ree_1116
2017-01-20 23:50:49
5399文字
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勘違い(ルロー)

ルローワンライ【勘違い】相変わらずの内容ですが、なんか二人とも変かも…スイマセン……

「俺たちの〜〜……勝利だ!!」

掛け声と共になされた、乾杯。
皆が皆笑いながら祝杯をあげる中、杯を合わせつつ、一人を探してた。
どこ行ったぁ?と次から次、差し出せれるもんにコツコツ重ねながらも、見つけた、影。
あんな所にと駆け寄ろうとして、何故か足が止まった。
ん?んん?と首を傾げわけわかんねと、踏み出そうとしたのにやっぱ足は動いてくれねぇ。
知らずに、手が胸を押さえてた。

なぁんか

なんだろ、

思っても答えは出ない。
ただ、心がチリチリと鳴り続けるだけだった。



『勘違い』



遥か、遠く。
既に見えなくなったひとつの国を思い浮かべ、本当に終わったんだなと実感した。
13年間、果たしたいと願い続けた、本懐。
自らの手で直接ではなかったが、それはそれでよかったと思えている。
何よりもこうして、生き残ることが出来た。捨てる覚悟で挑んだってのに。いや、実際捨てようとしていたってのに。動くようになった右手を翳せば、とくとくと流れる鼓動。
これもそれも、と何かを連ねようとしたとき、少し離れた場からゾロと呼ぶ声が聞こえ、ぐっすり寝入っていたはずの男は、おお、と背を預けていたものから起き上がり、ふああと欠伸しながらも、なんだロビンと声の方角へと歩いていった。

その背を見送り、また元へと視線を戻そうと思ったところに、ととと、とやってきたのは、久し振りのような、やつ。麦わら屋だ。この船に乗ってからというもの、姿は見掛けていたが話したほぼ記憶はない。
新世界の海に翻弄されていたというのもあったが、気付けば居なかった。近くに居ると思ったら、もう居なくなっている。大抵、バルトロメオを筆頭にクルーたちに囲まれていたというか、まぁぼそぼそと聞こえてはいたがどうやら俺と麦わら屋を近付けたくないらしく、気付けば遠ざかっていた。
だから、こうして横に並ぶのも、久し振りと思っても仕方がないのかもしれない。

そよそよ、と。
風だけが通り過ぎる、中。
何か用でもあって、ここに来たのかと思ったやつからは、何もない。
まっすぐに海を眺めているやつは、時折俺に視線をあげるが、何もない。
まぁいいか、と俺も海の先を、見た。
流れる、水面。重なる、波間。この青の向こうにある離れる国。島。
揺れる麦わら帽子が目に入って、本当に良かったのか、とふと思った。
あれで、本当に良かったのだろうか。
あそこまでして奪いに行ったってのに。
こいつは、

「最近、」
「え?」

これでよかったのか、とこの数日繰り返していた疑問を連ねたのと同時に、隣りに居るやつからの、声。

「ゾロと、仲良しだな」
「は?」

ゾロ屋と、仲良し?

「俺?」
「うん」

そうだ、とやはりこちらを見ないやつは、頷いたけど。
別にそんなことはないというか。そんなふうに意識したこともない。
ただ、

「他人の船だと身の置き場がなくてな」
「ん?」

そう、それだけだ。
どう考えても、俺は邪魔者でしかないのだろう。要らざる客というか。麦わら屋たちと共に行動しているから仕方なく俺も乗船させたというだけであって。だから、なのだろう。何処に居ても嫌な顔をされるってか、気持ちはわかるから構わないし、そうなるだろうとも思っていたから、別にとは思っている。それでも目的地に辿り着くまでは、ここに居なければならない。人の船だからこそ、やることもない。さてどうするか、と思ったところにゾロ屋が寝ている様が見えただけ。そこには気を使ってか誰も近寄ることなくだったから、丁度いいと隣りに居た。ゾロ屋は特段何も言わないし、身の置き場としてはもってこいだった。それだけであって、

