ree_1116
2016-12-15 21:12:23
3711文字
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雪(ルロー)

ルローワンライお題【雪】
とんでも拙いものになってしまいましたが…少しでも楽しんで頂けると幸いです…
あ、いつもの私のパターンです…


「トラ男ー!」

相変わらずの呼び名と共に部屋に飛び込んできたやつの手には、黒。



やっと穏やかになった、海。
さっきまで揺れに揺れていたが、航海士がまっかせてと言い張るので任せて、船内に入り込んだ。
ご自由に、と言われたのは初めてこの部屋に入った時だ。ニコ屋が居て、ここにある本はご自由に、と。だから、航海中は大抵此処に居た。天気のいい日は一冊持ち出して甲板で読むこともあったが、ほぼ誰かしらに邪魔されていたので、大抵はこの部屋に入り浸っていた。ルフィはここに来ることはないわよという言葉通り、そいつが顔を見せることは今の今まで無かったというのに。

やっと穏やかになった、波。
ゆっくり読み込めるなと膝の上に置いていたページを捲ろうとした途端、来るはずのないやつの来訪。
一体なんだと視線をあげれば飛び込んできたのは、黒。
これ、お前のだ!と差し出されたのは、コート。
俺の、だ。間違いない。でも、何故?という疑問はある。

「着ろよ」

ウキウキした様子で何が楽しいのか肩から掛けられ、首を傾げたところで漸く気付いた。
麦わら屋が入ってきた、扉。
当然の如く、閉ざされる事のないそこから入り込んで来る、冷気。
寒い。

「島がみえたんだ!!」
「島?」
「おう!!」

声と同時に手を引かれる。
出た先には、青は存在せず。
鉛色の空。
ほらほら、と指さされた向こうには、


「冬島だ!!!」


真っ赤なコートを身に羽織り、ワクワクした顔でそいつが見ているのは確かに、冬の装いの島だ。
冬の、
雪の、


「ん、んん。西側に街があるわねぇ北東は一面真っ白あ、船停めるのに丁度良さげな入江があるわ。フランキー、このまま真っ直ぐ舵を、」


ナミ屋の声は、なんとなく聞こえていた。


「チョッパーのところもよ、冬島でよすっげぇ寒くてよ」


隣りにいる麦わら屋の声も、同様に。
でよ、それでよ。
続く声も、耳をすり抜けて行くだけで、


「トラ男?」
いや、」


なんでもねぇと、踵を返す。
目前に広がる、雪の色。
白。

真っ白。



この世で一番、嫌いな色だった。







「それじゃあ、担当を決めるわよ」


はぁぁいナミすゎぁぁぁんといい返事をしたのは当然黒足屋だ。
着岸して船を安定させて。しんしんと降り積もる雪の中。どうせなら、船内で決めればいいもののと思いつつも、厄介になっている身だ。今までの経験上、荷物持ちになる事は間違いないだろうが、今回はと決めていた。

「あ、ゾロは船番ね」
「なんでだよ?」
「あったりまえでしょ!こんな白一面の中、迷子になるに決まってんじゃない!」
「誰がなるかっ!」

いつもであれば、あ〜わかった程度でその担当におさまるやつが珍しく反論してる。
が、丁度いいと一歩前に出た。決めていたことを、告げる。

「船なら俺が見てる」
「え?トラ男くん?」
「寒いのは苦手でな」

適当なことを言えば、そうなのなら、とすぐさま了承されたが、

「う、わっ!」

突然、体が宙を舞った。
なんだ?と思うこともない。ある意味、慣れちまったことだが、それでもなんだ?と思うのは、もう何処かしらに行っちまったと思っていたからだ。

いの一番に、というか船が泊まったと同時に飛び降りて行ったのを見た。いつものことね、とナミ屋はさして気にするでもなく、騒ぎ起こすんじゃないわよ!とだけそいつに告げて、船長不在で担当を決め始めた。だからもう何処かに行ったとばかり思ってたってのに。

なんだ、麦わら屋?」
「ん!行こう!!」
「は?」

腰にぐるぐる巻きにされていた腕は解かれたが、何故か手が繋がっていた。
キュッと握られたまま、引っ張られて振り解く前に駆け出してしまうから、体が勝手について行ってしまう。

「お前、何処行くつもりなんだ?」

問い掛けたのにはちゃんと訳がある。
なんとなく聞いていたナミ屋の声。
街があるのは西側のはずだ。なのに、麦わら屋が向かっているのは真逆の方向で。

「そっちには何もないって言ってただろ」

飯屋もねぇぞと言っても、そっかぁ?と気の抜けた返答しか戻って来ず。
一体なんだってんだと思いつつも、いつもの如くペースに巻き込まれたまま、連れられてきたのは、案の定何もないところだった。


