ree_1116
2016-08-12 02:26:04
5016文字
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嫉妬(ルロー)

ルローワンドロ第10回お題【嫉妬】遅刻してしまったあげく、お題に添えてるかかなり微妙ですが…少しでも楽しんで頂けると幸いです(^-^)

あ、ヤベェと思った時には体が傾いていた。
そうして、うつらうつらと閉じ掛けた視界の端、とんでもない顔で近寄って来るやつに。
ああ、なんだよその顔、と知らずに笑みが浮かんでしまう。
そういえば、



不意に思い出したのは、僅か数日前のこと。
なんでもなく、

「好きだ」

と、告げられた。
本当に、なんでもなく。
どちらかというと独り言のように。
だから、迷った。悩んだ。
なのに、

「俺も好きだよ」

なんて、声になってて。
実際、驚いた。
なんだよ、俺。
好きだよって、

「そっか?」
「ああ」

軽く、他愛なく続けられる会話。
切実さなんて微塵もない。想い募って、というものもない。
さもそれが当たり前のように、交わされる言葉だったけど。

「んじゃ、俺たち両想いだな」

と言った顔が、笑顔が未だかつて見たことのないもので、

ああ、なんだと、思った。
お前、本当に俺のこと、と至って擽ったくも、満たされる何かもちゃんとあって。
そうか、俺もちゃんと好きなんだと実感した。
そこから、関係が変わった。




「ああわかった。次の定期連絡は十二時間後だ」

アイアイという声と共に切れた、通話。
伝えてきたことを箇条書きし、頭の中で整理をする。
今は、作戦行動中だ。
うちの奴らは先行し、情報を集めてる。これからのこと。向かう、先。作戦はある程度固まっていたが、成功確率を上げる為に選んだ、別行動。俺が麦わら屋の船に乗ったのは、作戦なんてお構いなしな一味の面々を抑える、というか。うちの船長を止めるなんて無理よ、とあっさり納得してしまう事を告げられたから、だ。暗に、私たちには、という言葉を含んだそれに、仕方ないと残っただけで。それ以上のことは何もない。逐一入る連絡を受け、その度に細かく細かく作戦を練り直す。それだけに集中していた。ある意味、寝る間を惜しんで、飯を食うことも時折忘れ、一人脳内で様々に展開していく。当然、作戦通りに動くなんて有り得ない。それでも繰り返すのは、1%でも成功の確率を上げる為だ。
ある意味、一人余裕を失っていた。
まだ、見えることのない、向かう先。
積み重なる情報の山。
気付けば傍らにコーヒーが置かれてたり、ラベンダーが置かれてたり。そんな気遣いすら気付けないほど、集中している自分に呆れた。いくらなんでも、と思う。同盟を組んだ相手だからって気配すら気付けねぇのか、俺は。
向かう、先。
今までのように、どうにかなるさ、な相手ではない。
俺が一番よくわかってる。
だからこそ、

「はぁ

少しでも少しでも、とキリがない。
息を吐いて、なんとなく窓から見える景色に目をやる。
広がる、青、青、青。
煌めく、光の束。

偉大だな」

大自然ってのは、と更に視線をあげれば、太陽が世界を照らしている。それに、好きだとなんでもなく告げてきたやつを思い出しては、心が休まるってなんだろう。不思議な感覚に囚われ、会いたいなんて、同じ船に乗ってるやつを想い、ずっと閉じ籠っていた部屋から、出る。

「気持ちいいな」

ひとつ伸びをして、何気に船首へと顔を傾ければ、笑顔。
あの日とは何処か違う楽しそうな顔があって、更に心が和む。
もう少し、と柔らかくなった心と一緒にまた閉じ籠る。
頑張ろう。
素直にそう思えて、擽ったくなったが、そんな自分も嫌いじゃねぇなと、やっぱり擽ったくなって困った。


そんな日々だったから。
当然、関係を変えたからといって、それらしきこともなかったし。
麦わら屋から、何か、ということもなかった。
時折、視線が合えば嬉しそうに笑うだけで。
もっとあるかと思ってたが、多分こんな感じでいいのだろうと漠然と思ってた。
お互い、束縛を求めない。自由なまま。通じ合っても、今までと然程変わることなく。
でも、と何処かで物足りなさも感じては居たが、だからと言って今はそんな余裕もない。
終わったら、なんて考えてまた擽ったく思う。どうしてくれよう、なんて先のことを思って、面白く思ってる。
今まで居なかった自分に困りながらも、幸せにも思ってる。

「どうしようもねぇな」

俺も、と。
その為には、これから向かう先を、クリアしなければならない。
だからと、また繰り返す。組み立て、動かし、また組み立てる。
そんな日々だった。





なんだ?」

何か飲み物でもと思い、ダイニングへ向かった足は、甲板で止まった。

「おお、トラ男!」
「丁度、良かったわ」

良かった?

