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ree_1116
2016-08-30 03:30:21
5364文字
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嘘(ルロー)
ルローワンドロ第12回お題【嘘】DR周辺のよくある展開…
「好きだ」
その時は、
「俺も、好きだよ」
嘘、だった。
凍り付いた海域を抜け、海坂も抜け。
やっと、落ち着いたところで、同盟の件が告げられ、作戦を話した。
様々な、不確定要素。わからない工場の場所。
それでも既に動き出した、先。
今更、あれこれ考えても仕方がないことはわかっている。今、思うことはひとつ。乗ってくるか、どうか、のひとつ。乗るしかねぇとは思っているが、相手が相手だ。
どう動くか。乗るか反るか。
明日の朝刊まで、その答えは出ない。わかっているってのに、何処か落ち着かず。ずっとわいわいと喧しい船首から離れ、一人船尾から白立つ波間を眺めていた。
沈む夕陽に、揺れる青。
偉大とも言える大自然を前に、ただただ佇んで居た。
綺麗だな、なんて。そんなことを思いながら。
今は、明日の朝を待つだけ。
そして、その結果の先。どうなっても構わない。どうなっても、果たしたい。命を賭けるではなく、落とす覚悟で挑む。最初から、決めていたことだ。そう、始める前から、
だから、きっと。
今、目前に広がる橙をこうして眺めるのも、
「
…
?」
そこで、とん、と手を付いていた先に何かが絡み付いた。
何か、何かって、
「はぁ、」
一体何の用だと、溜息を吐いた瞬間、手摺に巻き付いた手から体が飛んで来た。すと、と軽い音をたてて、なんでもなくやって来たのは、伸びるやつだ。向こうで楽しそうに追いかけっこだか鬼ごっこだかやってたはずなのに、どうして来るかな。俺は一人でこの広大な景色を堪能してたかったってのに。でも、何も言わない。言う必要もない。ここは、こいつの船で。この先も共に、なんて万にひとつもない。所詮、明日には切れる縁、だ。一定の距離のまま。少しずつ、一気に離れていくだけの、同盟相手。それだけ、のはずだったってのに、
真っ直ぐ、前。
斜陽を浴びたまま、俺を見るでもないやつは、好きだと言った。
斜めから、後ろから。
横顔を見ながら、俺も、と続けた。
他意なんて、あった。
純粋でいて単純な、好意。
本気なのか、他愛ないものなのか。
判断はつかなかったが、それでも同じだと続けたのには、理由がある。どちらにせよ、受け入れるつもりなんて到底ないが、頷いたのは単に使える、と思ったからだ。この先、向かう先で、こいつにはやって貰わなければならないことが、ある。どうしても、何が何でも遂げたい、こと。その為に、俺の為に、成して貰わなければならないことがあるからこそ。なんでもなく簡単に、考えるでもなく、風に乗せるよう、好きだよ、と声にしていた。単純なものでも、複雑なものでも、告げられた言葉は好意でしかない。
未だ、俺を見ることのない横顔。
子供のままの、瞳。
無邪気なのか、馬鹿なのか。
多分、無垢なんだろうとは、思う。
その、赤ん坊のようなやつを騙すなんて、嫌な奴だな、俺も。
でも、
悪いな、麦わら屋。
利用させてもらう。
いいだろ、別に。
所詮、明日までのことだ。
なのに、
だから、
「ん?」
手摺の上に、乗ったまま。
そいつの手に、己のを重ね、
「キスでもしとくか?」
どちらかなのか、わからない。
友の情なのか。愛の情なのか。わからないってのに。
そんなことを言ってた。
途端、波が揺らぐ音だけになる。
僅かな、静寂。
俺の言葉にただ前だけを見ていた黒い瞳が、振り返る。真っ直ぐはっきりと、俺を捉える。
まるで心の中を探るかのようにじっと見詰められた、微かな静けさの中。
ここには、誰もいない。俺たち以外、誰も。
夕陽に囲まれた世界に、二人きり。
愛の情ならば、シチュエーション的には、これ以上ないものだ。
でも、そいつは、軽く首を振った。
ううん、と軽く。
そして、
「やめとく」
「
…
そうか?」
「おう」
ししし、と笑っての返答に、友人に近しい好意なんだな、と思ったが、
「トラ男が、」
「俺?」
「したいって思ったら、する」
「なんだそりゃ」
「だって、そーいうことだろ?」