「うおーー!」


叫んだ麦わら屋は、そこでやっと手を離し、嬉しそうに両の拳を高々と掲げたが、俺は目を顰めた。


「雪だ!雪!!」

そうだな、雪だな。
今まで、ここに来るまでだってずっと降っていただろうに。
何がそんなに嬉しいんだか。

「白だ!真っ白!!」

そうだな、白いな。
白しか、ねぇな。

「すっげぇ綺麗だ」

誰も踏み入れてないのだろう。
先には、荒らされてない雪原が広がっている。
だから、なんだってんだ。

「俺、雪って好きなんだ」

そうか、俺は嫌いだな。
嫌でも、蘇って来る過去の風景がある。
雪。雪が降っていた。積もっていた。
そこで、大好きな人を失った。

「白って、綺麗だよな」

綺麗だと自慢だった故郷がある。
とても美しい街だと幼心に思ってた。
でも、真白の中で家族を友人を全てを失くした。
その後、誇りのようにも思っていた色は体を蝕み、人間扱いすらされなくなって、

「俺、好きなんだぁ

俺は、嫌いだ。
お前が身に纏っている色が更に思い返したくもない映像を蘇させる。
赤。
雪に沈んだその人は、赤に染まり。
白を讃えたその街は、業火に包まれた。

「ヒャホーーーー!!」

そんな奇声を発し、赤いやつは一面の白の中を跳ね回る。
何が楽しいのか、わからない。
どうして俺を連れてきたのかも、わからない。
そうだ、付き合うこともない。このまま、船に戻ってしまえばいい。


なのに、


白は大好きな色だった。
白い街に雪が降ると、一層幻想的で。
大好きだった。
なのに、



どうしても、雪を見ると白を見ると思い出してしまうことがある。
忘れることなんてない、過去。
喪失の記憶。
だから、雪は嫌いなんだ。一面の白い世界なんて見たくもねぇ。
なにもかも、俺から奪っていきそうで、


麦わら屋?」


知らずに俯いていた、先。
戻ろうと思って、あげた視界についさっきまで飛び跳ねていた赤が見当たらない。何処にも、ない。


「麦わら屋、」


どうして、何故、と足が動く。
視線が四方に忙しなく、動く。
また雪に白に奪われたような錯覚に陥り、懸命に膝丈まである雪の中、駆けずり回り、名を呼び、必死になって探して、


麦わら屋」


見つけたのは、大の字で雪に埋まっている赤、だった。


「おい、麦わら屋」


目を閉ざしたまま、返事はない。
しんしんと降り積もる雪の中。
おかしな感覚に囚われる。恐怖に近しい、そんな感情が渦巻く。
膝が崩れ、そいつに覆い被さるよう、白の中、動かないやつの頬に触れた。


トラ男」


殊更、ゆっくりと見開かれた黒目に、触れた先の温かさに、胸を撫ぜ下ろした俺に。
何処か呆然としたままのそいつが、声にしたのは、


「ああやっぱ綺麗だ」


そんなことで。
さっきも聞いた。
お前にとって、白い雪は綺麗で好きなものなんだろ。
だからって、


「トラ男、綺麗だ」
え?」


なに、


「うん、俺トラ男好きだ」
「何言って、」
「だから、お前も俺好きになれ」

なんだよ、好きになれって。
そんなん、

「無理だろ」
「なんでだよっなれよ」
「無理だって」
「今は無理でも少しずつでもいいから好きになれよ」
「無茶苦茶だな、お前」


ふ、と。
無意識に浮かんだのは、笑みで。
あ、やっと笑ったと嬉しそうにしたのは、未だ雪に埋もれてるやつだった。


「なぁ、いいだろ。俺のこと好きになれよ」


ししし、と笑いながら、白に落ちていた掌が俺を抱き寄せようとするから。
逆らわず、身を倒す。
でも、その途中、


「ん?」


す、と。
口唇に、触れた。


「トラ男?」
「だから、今更好きになるのは」


無理だ、と続けようとした声はそいつに呑み込まれた。
いつの間にか後頭部に廻された掌によって、掠れる程度に触れただけの先に、押し付けられる。

「っ、ん、」

ちゅくちゅくと音を立てながらもかき乱される口内に、戸惑う。驚く。
子供だとばかり、思ってたってのに。
こんなキス出来たんだなと思わせる程のものに、眩暈がした。
トラ男、好きだ好き、と譫言のように繰り返される声を有り得ないほどの距離のまま、聞きながら、


いつか、と強く思った。
嫌いになってしまった、雪に白。
いつの日か、その景色を見ても一番先に思い出すのが、今、この時であるように、と。


雪白に、願った。



2016.12.15 Ree.MORITA

私の基本形的なルロー何処かで見たようなネタで申し訳なく


ネタ、被ってたらごめんなさい