「今、呼びに行こうと思ってたんだ」

なんで?と問わなくても辺りを見渡せば、答えなんてあっさり出る。

「宴だ!!」
だろうな」

並べられた料理に、酒。
つか、一体なんの宴なのか。特に、何かってのもないんだろう。やりたいから、やる。そういう奴らはだと言うことはもう知ってる。でも、

「俺はやる事があるから」

遠慮すると言えば、いいからいいからと腕を引っ張られた。

「何か欲しくて出てきたのでしょう?なら、少しだけ」

いいじゃないと、ニコ屋に言われ、確かに飲み物でもとは思ったが、と抵抗をやめてしまったのも間違いだったが、座る場所も間違ったと気付いた時には遅かった。

「呑め呑め」
「トラ男、全然呑んでないじゃない〜やぁねぇ」

何が嫌なのか知らねぇが、とにもかくにもゾロ屋とナミ屋の間に座ったのは失敗だった。
次から次に注がれる、酒。
即され、いやもうと断ろうとすれば、弱いなお前と額を小突かれ、もうダメなの?と頭を撫ぜられ、情けねぇなと笑われれば、思わずムとしてしまい安い挑発に乗る俺も俺だ。クソ、と注がれた分呑み込んでこれでいいだろうと立ち上がろうとしても、まぁまぁと腕を引かれ、また注がれる。なんだ、これは?船長のみじゃなく、クルーたち全員こんな強引というか、こちらの都合などお構いなしなのか?本気でいい加減にと思ってはいるが、なんせ空腹だったし、睡眠も足りてない体にいきなり酒を流し込んだおかげで、足はグラついてる。いつもであれば、簡単に否定出来るものすら、振り解けず、結局はその場に留まってる。

「ほら、トラ男」
「美味しいわよ、このお酒」

呑め呑めと唆されつつも、あからさまに不本意を浮かべながら視線をあげれば、目の前にそれはもう美味そうに嬉しそうに楽しそうに、肉を食ってるやつ。その姿にやっぱ何処となく心がほわりとする。幸せそうな顔しやがって、と擽ったくなる。ああもう、困ったなと首を傾げれば、どした?トラ男といっぱい頬張りながら近寄って来るのも、擽ったい。あの日以降、こんなに近い距離もなかった。だから、ともう少しだけここにと思った所に、ロー!と俺を呼ぶ声。黒足屋だ。なんだ?と顔を向ければ、ちょっと来いと手招きされる。折角、麦わら屋が近くに居るのにという心と、これでこの場から解放されるという相反するものを携えながらも、多分これ以上呑むのは拙いとわかっているから、その誘いに乗った。呼ばれた先は、ダイニングだ。フラつきながらも、カウンターに座り込めば、大丈夫か?と一言。未だ、料理を作ってるやつからの、それ。気遣ってくれたのかと、ああ、と返せば、この意地っ張りがと笑われた。

「ま、水でも呑め」

一品作り終わったのか、火を止め、言葉通りのものを持ちながら、俺と並ぶように座る。

「で、このままバックレちまえよ」

クソ剣士に付き合ってたら朝までコースだぜ、と吐き出されるタバコの煙を追いながら、ナミ屋のことはねぇんだなと、テーブルに置かれた水を、コクリと一口。

「悪いな」
「気にすんな」

途端、視界がグラついた。
ひらひらと、手を振った黒足屋の顔が何故か揺れてる。
あ、ヤベェと思った時には体が傾いていた。
なんだ?俺、寝ちまうのか?
この数日睡眠時間は足りてねぇとは思ってはいたが、こんな強制的に睡魔に襲われるなんて、酒の所為か?それとも、

「ま、ゆっくり休め」

とん、と。
襲いかかってくるものに逆らえず、横に居るやつに軽く抱き留められる。
自分で支えきれなくなって、瞼すらも落ちてきて、

「サンジーー!肉なくなと、トラ男!!!」
「って、ルフィ?」

麦わら屋?

