ree_1116
2017-04-06 18:21:00
4227文字
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壁ドン(ルロー)

ルローワンライお題【壁ドン】大遅刻してしまったあげく、ちゃんとお題に適ってるか微妙でいて、どこにでもあるありきたりなお話しですが…宜しければどうぞです…

とん、と。
押し付けられた掌に、あ、と思った。

知ってる。

これ、と連ねて覆った影を見上げる。
あの時とは違う、あげた視線の先、

「とらお、」

この緊迫した状況下には有り得ない程の、声で。


ああ、


思い至って、顎をあげる。
静かに目を閉ざす。









「麦わら屋」


別に、特段用なんてない。
なにもない。
ってのに、知らずに無意識なまま、声になっていたのは、俺だけの呼び名で。


ドレスローザ決戦前夜。
新世界にあって、とてつもなく穏やかな海の上。
天上には、美しい三日月。
一応な同盟の目的も話した。作戦の詳細は明日でいい。その手しか選べないとは思うが、朝刊を見てから、だ。騒がしかった甲板も今はある程度、静かになっていた。すごい目つきでうろついている奴らもいるし、ちゃんとロボ屋が海の状況も見ているし。今出来ることは明日に備えて、眠ること。休むこと。シーザーは甲板に置き去りになっているから、この部屋使えよとハンモックが並んだ室内を案内されたが、外を選んだ。人の居ないほうへと向かおうとして、なんとなく見た先。
三日月に、背。
なんてことない、同盟相手の船長の背。
確かに何かを感じた。
Dという名を持つ、男。とんでもないことをしでかしたってのに、生きてここにいる、やつ。
その強運のようなものを、拝借することに決めた。イレギュラーではあったが、これも道なりだと言い聞かせ、悪いが巻き込ませろと持ち掛けた、同盟というたった一日で終わる、約束。


明日、俺は死ぬだろう。
それでいいと思っているし、命を賭けなければ、成し遂げれないことだとも思っている。
だから、いい。
13年間のすべてがそこにある。
だから、俺を捨ててでも叶える。
それでいい。
今は眠るだけ、と踵を返そうと思ったというのに。


不意に、声になった、音。名前。
なんだ?と思った。自分でもよくわかってなかった。
ただ、


ただ?



トラ男?」


耳に届いた音は、とても小さなもので。
自分の声とも思えないものだったというのに。


名の先の人物はたがえることなく、振り返った。
三日月の光を浴び、ゆっくりと俺を見返り、名を呼んだ。
それは、どうした?というような含みを持っていて。

「あ、」

声になった。
でも、何故呼んだのかてめぇですらよくわかってない呼び掛けだった。
だから、

「いや、なんでも」

ない、と切ったってのに。

「わ、」

くい、と手を引かれる。
船尾。誰もいない場に連れて来られて。
とん、と押し付けられたのは、壁。
同じような音を立て、顔の横に押し付けられたのは、掌。
なんだ、と思った瞬間に、暗がりだけだった視界が更に暗くなった。
くい、と伸ばされたつま先がわずかに下げた視線の先に映る。
なんで背伸びなんて、と思った刹那、

「っ、」

下から、触れてきたのは、熱でしかなくて。

「ん、んっ、ん、」

熱いと感じた直後に、その熱さは口内を漂っていて息が詰まった。眩暈がした。
ちゅくちゅくと耳に木霊する、水の音。
はっ、は、と切れるのは、俺の呼吸だけで。
下から押し上げるように、口づけてくるやつは、壁に手を当てたまま、背を伸ばしたまま、まるで貪るよう、触れ合わせ、舌先でなぞり、意識すら奪うような。そう、欲を感じさせるように仕掛けてくる。
気付けば、背がずり落ちていて。膝が震えだしていた。
かくかく、と沈む俺に気付いたからか、そこでキスはやんだ。

「はぁ、ぁ、」

離れた箇所が寒い。
今、起こったことがうまく処理出来ない。考えがまとまらない。
なんで、キス、なんて

「トラ男」

混乱し動揺している俺に対し、どこか余裕でいて柔らかな笑みを浮かべた年下の男は、笑みを浮かべ、ずっと壁にあった掌で俺の頬をなぞりながら、


「続きは、明日な」


と、言い残し、踵を返した。


「な、んだよ」

明日って。
続きって。
ずるずるとその場に座り込み、あった出来事を反芻する。
そうして、辿り着いたひとつ。
多分、そういうことなんだろう。


ひでぇな」


呼び掛けた声はそういう意味だったんだろう。
壁に押し付けられた瞬間から、キス、と思った。なのに、否定するでもなく非難するでもなく、なんでもなく受け入れていた。いや、受け入れたというより、触れる瞬間を待って、


「ひでぇ」


明日、俺は死ぬ。
今でもそう思ってるし、自分の命くらい賭けねぇと果たせないとも思ってる。
なのに、

「明日って」

死ぬつもりで、船を降りた。
待ってろなんて言ったくせに、実際のところ帰れるとは思ってもない。
その為だけの人生でいいとここまで来たってのに、

「なんだよ、それ」

続きは明日ってなんだ。
何も告げてない。同盟の裏に隠された真意なんて、なにひとつ。
なのに、何かを感じ取ったってのか?あの子供が?

