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ree_1116
2016-12-16 13:58:25
2971文字
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体温(ルロー)
ルローワンライお題【体温】
なんとなく投稿したかったやつなんで、微妙です…
変な生物が居た。
「
…
何やってんだ?」
なんでもない午後。
波も穏やかで、新世界の海にあって珍しいくらいの日だってのに。
なんでもなく、入り込んだ先。
ペタっと張り付いたやつ。
アクアリウム。水槽に囲まれた、青い部屋。その隔たりに張り付いた、この船の長。
「ん?あ!トラ男!!」
ぺったり張り付いてたやつは、俺が掛けた声に気付いて振り向き様、ずるずるとソファに座り込んだ。何故か、正座で。だから、
「なんだ?」
「ん~
…
」
様子がおかしいというか、行動が読めないというか。
そんなんはいつもだけど、今日のはまた何処か違うような気がして、正座したまま腕を組んでうんうん唸ってるやつの前に膝を付いてみれば、うおお、という変な声。いや、だから
「なんだ?」
「ん~ん~」
また同じ問答かと思ったが、今度は正座を崩す。またずるずる水槽に張り付くから、これは放っておいたほうがいいかと立ち上がろうと思ったが、
「あちぃ」
という、答えのようなものがやってきた。
「暑い?」
「ん~
…
なんかよぉ体が熱くて。だから、」
涼を取ってるとでも言いたいのだろうか。
なら、外で風に当たってればいいものの。どうして、張り付いてんだこいつは?
外は穏やかだが、暑くはない。
風だって心地よい。
なのに、
「少し治まったけどまた熱くなったぁ」
そうして、ぴったり。吸盤でも付いてんじゃねぇのかって程、張り付きやがった。
って、お前
「熱でもあるんじゃねぇのか?」
「あ?」
「風邪でもひいたんじゃねぇのかって」
「俺、風邪なんてひいたことねぇからわかんねぇ」
「そりゃたいしたもんだ。
…
麦わら屋」
呼び掛ければ、顔だけがこちらを向く。視線が合ったことを確認してから、ちょいちょいと手招きする。ここに座れと即せば、何故かそろりそろりと座り込んだ。
「体が熱い以外、何かおかしいことはねぇのか?喉が痛いとか」
「あ!バクバクする!」
「ばくばく?」
「心臓がよ、ばくばくって」
「
…
そうか」
何はともあれ、熱を計ってみるかと座り込んだやつの額に掛かった髪を払いのけ、そこに自分の額を合わせてみた。
「ん~
…
平熱の範疇だな」
こつん、と。
あわせたまま。
伝わってきた温度は俺とさほど変わりない。
けど、
「
…
どうした?」
目の前の黒目が
…
なんだ、渦を巻いてるというか。
おい?と声を掛け、なんでもなく肩に手を置いてみれば、びくりと跳ねたと思えばかちんこちんに固まってる。い、い、と意味不明な言葉を発して。
…
って、
「麦わら屋?」
何かの発作かと思い、少し距離を置いて顔を傾け覗き込んでみれば、いつもにはない顔があって少し驚いた。
ぐるぐるしてた目も元に戻って、ただただ黒さを湛えてる。そこに映りこんでる自分の顔が見える程に、黒い。すげぇ黒いなと思ったその瞬間、
ツ、と。
口唇に、熱。
「え?」
「あ?」
互いの声は重なった。
今、と無意識に指先がまだ熱さを残したそこに触れた途端、
「うあああああああああああ!!!!!!」
麦わら屋がまるで逃げ出すように部屋を出て行ってしまった。
「チョッパー!!チョッパーーー!!!心臓が飛び出るーーーー!!!!!」
続けざまに聞こえた声はそんなもんで。
ポツン、と一人。
残されたまま。
ああ、と膝が崩れた。
ペタリとその場に座り込み、カクンと空が見えない天井を見上げてた。
「
…
なんだよ、」
そういうことで、いいのか?