「何してんだっ!」

そうして、うつらうつらと閉じ掛けた視界の端、とんでもない顔で近寄って来るやつに、ああなんだよその顔、と知らずに笑みが浮かんでしまう。近付きながらも伸ばされ巻き付かれた腕に、引き寄せられ、あっという間に強く抱き締められていた。

「麦わら屋
「トラ男!お前なっ」
?」

怒ってんのか、これ?と間近で顔を見上げれば、

「こーいうことするなら俺にしろ!」
「こーいうこと?」
「俺が妬くだろ!!!!!」
え?」

わかったか!とギリギリ更に抱き締められながらも、こいつ今何言った?とそんなことを考えてた。
睡魔によって、うまく働かない思考でも、辿り着くまでもない答えは、

答えは、

「ぷ、」
「ぷ?」
「あははははっはは」
「おいこら、笑うなって」
「だってお前」

もしかしなくても、そういうことか?
妬いたのか?お前が?
仲間に?俺が寄り掛かってただけで?

「さっきだってゾロにツンツンされてるしよ!ナミにいい子いい子されてるしよ!!!サンジには抱っこだし!!!俺まだしてねぇぞ!!!!!なんかトラ男頑張ってから、これでも我慢してたんだぞっ!!」

おれは!!!って。
なんだよ、それ。

馬鹿」
「ムー!」

この野郎と更に更に強まる腕が、擽ったくて。嬉しくて。
ああ、もうほんと馬鹿だな。

「なんでも、好きにすればいいだろ」

お前になら、なんだってされてぇ

無意識なままに、零れ落ちた本音でしかないものは。
どうやら、伝わっていたようで。
力なく抱き返し顎をあげれば、俺が何を強請ったのかちゃんと気付いた奴は息を呑んだくせに、

「トラ男」

いつもにはない声が俺を呼び、緩く笑む。
やっと触れられると、近寄ってくる熱に閉じ掛かっていた瞼を完全に閉ざそうと、したが。

「あーあーこほんっ」

真後ろからの、わざとらしい音。
ああ、そういえば、ここって

「なんだよっサンジ!!」
「お前らが何しようが勝手だが、取り敢えず場所を考えろっっ!!」

軽く足蹴にしながら、出て行けと即されるけど。

「まぁ、良かったじゃねぇか。ルフィ」

なんて言い出すから、

「おう!ありがとな!!」

と、それはもうさっき肉を頬張っていた時よりも嬉しそうに答える。

「アクアリウムに、ウソップ考案フランキー作の安眠快眠快適ベッドがあるからそこ連れてけ」
「ベッド?」
「ああ、お前全然休もうとしねぇからよ、皆でちょっと一計を講じたんだ。悪かったな」

それって、ああだから。
いつもは然程絡んで来ないゾロ屋とナミ屋があんなに酒を勧めたりしてたってのか?ニコ屋も一枚噛んでたんだろうな、きっと。
そして、

「水に何か睡眠薬でも入れやがったな」
「だからよ、悪かったっての。でもチョッパーに頼んで作ってもらったやつだから、安心していいぜ。後はブルックの子守唄だったんだけどな。この分ならお邪魔にしかならねぇな。あ〜スタンバッてるからアクアリウム行くついでにこっちに来いって伝えてくれるか?」
ん?おう、わかったぞ!」

成る程、麦わら屋は蚊帳の外だったわけか。
にしても、そんなに俺、酷かったのか?こいつらにまで、気遣わせてしまう程?

「ってことで、後は任せたルフィ。色々お望み通り好きにしてやってもいいが、ちゃんとロー、休ませろよ」
「おう!!任せろ!!!」

俺が妬くだろと言ったやつは何処へやら。
行こう!!と睡眠薬ですっかり眠りにつきたがってる体を抱き抱えるから。
大切そうに、抱き上げるから。
また、擽ったくなって困ったけど。
すいと、肩口、胸元に顔を埋め、抜けきってる腕を首に廻した。


妬かれるのも悪くねぇ、なんて。
笑えて、擽ったい。
困って、嬉しい。



嬉しいんだな、俺。


2016.08.12 Ree.MORITA

なんかあんま嫉妬してくれてなくてスイマセンでした