「それって、お、うわ、」

どういう意味だとでも続くはずの言葉は切れた。
突然、船体が大きく揺らめいたから、だ。
は、と気付く。

「近くに気配がある。どでかい、」
「え?」
「あそこだ」

気付いたものを指し、担いでいた刀を抜いたところで、ザバっと海から飛び出てきたのは、海王類とまではいかないが、それなりにでかい魚だった。

「うっほー!あれ、食えるのか」
「食えねぇな、あれは」
「ちぇ」

なんだ残念と口を尖らせたやつも腕を廻して、既に戦闘体勢に入っていたが、

「俺に任せろ!」

と、何処からともなく影が舞った。
その直後、刹那のうちに目の前のでかい魚は真っ二つになってて、

「なんだよーゾロっ」
「体が鈍ってんだよ。譲れっての」
「譲れってもう斬ってんじゃん」
「ははっ」

キンと音を鳴らし刀を鞘に収めながら、ここに戻ってくるのかと思ったやつは何もなかったかのように船内へと入っていく。その背に、

ゾロ屋は格好良いな」
「へ?」
「いや、剣士って感じがすると思って」

なんでもなく、出た声だった。
それはこいつの仲間を褒め称えるもので。
だから、だろ、と喜ぶかと思ったってのに、

「トラ男はゾロのこと、好きなのか?」

すごい顔というか、でかい目をして尋ねてきたこと、ひとつ。
なんだそりゃ、とは思ったが、

「嫌いじゃねぇな」

と、だけ答えた。
それで終わると思った。
なのに、

「格好良いから?」

何故か、続く。

「あ~まぁそうだな」

というか、同盟相手のナンバー2だ。
それなりの距離を置きながらもある程度のものは必要だろうとは思っている。今の距離感はどちらかというと好ましいもんでしかない。だからって、

どうした?」

なんだこのやり取りはと、背に麦わら帽子を垂らしたままのやつを見れば、何処となくぷるぷると震えているような?
だから、問い掛けたけど、

「   ろ、」
「ん?」
俺だって、格好良いだろっ!」
「は?」

戻ってきたのは、そんな言葉で。
一瞬、頭の中が真っ白になった。
俺だって、って

「はははっ」
「って、なんだよっ笑うなよっ俺は真面目に」
「ああ、わかったわかった。ごめん」

ごめん、と同じ言葉を二度ずつ繰り返してから、改めて同盟の相手を見た。
両の握り拳を携えて、じっとじじっと俺を見てる。答えを待ってんのか、これ。
全く、ほんとなんだってんだよ。

うん、」
「ん?」

格好良かった。
あいつをぶっ飛ばした時だって。
ずっと、ミンゴは自分がと宣言してたってのに、俺がと這い蹲った時だって、ただただ見守っててくれた様は格好良かった。覇王の色を撒き散らして、踏み潰されようとしてた俺を助けてくれたときだって。ずっと、ずっと、

「格好良いよ」
「う、」

ぽん、と麦わらのない頭に手を置いて覗き込むように伝えれば、息を詰めたやつは何を思ったのか、

「なら、俺のことも好きになれよっ!!」

って、だからなんだよ、それ。
そんなん、ずっと、

「好きだよ」

なんでもなく、簡単に。
そこらへんに転がっているものみてぇに軽く、告げた。
子供をあやす様な含みを持たせて。
だって、そうだろ?

「違うっ違うっそうじゃねぇっ!そういうんじゃなくてっ!」

これで今度こそ、終わるだろうと思った会話はまだ続いた。
なんだってんだ、本当に。
ちゃんとお前が欲しがってるもんはやっただろうが。何が違うってんだ。何が不満だってんだ。

「お前のことは信頼も信用もしてる。背を預けたって構わねぇとも思ってる」
「わかってる」
じゃあこれ以上、何を求めるってんだてめぇは」
「わかんねぇのかよ」
「わかんねぇから聞いてんだろ」
やっぱゾロのこと好きなんじゃねぇのか?」
「は?どうしてゾロ屋が出てくる?」
「俺とは全然一緒に居ねぇってのに、ゾロとはいっつも一緒じゃねぇかっ!」
「それは偶々であって特別な意味があるわけじゃない」
「ゾロのこと好きなんじゃねぇのかよ?」
「だから、ゾロ屋のことは嫌いじゃねぇって言ってんだろ。お前だって、そうだ」
「同じじゃ嫌だって言ってんだっ」

一体、何が言いたいのかわからない。
そもそも、なんでこんなことになってんだ。
好きとか、格好良いとか、一緒じゃ嫌だってなんだ。
俺、ちゃんとしてるだろ。
同盟相手として、一定の距離を保ちながら。
それ以上、内には入らない。
ちゃんと踏みとどまってんだろうが、このっ

「俺に抱かれてぇと思うくらい好きになれって言ってんだっ!!」

この野郎と胸倉を掴もうと伸ばした手は、空に留まった。


「ちょっと待て」

待て、今なんて言った?
抱かれ?
抱かれたいくらいってなんだ?
それ、

「はぁ

至ったものに盛大な溜息が落ちた。
気に食わなかったらしき麦わら屋は、なんだよと睨み付けてくるが。
だから、なんだよはこっちの台詞だ。

「お前、溜まってんのか?」
「あ?」
「やりてぇってことだろ?」
「はぁ?」
「まぁそうだな。こんなところじゃおちおちてめぇで抜くこともできねぇだろうし」
「待てっての」
「なんだよ?」
「なんでそんな話しになってんだ?」
「お前が言ったんだろ?」

