船とは違って、俺を構う輩は居ない。だから、一人。
残ることが出来た実感を、と思ってたってのに。

「あ~あ~、こほん」

わざとらしい声に、はぁと溜息が出た。
そんな演技しなくても近寄って来たことくらいわかってた。
なのに、そいつはまだ、あ~と意味なく声を出し、ちらちらと、船尾、手摺りに寄り掛かり、夕日を眺めていた俺を伺っている。
全く。
バルトロメオのやつらは俺に寄ることなんてないが、こいつらは違うこともわかってたし、と未だちらちらこちらを見てるやつに、なんだ、と言葉ではなく、首を傾げることで伝えれば、あ、トラ男!なんて、そこにいたのかぁとでも言わんばかりに駆け寄ってくるって、なんだよな。別にいいけどよ。

「いやぁ、お前さ」

たたた、と横に並んだのは、鼻屋だ。
珍しいというか、パンクハザードではあんなに俺のこと怖がってたってのに。もうなんでもなく並ぶやつに、知らずに笑みが浮かんだ。長い影を伴って、あのよ、と続けたのは、

見聞色かな、と思って」

覇気の、話しだ。
そこで、思い出したこと。
そういえば、あの時不意におかしな気配を感じたというか。遠くで誰かに見られているような、感覚に陥った。そうか、あれは、

「お前だったのか」
「ん?」
「いや、で、なんだ?」
「出来れば、あの感覚をどうにかちゃんと手にしてぇってか」

ああ、なるほどな。

「ルフィとゾロは使えるみてぇだけどよ、あんま得意っぽくねぇし。サンジが一番適役かな思ったんだけどよ、居ねぇし」

それで、俺か。

「見聞色と言っても、その名の通り、見るのを得手とするやつと聞くのが得手をするやつがいる。要するに人それぞれってことだ」
「そうなのか?」
「ああ、お前は遠くのもんを影としてはっきり見たんだろ」
「おう」
「黒足屋はどちらかというと、聞くのが得意だと思う」
「サンジ?」
「黒足屋とは少しだけ話しをしたことがあるんだが、人が発する聞こえるはずのない、声や音。心に強く思ったことを全部じゃねぇが、感覚的に捉えることが出来るみてぇだな」
「ほぉ全然違うな」
「だろ」
「んじゃ、トラ男。お前のはどんな感じなんだ?」
俺は、極々普通だな」
「ふつー?」
「視界にとらえてないやつの行動がなんとなく読めたり、見えたりああ、でも」
「ん?なんだよ?」
「色が見えるな」
「色?俺は真っ黒にしか見えなかったぜ」
「まぁ実際俺が見える色は、特になんの意味も持たねぇもんだ。どう足掻いても見えるはずのねぇ遠くの存在をはっきりととらえることが出来るお前のが、見聞色の覇気使いとしては優秀だな」
「へ、へへ、そっか?」
「その力でこの先麦わら屋を救うこともある。高めておいて悪いことなんて何一つねぇ」
「だろ。だよなっ」

あいつの仲間としてこの先共に行く、存在。
少し、と何かが浮かんだが、軽く首を振って、否定する。

「トラ男の色が見えるってのも面白いなぁ~なぁなぁどんな風に見えるんだ?」
ああ、基本的には覇気を使わねぇとわからないもんだがそうだな、そういえば、お前たちの船に乗った時」
「俺たちの?」
「麦わら屋が、ドレスローザもワノ国も楽しみだみてぇなこと言ってただろ」
「ああ、あの時な」
……あの瞬間、お前ら一味の色がふわっと見えた。温かな綺麗な色だったな。それを見て、麦わら屋はいいクルーたちに囲まれてるなと思った」
「へぇなんか照れるな」
「照れることなんてねぇだろう」

へへへ、と笑ってるやつにも見えた、色。
それに、本当にと思う。
愛されてんだな、と。

「人によって異なるもんだが、基本は同じだと思うって、俺が勝手に思ってることだがな。それで良ければ」
「おお!頼むよっ!」
「了解だ。それじゃあ、」

一通り、教え込めば、それはもう喜んで。

「そのうち、お前の力にもなるぜ」

なんて、長い鼻を更に長くしたみてぇに言って、まだまだ続く夕暮れ刻に、長い影を引き連れて、踵を返した。

そんなん、別にいいのに」

それでも、嬉しく思って、この先に居る仲間たちのことを思い出した。
早く、会いたいなと。

綺麗だ」

何度目かになる言葉に、俺はこんなにも魔に遭うというこの風景が好きなんだな、と思い知って。
そうだ、とひとつ思い付き、ゆっくりと視界を閉ざしてみた。
瞼に映る裏側。もしかしたら、と。




