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ree_1116
2016-09-05 21:03:56
2852文字
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幸せ(ルロー)
ルローワンドロ第14回お題【幸せ】幸せっぽくなってるといいな…
「ただいまー!」
「
…
麦わら屋。ただいまって、お前な」
「あ?」
「ここは、俺の部屋だろ」
「船長室だろ?俺も船長だ!」
「
…
俺の船のな」
「同盟なんだからいいじゃん」
「って、お前」
こんなやり取りは、もう何度目だろうと思って、数えるのをやめた。
思い起こさなくても、最初からというか。
作戦を立て、移動することが決まった。先行するでござる!と言った侍たちとミンク族は言葉通りに先に行き、その後を麦わら屋の船と並行して進んでいた。出航したその日から、だ。麦わら屋が何を思ったのか、こうして俺の部屋へとやって来るようになったのは。自分の船に寝床がちゃんとあるってのに。船長がてめぇの船に居なくてどうすんだとも思ったが、俺も一時離れてたこともあったしそれは声にはしなかったが
…
。
毎日、毎夜、眠る時刻になると此処へやって来る。ベッドだって然程広くもねぇし、寝心地だってそんないいもんじゃねぇってのに。何故か、ここへ来る。俺だって其処で休むんだと言っても、ど真ん中で寝やがって。全く、
「あ〜
…
つっかれたぁ」
なんだってんだ、と大きな溜息を零したのと同時に、ふらふら麦わら屋はベッドに倒れ込んだ。
ギジリ、と音を鳴らして硬いとしか言い様のない、其処に。
「何そんな疲れてんだ?」
特に何もない一日だった。
海も荒れることなく穏やかで、いい風が吹いていたから予定よりも進むことが出来た、なんでもない日。
暇だー!言いながらも鼻屋と何かしら遊んでたことは知ってる。それにしたって、ある意味日常でしかないことだろうに。何を疲れることがあったってんだ?
「ふぅろぉ」
「ふぅろ?」
「風呂、入って来たんだぁ」
くたり、と。
うつ伏せになったまま顔だけこちらに向け、目をトロトロさせながらも続ける。
「みんなで入ったんだぁ。すっっげぇ楽しいんだけどよ、風呂って疲れるんだよなぁ」
「そりゃお前、」
元々、水の中に入るってことは疲れを伴う行為だ。ましてや、能力者。体力を奪われて当然だろうが、
と、そこまで考えて、ん?と思った。
そういえば、昨日もこんなになってたな?
此処に入ってくるなり、くたくたとベッドに倒れ込んで。
そのまま、ガーガー寝て、
「お前、昨日も風呂入ったって言ってなかったか?」
「お〜
…
」
入ったぞぉと今にも夢の中へと入り込みそうになりながら、ふらふら手を挙げる。
「なんで、」
確か、ゾロ屋と骨屋もだった。こいつの船に厄介になっていた時、毎日湯に浸かれるなんて贅沢だなと思って、いいなと言った俺に、そっかぁ?と笑って。俺たち週一だもんなぁと言ってた。俺は、ゴムだからそのくらいでいいんだと。なんだそりゃと思った記憶がある。ルフィは熱に弱いみてぇなんだと俺同様毎日派の黒足屋が、肩をあげてた記憶もある。ゴムだからってだけの理由でもねぇんじゃないのかと思ったことも、覚えてるってのに。どうしてこの二日。連続で入って、
「だってよぉ〜トラ男
…
嫌だって、言ったじゃん
…
」
嫌だ?
俺が?
そんなこと、一体いつ、
あ、
「だからよぉ〜」
俺ぇ、と既に半分以上瞼を閉じ掛けてるやつが、どうしてか懸命にふにゃふにゃなりながらも言ってることは、
「
…
そうか」
「そ〜だぁ」
そうだった。
三日前。
こうして、此処にただいまとやって来たやつは、なぁなぁと近寄って来た。えっちしようと誘ってきた。
その日は今日のような穏やかな日ではなく、次から次へと新世界の海に翻弄された日だった。どうやらおかしな海域に入り込んでしまったようで、そこから抜け出すのにも一苦労というか
…
で。やっと抜け出せた頃には、夜になっていた。ほっとしたのも束の間、巨大な氷山が空から降り始めて。海域を抜けることに全力を使ったクルーたちは動けず。麦わら屋の所のやつも甲板に倒れ込んでいたから、仕方ねぇと能力を使った。二つの船をすっぽり包み込むようにROOMを張り、タクトで弾き飛ばす。幾多ものそれに惜しみなく能力を使いまくったから、当然の如く、体力が尽きた。へとへとになって戻った、船長室。今の麦わら屋のようにベッドに倒れ込んでた所への、誘い文句。間が悪いというか、タイミングが最悪というか。何も今日誘って来なくても、と思った。バカ、と思った。
実際、嫌ではなかった。
此処は鍵も掛かるし、一応壁も厚い。声さえ、俺が気を付ければどうにかできるかな、なんてことは考えてたんだ、俺だって。
初日、並行航海を始めた日から、こいつがなんでもなく此処に来るようになってから、ずっとそんなこと考えてた。
でも、その日はそんな気になれるわけもなく。
だからつい、風呂に入ってねぇやつとは嫌だと勝手に声になってた。俺は休みたい、寝たいんだとそのまま寝ちまった。
次の日、目が覚めて。いつもなら、隣りで眠ってるやつの姿がなくて。ああ、クソと頭をかいた。
失敗したと思った。悪いことした、と思ってた。次、誘われたら、とも思ってた。
でも、昨日も麦わら屋はこんなんで。誘うことなく、寝ちまって、
ああ、なんだよ。
全く。
で、今日もそのまま寝ちまうってのか、お前?
とろとろ、とろとろ。
ふらふらしてた黒目が、完全に見えなくなってる。
こりゃ寝るなと思ったけど、
「トラ男
…
」
シーツに落ちてたでかい掌が、俺を呼ぶ。
なんだ?と近寄り、横たわったやつの視線に合わせるよう屈み込めば、近くなった気配に気付いたのか閉ざされていた瞼が、薄らと開く。呼んでいた掌がそっと後頭部に添えられて、
「おやすみ」
声と共に、むちゅっと、口付けてきた。
ししし、と笑って今度こそ、完全に眠りの世界へと落ちていった。
「なんだよ、寝ちまったのか?」
ガーガーと鼾をかきながら、幸せそうに眠るその顔に、ふうわりとしたものに包まれる。
愛しさに、満ちる。
「おい、麦わら屋。お前、えっちしたいんじゃねぇのかよ?」
だから、苦手な風呂にまで入ってから、俺の元にきたくせに、
「へへ、」
バカなやつ、と寝ているその頬をむにむに、むにむに突けば、ん〜ん〜言うくせにやっぱ幸せそうな顔をしてて、
「あ〜
…
クソ」
まだ、やりたいこともある。
やっておかなければならないことだって、あるってのに。
灯っていた明かりを消す。
今日もど真ん中を陣取ってるやつの横に入り込めば、うつ伏せになってたやつが寝返りを打ち、キュッと抱きしめてくる。トラ男〜と、寝言を言いながら。キュッと、柔らかく、優しく、抱き締めてくる。
ああ、もう。
共に動くようになって。一緒に居るようになって。
毎日、必ず俺の元に帰って来て、おやすみのキスをして、一日を終える。
なんて、他愛なく、些細で、何処にでもあるような、
これ以上ない、幸せ。
2016.09.05 Ree.MORITA
ただ恥ずかしいだけのるろーで
…
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