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ree_1116
2017-01-21 18:01:18
3150文字
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迷子(ルロー)
ルローワンライお題【迷子】いつものルローです…(>_<)ネタ被ってないことを祈ります…
「好きだ」
突然の出来事にどうも頭がついていってないらしい。
と思ったのは、ドン!と大きな音をたてて壁を押し付けた両腕に閉じ込められてから、一体どれ程後だったのだろうか。
目の前には、無表情にも見える黒目。
動くことなく、微動だにせず、ただただ俺を写している、漆黒。
言い切られた言葉は耳をついて、脳内に響いた。要するにでかい声だった。
それでも、その時の俺は何一つ理解出来ず、疑問符が行き交うだけで。
なんだこの状況は?と頭が動き出したのは、今しがた。
目前の黒が、なんか言えよと低い声で急かしたからだ。
「あ?」
なんかって、なんだよ?
それを要約した一言で返したが、俺を未だに腕というもので閉じ込めた奴には通じなかったようで。ああ?と同じ音で返された。お前こそなんだよ、という含みでだ。呆れは微塵もないが、何処かしら苛立ったような気配は感じる。いい加減にしろとでも言いたげだというのに、そいつは飽きることなく、ただただ真っ直ぐ、黒目に俺を映してた。
そもそも、どうしてこうなった?
何かに追い詰められているような、状況に困惑しつつも、表には出さない。
取り敢えず、とひとつ息を吐く。ゆっくりと。
そうして、ここに至った経緯を思い出して居た。
なんてことない、日だった。
そう、なんでもない日常の風景しかなかった。
相変わらずの、船。
皆が皆、好き勝手に動いてる。
何か起こったらちゃんとするから大丈夫よ、と言ったのは航海士だった。
だからいつもこんななのよ、と笑ったのは考古学者だ。
最初こそは、それでいいのかと思って居たが、それでいいんだとわかったのはすぐのことで。
だから、今日も同じ日だった。
騒がしい、甲板。うるさい、声。そよぐ風に、揺れる、波。何処かへと行く、雲。
その狭間から、青が見えて。強い風が吹いた途端、空に散らばっていた雲は居なくなっていた。
太陽が、照らす。この海原を。この、世界を。
一斉に陽射しが射し込んだ刹那、うおー!と両手を広げ叫んだのは船長で、気持ちいいなと同意したのは、狙撃手で。太陽って偉大だよなぁと見上げたのは、船医だった。
ただ、それだけのことだ。
なんとなくなんでもなく、そうだなと思い。眩しくなって、ふらりと向かったのは、陽が見えない場、日陰、だ。
眩し過ぎる、と思って影に入り込み、暑いと壁に背を預けた。
光のない、影。ひんやりとした、そこ。
何故か、落ち着くと目を閉ざした途端、ドン!と近場からの音。
え?と、目を開けば黒目がただ俺を映してて、
それだけ、だ。
なんてことなく過ごしていただけの、時間。
なのに、なんだこの状況は?とまた思う。
結局、経緯なんてもんを反芻してみたが意味などなかった。
切欠など、ない。
と、なるとただ単にこいつの気分次第ってところか?
さっきまで、鼻屋とトニー屋と一緒に大笑いしながら釣りしてたくせに。
一体何をどうしたってんだ?俺、何かしたか?してねぇよな?ただ、あの場は眩し過ぎるとここに来て、涼んでただけだ。なのに、なんだこの状況は?とまた思う。
怒っているとも違う。呆れているわけでもない。なのにどこか苛立っているかのように俺を閉じ込め、ただ見てる。
見て、
不意に、それまでだってちゃんとわかっていたことを強く実感してしまった。
こんな距離で、真っ直ぐに見詰められるなんてこと、今まであっただろうか?いや、こいつ相手じゃなくてもこれほどまでに至近距離など、滅多にない。それこそキスでも交わす間際に、
「っ、」
勝手に浮かべたことに、一気に顔が熱って、視線を逸らした。
何考えて、己を罵ったのと同時に熱くなったままの頬が、覆われた。
「な、」
「逃げんな」
言い退け、壁についていた手を使い、逸らしたものを戻される。
睨み付けるように、じと下から見上げ、また黒に俺が映された。
「逃げてなんかねぇだろ」
「逃げてねぇ?」
「ああ」
なんで、俺が逃げねぇと駄目なんだ。馬鹿にしてんのか、と負けじと上から見下ろせば、ふーんとどうでも良さげに言い捨てたってのに、続けた。
「
…
じゃあ、何、迷ってんだ?」
「迷う?」
「迷ってんだろ?」
二度、問われても訳がわからないものに対して、返答など浮かんでくるはずもなく。
ただ、黙る。黙って、考えてみる。
迷ってるってなんだ?俺が、何を迷って、
「迷うくらいなら、奪いに来いよ」
「
…
麦わら屋?」
「奪いに来ねぇんなら、全部委ねろっ」
俺に!!