「トラ男ーーー!!!」

飯だってよ!と呼ぶ声に、そいつの後ろにいる奴らには嫌な顔をされたが、頷き、そちらへと向かう。当然、もてなされてるのは麦わら屋のやつらだけで、俺と侍たちはある意味置き去りに始まったのは、今日二度目の宴、だ。ゾウへ向かう記念宴と銘打たれたもの。どーでもいい、と適当な場所に腰を掛けた。ニコ屋が気遣ってなんだろう持ってきてくれたものを、口にしながらも既に暮れた夜の世界に、思い付いたことを試してみる。

輪の中心。
散々なまでに肉を頬張っているやつ。
僅かながらに、見聞の覇気を纏い、そいつを見れば、真っ赤にそれこそ太陽のように燃え盛る色が浮かんで。強過ぎだと、思った。でも、


ゆっくりと、目を閉ざす。
暗がりの広がる世界に、閉じ籠る。
そうして、また覇気を微かに纏えば、浮き上がる、色。


ああ、夕日だ。夕暮れだ。黄昏だ。逢魔ケ刻、だ。
好む色が、瞼の裏側に映る。黒一色の世界を淡く染める。
綺麗、だ。


俺はこの色が、


ロー殿?」
「え?」

間近からの呼び掛けに閉ざしていたもんを開ければ、侍の姿。
なんか不思議な顔してるが?

「なんだ?」
「あ、いやなんでもござらぬ。酒は」

いかがかな、と言われるがまま、もらうと杯を傾ければ、とくとくと注がれる、透明。ゆらり、と揺らしてから一気に呑み込めば、おお、と何故か喜んだ侍がもう一杯とまた注ぐ。気付いたゾロ屋が、これも美味いぞとまた注ぎ、強いのね、とニコ屋にも注がれ。気付けば短時間に結構な量を吞んでいた。

「こんな酒を呑んだのも久し振りだ」
「そうなのか?」
「ああずっと一人だったからな」
「そうか、まぁ呑め呑め」

ほらよ、と機械で作られた手で杯を持ったやつが、乾杯だと掲げるから合わせて、もう一杯。ぐっと、口に含めば、僅かに世界が揺れ出した。ああ、酔ったか。でも、ここは心地が良い。それまで仲間たちと別れてからというもの、こんな安まる刻もなかった。だからなんだろう。ふうわりとした気分のまま、


また、目を閉ざす。
朧気に、浮かべた見聞の、色。
瞼に映る、太陽。
夕暮れ時の、色。
真っ直ぐに見るには強過ぎて、俺には無理だ。
でも、こうして瞼の裏側になら、見ていることが出来る。


ああ、太陽だ。
誰しもが憧れる、唯一。
触れることすら近寄ることすらも叶わない、存在。
正面から見れば、焦がされるような強さでも、こうして瞳を閉ざし、離れた場からでなら見ていることが出来る。
だから、俺はこれでいい。
共に行くこともない。この関係も、そのうち必ず終わりを告げるもんでしかない。
鼻屋のように、この先もなんてことはない。当たり前、だ。
だから、遠くからでいい。
いつの日か、この世界の王になる日も、離れた場でその一報を耳にすることが出来れば、


それだけ、で。


太陽は皆の太陽、だ。
わかってる。


だから、と目を閉ざしたまま。
そのひとつを見詰めていた。
揺らめいているのは、きっと酒の所為。
その様が更に、水平線に浮かぶ色に思えて、

ゆらゆらゆうわり、揺れる夕日の色。
淡さを携えたそれは、気付けば何故か瞼の裏側を占領するほどになっていて、


え、と思った刹那、


「っ、」


熱を、感じた。


「な、」


思わず開き見た先には、未だかつてない距離に黒目。漆黒の、色。そこに俺が映って、


「トラ男


腰を掛けた俺の膝の上に手を置き片膝を足の合間に、近しい位置を保ったまま、呆れたように落とされた声の主は、


「麦わら屋?」


太陽、


お前なぁ」


全くと顔を顰めて、麦わら帽子のない頭を乱暴に割きながら、告げられたことは、


「そんなに無防備にしてんなよ」
え?」


疑問符が浮かんだ俺に、こんなにも近いってのに、更にぐぐっと寄って来たやつは、


「襲われちまうぞ。……俺に、」


なんて見たことのない色を浮かべ、


なんだよそれと、近寄ることも触れることもないと思っていた焦がれるような熱さを受け入れるかの如く、目を閉ざした。



途端浮かぶは、夕日の其れ。
淡く穏やかで、果敢無さを浮かべた色。
知ってる。
この色も、強過ぎるもんだって、眩さを伴った光だって、


全ては、ひとつなんだってことくらい。


でも、俺にはこのくらいの色が丁度いい。
魔に出逢うという、この瞬間の色が、





2017.07.03 Ree.MORITA
色々と迷子になった
通じるでしょうか色々と