何が、と問いかけようとして、やめた。
何故かこちらが不利に感じたからだ。
ほんとは好きじゃねぇんだろ、とでも言われたように、感じたからだ。
こいつが、言葉通りにしか受け取らないガキが、気付くわけないとも思ってるってのに、
嘘、だった。
確かに、この時は嘘だったんだ。
切れるしかない縁。明日には終わる、同盟。
嘘、だったんだ。
なのに、
他でもない、ドフラミンゴに問われた。
何故、と。
麦わらを信じる、と。
俺は、即答した。
D、という答え。
きっと、多分。
名を知った時から、期待に近しいことを抱いていたと思う。隠すことなく、その名を持つ奴に。そうして目の前で起こった、天を揺るがした事件。あの時から、何かが、
…
心に芽生えていたと思える。
そう。今なら、わかることもある。
戦火の中を進んだことも。同盟を組んだのも。利用という言葉に置き換えて、ここまで来たことも。
終いには、共にと望んだ。
望んで、いた。
今なら、わかるんだ。
どうして、何も考えるでもなく、頷いていたのかも。
キス、なんて言ったのかも。
こんな時に、気付くなんて、
嘘だったはず、なのに。
嘘だ、と思い込ませていたと気付いた。気付いてしまった。
所詮、直ぐさま全てが終わると思っていたのに、
トク、トク、と。
繋がったばかりの右腕が、疼く。
生きている証の、痛みと音。
カウントダウンが始まった。
瓦礫の中、国中から響く声を聞いていた。
もう俺に出来ることは、然程ない。
それでも、と。共にと望んだが為、此処に居た。
一等、近くに居た。
減っていく数字に、ふらりと、立ち上がる、影。
見た先には、揺ら揺ら揺れながらも、大地を踏みしめ、真っ直ぐ立つ男。
キ、と睨みつけた先には、ぶっ飛ばすと幾度も宣言したやつの姿。
俺には、気付いてないだろう黒は、揺ら揺ら揺れる体とは反して、揺るぐことなくひとつだけを映し、もうすぐ尽きる数字に合わせるよう、ググッと拳を作る。
その強さに見惚れつつ、ゆうるりと未だ俺を視界にも意識にも入れないやつに、手を伸ばしていた。
気付いたことが、ある。
共に、と決めた。
勝手に、決めた。
待ち構える結果がどうであれ、もう決めちまったから、
最後になるか。
最初になるか。
わからないものを、求めた。
「麦わら屋」
「
…
、トラ男?」
「キスを、」
え?
瞬間、ありえない程目を見開いたやつは、瞬きの間に、ふと淡い笑みを浮かべて、
「ぁ、」
動かない右手ではなく、欲しいと伸ばした、左手。
それに、柔らかく指を絡め、身を屈めた麦わら帽子は、そっと。そおっと、口唇に触れて来た。
互いに、目は開けたまま。
薄く仄かに掠めた熱は、温度も名残も残すことなく、刹那に離れ。
思わず、追い掛けるように前のめりになった俺を見据えて、
「トラ男」
聞いたことのない声色で、名を落とされた、瞬間。
微かに風が通り抜けた間際の距離は、一瞬後には失くなっていた。
強く、強く。押し付けられていた。
「ん、んんっ」
深く、深く、深く。
息も侭ならない程、深く。
視界が霞む程、深く。
何もかもを、奪うかのように、深く。
でも、覆い被さった影は、俺を置き去りに、すと退いた。
「うっし、」
パン、と拳で掌を叩き、行くと立ち上がった男は、もう俺を見ていなかった。
視線の先には、ただひとつ。
見据えた向こう、今にも飛び出さんと膝を折ったくせに、
「トラ男」
不意に、振り返る。
そして、
「続きは、終わってからな」
なんて、言って。
子供をあやすように、ぽんぽんと俺の頭を撫ぜやがった。
なんだよ、クソ。
どうせ、それも、
もしかして、と思った。
こいつ、と既に後悔に近しい想いを抱いてた。
この野郎と、
でも、
「俺が、」
「ん?」
クソ、クソと何度も思いつつ、今、自分が成せることを告げる。
「俺が飛ばす。女が二人居るだろ。お前と入れ替える」
「
…
そうだな。頼む」
「ああ、」
頼んだ、という言葉と同時に。
辺り一面を木霊していた、カウントがゼロになる。
展開させた能力で、そいつを最終決戦の地へと送り出した。
後は、託すしかない。見守ることしか、出来ない。
どんな結末でも、終焉でも。
受け入れる覚悟は出来ている。
誰よりも近しい位置で、ただただ待っていた。
それでも、頭の片隅では、未だになんだよと繰り返していた。
なんだよ、あいつ。