本当に、いいのか?
思い付いた先に、自問自答してみてもどうしてもその答えにしか辿り着いてくれない。それでも首を傾げてしまうのは、麦わら屋だからだ。でも、きっと正解なのだろうと思う。
「全く、」
困ったお子ちゃまだな。
「俺のが、心臓飛び出しそうだっての」
高鳴ったままの音が、自分の中の答えまでも知らしめてて。
「あ~くそ」
どうしてくれようか、と思いながらも気付いちまったもんはどうしようもない。
ちゃんとあいつにも思い知らせねぇとな、と立ち上がり開きっぱなしになっている扉口に立った。そこから見えたのは、トニー屋に縋り付いてる一船の船長の姿。
「麦わら屋」
本当にお前、気付いてないのか?
キスしたくせに?
近付いただけで、あんな顔したくせに?
体が変に火照ってたのも、バクバクしてたのも俺の所為だろう?
「こっちこい」
「トラ男」
さっきと同じよう、視線が合ったのを確認してチョイチョイと呼べば、むむむと口を真一文字にしやがった。そんな麦わら屋に船医も困った顔をしてる。どうしたもんかなと次の言葉を思案し始めたところに、増えた影。ニコ屋だ。
「ルフィ、トラ男くん呼んでるわよ」
「う、うん」
「でもロビン、ルフィ心臓がおかしいって」
「聞こえてたわ。
…
トラ男くんが治してくれる
…
のでしょう」
ね、とこちらを見ての声に、もしかして気付いてたのかと思いつつ、ひとつ頷いた。
ニコ屋が言ってることは、俺が治してもいいということだ。
「ほら」
行ってらっしゃいと背を押されたやつは、とととっとやって来る。そうして、何処か渋々といった表情を浮かべたまま、部屋に入り込んだ。
「任せたぞ、トラ男!」
「お願いね、トラ男くん」
扉を閉める際に掛けられた声に軽く手をあげることで答え、完全に密室にした先には、何をするでもなく何処かそわそわしている子供の姿。ああもう、仕方ねぇなと近寄る。一歩、また一歩と近付くたびに上がる視線。また熱くなってきたのかもしれない。きっと心臓もおかしな音をたててるだろうやつを、柔らかく抱き締めた。
「ぅ、お」
聞こえた声に知らずに笑みが浮かぶ。
心音が聞こえてくる。ドキドキドキドキ。なんだよお前、と浮かんだものが深まる。
さて、どう出るかと暫く何も言わず、動かず。抱きしめた先のやつからを待つことにしたが、そんな時間は必要ではなかった。
「すげ、」
「うん?」
「
…
うん」
ポスンと身を預けるよう、胸元に沈み込む。
だらりとしていた腕は、キュッと背にあって、
「ドキドキ、してる」
「
…
そうだな」
「トラ男も
…
ドキドキしてるのか?」
心臓の音すげぇなんて。
聞いてくるなっての。
「
…
ドキドキ苦しいのになぁんか
…
気持ちいいな」
これ、と腕が強まる。殊更、強く抱き締めたのと同時に、問い掛け。
「なぁ、トラ男」
「ん?」
「さっきの、」
「うん」
「も一回
…
いいか?」
「
…
いいよ」
やんわりと包み込んだ体が背を伸ばす。
マジマジと見詰める瞳は、さっきの時となんら変わりなく、
でも、違う。
なぁ、麦わら屋。違うんだろ?
さっきのは意識なく、何も考えずに合わせただけのものに過ぎなかった。
でも、今。これからするのは、無意識のものじゃない。
ちゃんと意味を持った、
ゆっくりと目を閉ざし、少しだけ首を傾け、軽く顎を引く。
息を呑んだような、喉を鳴らしたような、そんな音を間近で聞きながら、
「トラ男、」
触れる瞬間を、待つ。
特別な体温が触れ合うのを、ただただ待った。
2016.11.09 Ree.MORITA
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