やっぱ、良くなかったんじゃねぇか。
奪いに行ったならそのまま連れてくりゃ良かったってのに。
なんで、置いてきたってんだ。

「そんな切羽詰ってんなら、連れてきちまえば良かったってのに」
「ああ?」
女」
「おんな?」
「お前、攫いに行ったんだろ?」
「なんのことだ?」
「だから、」

行っただろ。
まぁ、俺も一団から離れて別行動をとったから、よくは知らねぇが。
聞こえてきた声があった。
『ルーシーが』『レベッカ様を、』『誘拐した』
そのみっつで十分だった。
ああ、なんだそーいうことか、と思った。
奪いに行ったんだ。あの女を。戦いの根源にいる女を。
ちゃんと理解した。わかったからこそ、俺は、


俺は、


「膝枕してもらってただろ?あの女だろ、レベッカって」
「レベッカ?」
「奪いに行ったんなら、何を言われようと船に乗せちまえば良かったってのに。なんで、置いてきたんだ?」

だからまだ泣くな、と電伝虫の向こうに居る女に言った声が未だに耳に残ってる。俺の仲間と一緒に居ろと。その女の身を按じて、その女の為に、その女が、

「好きなんだろ?」

ゆうわりと笑みを浮かべながら問うたことに、麦わら屋は、こくんと頷いた。
ほら、見ろ。
だからちゃんとしてただろ、俺。だからちゃんと身を弁えて、同盟としての立場を保ってただろ、俺。なのに抱かれてぇくらいってなんだよ。そんなん今更だ。別にお前になら抱かれても構わないと思ってる。思ってた。いつから、こんなになってたなんてわからないが、俺はずっと、でも、

「今からでも遅くねぇんじゃないか?」
「あ?」
「迎えに行けよ」
「誰を?」

誰をって、お前、

「レベッカって女を」
「だから、なんでレベッカ?」
「好きなんだろ?」

今からドフラミンゴの元に赴くってのに、たたたと戻ってその女の前に屈みこんで、良かったなと言った声が、背が、忘れられない。だから、笑みという形を象った。良かったじゃねぇかと、

「ああ、好きだ」

うん、わかってる。
わかって、

「お前が、」

え?

「俺、トラ男が好きなんだ」
「何言い出してんだ。お前が好きなのは、その女だろ」
「何言い出してんだは俺の台詞だ!勝手に決めんなっ俺が好きなのはお前だって言ってんだろっ!でも、トラ男はゾロのことが好きなんだろ。だから俺は」
「待て。誰もゾロ屋のことが好きだとは言ってねぇだろっ」
「言っただろっ」
「それはそういう意味じゃねぇ。俺が好きなのは、お前だっ!」
「なんだよっそれ!」
「それはこっちの台詞だっ!女のこと好きで攫いに行ったってのに、何が俺を好きだっバカにしてんのかっ!!」
「レベッカは、父ちゃんと一緒に暮らしてぇって言ってたから連れ出しただけだろっ!」
「一緒に暮らしたい?」
「そうだ。あいつ、そう言ってたってのによ。兵隊はどっか行こうとしてるしよ。だから俺はレベッカを連れ出した。あのまま、出航すんのは嫌だった」
え、」

待て、

「俺が、好きなのはトラ男なんだ。なのに、お前ゾロとすげぇ仲良くて。肩組んでたり、一緒に昼寝してたり。ずっと一緒に居るからよ」

どうしていいのかわかんなくなって。足も動いてくんねぇしよ。そしたらロビンがどうしたって聞いてくれて。トラ男と話しして来いって、

つらつら続く声はちゃんと聞こえてた。
けど、


「俺?」
「うん、好きだ」


真っ直ぐに言い切って、そっとそぉっと腕を伸ばしてきた。
そうして、頬に触れて。
更に慎重に、首を這い、背に回して、きゅっと抱きしめて、


「ああやっと


トラ男だぁ、と耳元からの声に、
包み込まれた、体温に、
とくとくと少し早い鼓動に、

やっと、辿り着けた。
俺たち、お互いに


「馬鹿
「お互い様だろ」
そうだな」


力を抜き身を委ねた俺を更にきつく優しく抱き締めてから、何処か照れた風にキスしたいと言ったやつに、うん、と頷き、額を合わせてから、



目を、閉じた。



2017.01.20 Ree.MORITA