「そんなわけ」

ねぇだろ、と思いつつも、でもとも思っていた。
何か感じ取ったからこその、明日、なんだろう。

「続きって」

はは、と笑う。
知ってんのかよ、と笑う。
明らかに欲を感じさせたキスに、体のどこかでもっとと思った。更なる奥に触れてほしいと、

「バカ」

そんなこと、あいつに求めてなんてないってのに。
求めてるはず、なかったってのに。
手を組んだのは、ただひとつの為。
それ以外のものなんて、なかったってのに。

「なんだよ、これ」

心臓が、ドキドキしてる。
続きなんて。明日なんて、有り得ないと思ってるってのに。
心が、続きを明日をどこかで楽しみにしているような気までしてきて、


嫌だな」


本当に?
続きって、明日続きなんて、本当に?
お前、俺を抱くのか?抱けるのか?
冗談、と笑ってるってのにいつの間にか自分を抱き締めて、芯が欲してるなんて、

「なんだよ、俺」

見上げた、空。
三日月がない方角の、空。
月の光が疎らな夜空には、薄らと星々が瞬いている。

「コラさん」

明日。
明日、叶えてみせるから、

だから、見ていてくれ、と明日という約束を忘れるよう、告げて。
目を閉ざした。








国中から、響き渡るは、カウントダウン。
減りゆく数字を聞きながら、瓦礫に背を預けて呼吸を整えていたその時。
ふらり、と立ち上がった影。
ギロリ、と睨み付けた先にあるのは圧倒的な気配。
ぐと、拳が握られたのが見えた。

「麦わら屋」

きっと俺がここにいることすら気付いてなかったのだろう。そいつは、は、と振り向き、トラ男とふらつきながらも駆け寄り、俺の目の前、足の間にしゃがみ込む。

「動けるのか?」
「それはこっちの台詞だ。覇気は戻ったのか?」
「全部じゃねぇが、大丈夫だ。お前は?」
「動くのはきついが能力は使える」
「そか。なぁ、トラ男。悪いけどよ」
「ああわかってる。あの場に飛ばせばいいんだな」
「おう。でよ、」
お前と女を入れ替える」

わかってる、と告げれば、うん、と頷いたから、そのまま立ち上がり、行くのかと思ったやつは何故か、ほ、とひとつ息を吐いた。

「なんだ?」
「手腕、繋がってる。良かったな」
ああ、ありがとう」

何人の心配してんだか、と改めてそいつを見れば、まさに満身創痍。覇気が戻りつつあるとは言え、

「ボロボロだな」
「ん?そか?トラ男だって似たようなもんだろ」
「ああ、そうだな」
「ししし」
「ははは」

そこで何故か、笑みがこぼれた。
二人して、笑って。
だから、なのかもしれない。
切迫していたってのに、心が柔らかくなって、つい、

「お互いこんなボロボロじゃ続きなんて出来ねぇな」

声になってしまったのは、昨日の言葉。

「え?」

聞いたやつは、僅かに目を見開いて、疑問符のような音をあげた。
そこで、あ、と気付く。
違ったと

「あ、いや悪い。違うんだ」

ああ、そうか。
やっぱりあれは、明日への約束だけだったんだ。
そりゃそうだ。俺たちはそういう関係ではない。同盟相手。一時手を結んだだけの、関係。
何かを感じ取ったからこそ、死ぬなよという意味だけ込めての、明日という約束だったんだ。そうだよな。冗談と思った。有り得ないとも思った。ちゃんと、わかっていたってのに俺は何、

「なんでもねぇ。変なこと言い出して、」

悪かったともう一度、告げようとしたってのに。


「麦わら屋?」




とん、と。
俺の後ろ。
瓦礫に押し付けられた掌に、あ、と思った。

知ってる。

これ、と連ねて覆った影を見上げる。
昨日とは違う、あげた視線の先には、当然伸ばされる背も、夜空もなく、

「とらお、」

この緊迫した状況下には有り得ない程の、声で俺を呼んで。
微笑んで、


ああ、


思い至って、顎をあげる。
静かに目を閉ざす。


「っ、」


熱いと感じたのは、昨日と同じだったけど。
優しく触れ合うだけのキスに、不思議な程、心が鎮まる。世界が、鎮まる。
聞こえてきたはずのカウントダウンも、なにもかもが聞こえなくなって。
この逃げ場すらない崩れゆく世界の中、ただひとつだけになる。
何度も何度も角度を変えて、体温だけを伝えてくる口付けと、俺を囲んだ腕に、閉じ込められながら。
欲しい、とここに至って初めて痛感した。切実に感じた。




「トラ男、」


最後に名残惜しむかのよう、ちゅと啄んで、熱は離れ、
そうして、



「続きは、」



言うんだ。
昨日と同じように。



「後、でな」



でも、昨日とは違う言葉。
明日ではなく、後で、という声に、


「うん」


ひとつ、頷いて。



「必ず、戻って来い」
「おう」
「待ってるから」


はっきりと明確に受け入れた俺に、そいつはやはり余裕と優しさを携えた笑みを浮かべて、
再び、瓦礫に手を押し付け、


「約束な」


言葉通り、誓いのキスをくれた。


2017.04.06 Ree.MORITA
よくあるお話しで(-_-;)
これ、ちゃんと壁ドンになってますかね

ネタがかぶってないことを祈ってます……
お付き合いありがとうございました。

同盟待機中、るろちゃんキス好きなんです