あの顔。
ああ、クソ。
そういうことかよ。
そういことだったのかよ。
今、気付くなんて、
「ほんと、最悪だな」
「おい、嘘つき」
そう呼び掛けた俺に、ん?んん??とキョトンとした顔で振り向いたやつは、しししと笑った。
そうして、
「バレたか」
なんて、呆気なく、認めやがる。
これでも、一応至った答えにこいつがどうするつもりなのかを伺っていた。
続きはという言葉に期待していたわけではない。決して。
結局、ドレスローザを後にして数日。何もなかった。
そう、何もなかった。今の今まで。
好意を示す言葉をあれ程まで簡単に吐いたくせに、俺が欲した一度きりしか、なかった。こいつからは何も仕掛けて来なかった。それが、全ての答えだと気付いたからこそ、最悪だと思った。
でも、でもだ。
あんな、キス。
続いた言葉はなかったこととしても、キスをしたのは現実でしかない。
子供に送るような最初のキスだけならまだしも、あんな
…
あんなキスまでしやがって。
なのに、結局何もなかった。
焦れたわけでも、待っていたわけでもない。
腹が立っていた、だけだ。
「でもよ、お互い様だろ」
変なオブジェがついた、船の上。
手摺りに座り込んで、フンフン鼻歌を歌ってたやつは俺の呼び掛けに、背にあった帽子を被り、ストンと前に立って事もなげに言う。
確かに、そうだ。
お互い様だ。
だからこそ、腹が立ってんだろ。
「お前に騙されるとは思ってなかった」
「別に騙したつもりはなかったんだけどなぁ」
「嘘つき」
「お前もな」
そう。
好きだ、好きだよと伝えあった言葉は、お互い嘘だった。
全然気付けてなかった。本気で、信じてた。まさか、あんな平然と嘘を吐くなんて思ってもなかった。
キスを、と欲した時のあの驚いた、顔。
そこでやっと気付けた。なんだよ、クソと信じきっていた自分を罵った。
でも、どうしてと思う。
なんで、あんなこと言ったんだ?
好きだ、なんて。
うっかり、信じちまったじゃねぇか。
嘘、だったなんて。
この野郎。
「キスしたくせに」
まるで、愚痴のように落とした俺に、矢張りそいつはあっけらかんと笑う。
「トラ男がしたいって言ったんだろ」
言った。
言ったが、それは。
お前のあの言葉があったからこそのもんだろ。
まさか、嘘だとは微塵も思ってなかった。
騙したのは俺だけで、嘘つきも俺だけのはずだったってのに、
「好きでもねぇくせに、」
あんなキスすんなよバカと、額を小突こうとした左手は、ぐっと握られた。
そのまま、引き寄せられた。
「何、」
「好きだぞ」
「え、」
「だーかーらー」
好きだって、と。
背を伸ばした奴は、つ、と口唇に触れて、
「
……
また、」
嘘だろと掴まれた手を振り解こうとしたが、
「好きだ、ロー」
真っ直ぐに。
揺るぐことなく。
俺を瞳に閉じ込めたままの、黒に囚われてしまう。
一度は信じた、言葉。
受け入れるつもりなんて到底なかったはずなのに。
信じた挙句、欲しがって、声にして。
嘘だった、言葉なのに。
信じろってのかよ、
「今のは嘘じゃねぇぞ。それにお前も、俺のこと好きだろ?だから、キスって言ったんだろ」
な、と同意を求めたくせに、俺からの返答を待つことなく、ししし笑ったままの奴はもう一度距離を縮めて、
「俺のだ」
下から、ゆっくりと口唇を重ねてくる。
真っ直ぐ、真っ直ぐに俺を見つめたまま。
なんだよ、クソ。
この野郎。
今の今まで、何も仕掛けて来なかったくせに。
今更、
「ぁ、
…
ふ、」
次第に深まってくる口付けに、翻弄されそうになりながらも。
心の中では、まだそんな文句を連ねていた。
だって、こんなガキに騙されて、こんな子供に絆されるなんて、
「なぁ、トラ男」
「ん、」
「好きだって」
「
…
っ、」
「好きだ」
好きだ、好きだとキスの狭間に言霊のように繰り返す。
なんだってんだ。
俺にも認めろってのかこのクソガキが。
ああ、クソっ、
「なぁ、トラ男」
うるせぇ、
「俺もだ、この野郎」
2016.08.30 Ree.MORITA
なんか変な文章群になってしまった(>_<)
残念
…
気力があれば、ルフィさん思考も書きたい
…
変な話しにここまでお付き合い、ありがとうございました。
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