言い切られた言葉は、耳をついて、脳内に響く。
ああ、なんだ
…
そういえばついさっきもそんなこと思ったな、と遡った脳が、確かに告げられた言葉を一瞬で蘇らせた。
「
…
好きって、」
「あ?」
「言ったか?」
「なんだよ、」
今更、と肩を上げ、はぁと息を吐いて、上げたものを下げる。
全くよ、といつもにはなく、緩く笑った。
好き?
麦わら屋が、俺を?
未だ、耳に残っている残響に知らずに体から力が抜けた。
ズルズル壁伝いに落ちていく俺をどう思ったのか、トラ男ぉ?とここに来て初めて愛称で呼んだやつは、膝を折り、沈み込んだ俺に視線を合わせるよう、床に座り込む。そうして、何を思ったのか、膝裏を取られた。
「って、おい」
「黙れって」
片足の自由を奪ったまま、悪く笑んだ男は、身を寄せてくる。
え、と思い返したのは、距離、だ。こんな至近距離なんてキスを交わす間際にしか、と勝手に思った、こと。嘘だろと否定してはみたが、じわじわ近寄ってくるやつに、反射的に目をキュッと閉ざしてた。ふと、どこか小さく笑った気配とともに、つ、と軽く緩やかに触れた、熱。何度か角度を変えつつも、深まることなく。ただ触れるだけの、柔らかさに強張っていたものが消えていた。その頃合いを見計らってか、触れて居た熱が、僅かに遠去かる。
「麦わら屋、」
「ん、」
コツン、と額を合わせて、あのよ、と続けた言葉は、
「トラ男、俺のことすっげぇ見てんのによ。何も言って来ねぇし。ぐぐって、顔歪ませて顰めっ面ってか
…
困ったみてぇにしてなぁんかフラフラしてるからよ
…
迷子みてぇだって思ってた」
迷子って、なんだよ、それ。
「迷うくらいなら言えよ。言うのが嫌なら、俺に全部寄越せ」
な、と優しさを伴った声に導かれるように、見た先には黒。
ただひたすら真っ直ぐに俺を映す、黒い瞳。
そ、と握られた手に、この手に連れられるなら、委ねてもいいかもしれないと、思ってる俺も、俺だ。
今の今まで、知らん振りしてたってのに。
だって、太陽は誰のものにもならないだろ?
分け隔てなく、等しく、平等に。誰の元にもその光を落とす。
なぁ、麦わら屋。
俺、お前は太陽のような男だと思ったんだ。
時には強く、優しく。時には散々なまでに、柔らかく。光を放ち、皆を巻き込む、受け入れる。
誰のものにもならない。
眩しくて、
ただ眩しくて、
「こら」
「え?」
「また、迷子になってる」
馬鹿だなぁトラ男は。
くしゃと笑ったやつは、また僅かにあった距離を失くした。
ちゅっちゅ、と聞こえる音の狭間からに、好きだよ、好き、という声まで重ねて、口唇を合わせてくるから。俺にだけ聞こえるよう、俺だけへの言葉だと想いだと言い聞かせるよう。何度も、何度も触れては告げてを繰り返すから、
「麦わら屋、」
「ん、」
「もっと、」
と、手を伸ばした。
俺から、手を伸ばした。
初めてのこと、だった。
『恋 迷』
2017.01.21 Ree.MORITA
いつものルローちゃん
…
(>_<)
迷子になってますか
…
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