ree_1116
2017-02-05 03:06:07
4266文字
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名前(ルロー)

ルローワンライお題【名前】ルローですが、二人は絡みません…スイマセン。ナミさんとルフィさん。何処にでもあるネタです…ほんっとスイマセン…


不意に見掛けたのは、珍しい姿。
甲板。手摺。
いつもなら、そんなところにじっとしているはずもないやつが、両腕に顔埋めて、じっとしてる。
ほんっと珍しいこともあるものね、と見上げたのは、空。
もしかして、天変地異まではいかなくても、何か起こる前触れかしら、なんて思って思わず見上げた。
そこにあったのは、満天の星空。
風も穏やか。波も静か。
新世界にあって、こんな夜もないって程の光景が広がっている。
なのに、一人どんよりとしてるというか。折角目の前にこんな綺麗な夜空があるってのに、もったいないわねと思って、隣りに並んだ。

「綺麗ね」
「あ?ああ、そーだなぁ

って、何よ。その気の抜けた返事。
ちら、と私が見た先に視線を向けて、また両腕の中に顔を埋めてしまった。
背の麦わら帽子が緩い風で微かに揺れてる。
ほんっと、どうしたのかしら。
らしくないってか、らしくない。
こんなルフィ初めてかも、と思うくらい凹んでるのかしらね、これ?
全くもう仕方のない船長ね。

「何かあったの?」

だから、問い掛けてみた。
だってやっぱり気になるじゃない。ルフィよ、ルフィ。あのルフィが、こんな誰も居ない場所を選んでって。一人になりたかったとかいうタイプでもない。つい数時間前までは、いつもの如く、ウソップたちとうるさいくらい騒いでたってのに。ご飯を食べて、お風呂に入る入らない騒動を経て、熱い熱い出てきたと思ったら、かくれんぼが始まってた。そうして、サンジくんに夜食言われて、ダイニングに入ってん?その後、何してたのかしらこいつ?見掛けてないってか二時間くらい何処にも居なかったような~

名前、」
「ん?」
「だからよ、名前」

名前?

「名前がどうかしたの?」
「トラ男、名前呼ばねぇ」
「トラ男?」
「俺の名前知ってんのかな、あいつ」

って、なによ、それ。
そんなことで、こんなところで一人らしくもなく、悩んでたっての?
馬鹿ね。

「知ってるに決まってるでしょ?」
「だってよ、名前で呼んでくんねぇだろ」
「私だって、名前で呼ばれたことなんてないわよ」
「ナミは、まだいいじゃん。ほぼ名前だろ」
「そうだけど」
「俺なんて、名前じゃねぇぞ」

って、あんたね。

「麦わら屋って可愛いじゃない」

と、本当にそう思ってるから言ったってのに、むと口を尖らせる。
ああ、お気に召さなかったのね。

「なんで、ナミはナミ屋で、俺は麦わら屋なんだ?」
「ルフィ屋がいいの?」
「そーいうわけじゃねぇけどよ」
「あんたは、麦わらのルフィだから、麦わら屋。サンジくんは、黒足のサンジだから、黒足屋。わかりやすいじゃない」
「ナミだって、なんとか猫って呼ばれてんじゃん」
「ん?ああ泥棒猫?泥棒猫屋は呼びにくいんじゃない?」
「ゾロだってよ」
「海賊狩りも呼びにくいんじゃない?そんなたいした理由なんてないわよ」

きっと。
って、何そんなにこだわってんのかしらね、こいつ。
だって、

「まだいいじゃない」
「あ?」
「ウソップ、ブルック、フランキーなんて、鼻屋に骨屋に、ロボ屋よ。ゴム屋って呼ばれるより、麦わら屋のがいいじゃない」
「ん~
「何よ、名前で呼んで欲しいの、あんた?」
「うん」

うんって、素直に頷く姿を見て、ほんっとらしくないわねと思う。
今の今までだって、どう呼ばれようが気にもしてなかったくせに。
どうしてそんなに、と考えて、辿り着いたひとつのこと。

「同盟相手だから?」

他の海賊たちにも海軍のやつらにも誰からも、麦わら麦わら呼ばれてたのに、気にしてなかった。
その人たちと、トラ男くんとでは関係性が違う。
だから気にしてんのかしらねぇ、と軽く聞いてみたってのに。
まさかの答えが戻ってきて、驚いた。てか、心臓飛び出すかと思った。

「同盟ってかだってよ、恋人なら名前で呼んでくれてもいいだろ?」
「は?」
「なのによー、トラ男のやつ呼んでくんねぇんだ」

ちょ、ちょっと、待って。
今、

「こいびと?」

ルフィから、一生掛かっても出て来るなんてないような言葉が出たような、

「おう」
「おうって、え?恋人って、誰と誰が?」
「俺とトラ男」
……は?」

はい?

「変な顔してんぞ、お前?」

どした?なんて、不思議な顔しないでくれる?
だって、恋人?え?ルフィとトラ男が?え?何よ、それ。ってか、

「い、いつから?」
「いつって、ドレスローザの後から」

マジで?
なんて、思っても問い掛けることはない。
ルフィが嘘吐くなんてない。

「だからよ、名前呼んでくんねぇかなぁ思ってよ。トラ男に、名前呼べって言ったんだけどよ、あいつ、全然でよ」

えーなにそれー。可愛いじゃない。恋人だから、名前で呼んで欲しくなっちゃったの?もうルフィったらぁ~

なんて、額を小突いてやりたい気持ちもあったけど。
ちょっと、待って。私、混乱してるってか。だって、ルフィよ?だって、トラ男くんよ?何処にそんな要素ってか、

「別に、いつも呼べって言ってるわけじゃねぇってのによ」

ドレスローザで何があったっての?
確かに、仲良くなったわねぇとは思ったわよ。合流した後、トラ男くんなんか雰囲気違ったし。仲間たちと会えたからかしらなんて思ってたけど。まぁ、それもあったとは思う。けど、けど、え?

「ヤってる時だけでいいって言ったのによ」

ってーーーー!だから、ちょっと待って。
やってるって、

「なにを?」
「なにって、お前、セ、」
「いっ言わなくていいっ言わなくていいわっ」
「は?」

ほんっと、マジで?嘘?
そんなことまでやる仲なの?恋人なんだから、そーなっても当然なんだろうけど。
でも、だってルフィとトラ男くんよ?

「えっと、ほんとに?」
「好きなやつ、抱きたいと思うのは当たり前だろ?」
「あ、そ、そうね。うん、そうよね」

変なナミだな、なんて言ってるけど。
うそぉ驚愕の事実ってこーいうことよね。

「はぁ
「何疲れてんだ、お前?」
「何ってあんた

驚いてんのよ、ずっと。

「さっきも、呼べって言ったのによ。結局、呼んでくんなくてよ」

だから、ここで凹んでたっての?
ん?

「さっき?」
「ああ」

さっき、ってさっき?
先刻?

「ど、こで?」
「あ?魚の部屋」
「ああ、魚の部屋」

なるほどね。あそこはあんま使ってないってか。こんな気持ちのいい夜は、皆近寄らないもんねぇ。あそこなら、邪魔されないわよね……って、マジ?

「お前、さっきから変だぞ?」

変にもなるわ!と殴ってやりたかったけど、そんな気も起きず。
へたぁと座り込んだ私に、どしたんだ?なんて視線合わせてこなくていいから。ほんっと。
おーいナミーと、私の目の前で手をひらひらさせてる、向こう。
相変わらず、胸元を合わせないから素肌が見えてる。なんか気になって、ちらちら見てる私もどうかと思うけど。だって、よくよく見ればなんか、こう風で微かに見える肩口に引っかき傷みたいなものが見え隠れしてるんだもん。あ~、

「顔、赤いぞ?」

また、病気にでもなったのか?ってあんた
ドキドキしちゃったのよっ!だって、この船にあって、そんなことてか、色恋沙汰なんて何処吹く風の筆頭だと思ってたやつが、直ぐそこであんなことやそんなことしてたっていうのよ。

なんでもないわよ」
「???」

盛大に疑問符浮かべなくてもいいから。
ちょっと、放っておいてくれないかしら。いや、何かあった?って聞いたのは私なんだけど。でも、こんなこと聞かされるなんて思ってもなかったのよ。

よいしょ、と座り込んだ先から立ち上がり、海からやって来る風を熱くなってしまった頬に当てる。取り敢えず、落ち着こうとしたってのに、

「おーい、トラ男ー酒呑まねぇか?」

聞こえてきたのは、ゾロの声。
つい見た先には、ルフィのお相手。
丁度、お風呂から上がってきたらしい。って、お風呂?

……、トラ男、」

お風呂ってことは、そのなに、体綺麗にしてきたってわけ、とまたそんなこと考え出してしまった私の横からの、いつもと違う声。なんで名前呼んでくんねぇんだろうなぁ、と続いてる、声。あげた視線の先には、恋人の姿。
ゾロの誘いに乗ったらしきトラ男くんは、とんとんと階段を降りてて。
その動きに合わせて、ルフィも目線を下げてた。
そうやって、見てたの?そんな目で、見てたの?
知らなかった。全然、気付かなかった。


ほんっとに、好きなのね。

と、ここでやっとすとんと思えた。

だから、

「ねぇ、ルフィ」
「ん?」

仕方ないから、ひとつ教えてあげる。
だって、やっぱこんなルフィ見てたくないし。
こんなところで一人で凹んでるのなんて、嫌だし。

「あんたは、名前で呼んでるの?」

ふ、と笑みを浮かべて問えば、はっ!と顔をあげる。

「そんなことだと思った。トラ男くんに名前で呼んで欲しいんなら、先ずはあんたが名前で呼ばなきゃね?」
「そっかそうだな」

うんうん、頷く姿は可愛い。
恋する男の子って感じで、可愛い。
でも、不意に表情が変わった。
すぅ、と息を吸って、

ロー、」

紡いだのは、名前。
思わず、私がどきっとしてしまった。

「こんな感じでいいかな?」

いいかなって、ほんっと

「ええ」

親指を立てて、いい感じよ、と伝えれば、ししし、と何処か照れた風に笑う。
その顔に、いつものルフィに戻ったと思ったら、

「んじゃ、俺いってくるっ!!!」

ぐいんと腕を廻した瞬間、一気に伸ばして、飛んでいってしまった。
トラ男ーーー!といつもの呼び名を使って。見えなくなった先で、何か言い合ってるような声が聞こえてきて、

「ほんっと、」



未来の海賊王が、恋人に名前呼んでもらえないってだけで、あんなになっちゃうなんて、



「可愛いやつね」



ふふふ、と笑いながらも見上げた、夜空。
無数の星々の中、流れたひとつに、



「名前、呼んでもらえるといいわね」



なんて、必要のないことを願った。





2017.02.05 Ree.MORITA

ありきたりすぎるネタでスイマセンでした。
被ってないことを祈ります

お付き合いありがとうございました。