ree_1116
2016-07-29 01:37:54
3977文字
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花火(ルロー)

ルローワンドロ第8回【花火】時間軸的にGOLD直後。多分大丈夫かと思いますが映画ネタバレ含んでるかも、なのでご注意下さい



「うおーー!すっげぇーーー」

と、麦わら屋が駆け出したのを見て、全く、と思いながらもどうしても笑みが零れてしまう。
合流を約束した島に着いたのは、少し前。
暮れる直前だった。
着岸する前からウキウキしっ放しだったクルーたちは、シャチを筆頭にお祭りに行くと浴衣なんぞ(何処で手にしたのか。多分、ワノ国なんだろうが)着ていて、キャプテンのもありますよと遠慮したってのに、麦わらとデートなんでしょデートなら浴衣っすよ!!麦わら、喜ぶと思いますよ~なんて、勝手に着付けられた。
まぁ、別にそれはいい。
麦わら屋も甚平を着ていたし、俺を見て確かに喜んだのもわかったし。
似合うなトラ男なんて、何気に照れたように言われては悪い気など全くない。
そうして、辿り着いた祭りの場。
ずらっと並ぶ店に、群衆の波。
さっきまであった夕焼けは身を潜め、東の空に薄らと月が浮かび上がり、辺りには提灯や松明がずらりと連なり、いつもとは違う雰囲気を醸し出していた。

「トラ男、こっちこっち。お面売ってる!!」

つか、お前。
食い物じゃなくまずはお面かよ、と思ったがまぁ楽しそうなのでいいか、と近寄れば、これにしようと手にしたものは俺の頭にやって来た。

俺?」
「おう!」
「熊?」
「ベポに似てるだろ。だからトラ男はこれだ!」
「まぁ

似てるといえば、似てるが、

「おっさん、これとこれくれ!」
「毎度あり」

俺にお面ってどうなんだ?と思っていたら、すっと麦わら屋が金を出した。
それに、あれ?と思う。
こいつ、と首を傾げる。

「お。あっちには焼きそばがあるぞ!おおっあっちはりんご飴だ!!うまほー!!!!」

どっちに行こうと悩んでるやつを横目に、少し前に見たものを思い出していた。
数日前。
行ってくると聞いた、翌日。
クーが運んできた新聞が告げた、ひとつ。
行くと喜んでいたカジノが潰れた。
どうしてそうなったという顛末は曖昧にされていたし、海軍が云々書いてあったが、やったのは麦わら屋かと漠然と思った。大儲けしてくると向かったにも関わらず、一体何があったのか。深く問うことはない。それでも、未だに微かに残ってる傷に、バカだなと思って、いやあっちには焼き鳥もあるぞ、ときょろきょろしてる額をピンと小突いた。

「ってー、なんだよトラ男」
「なんでもね」
「?変なトラ男」

と言ったやつはどうやら焼きそばを選んだらしく、行くぞと手を引く。
ととと、と走りながらも背の麦わら帽子が楽しそうに揺れてたので、暫くは付き合ってやるかと思った。

あちこち連れ回されて両手いっぱいに食い物を抱えたやつに、一旦座ろうと誘ったのは、俺だ。
なんで?と問うから、それ以上持てねぇだろ、と告げれば、ああそっか、と提案に乗ってくれたので人波から離れ、人気の少ない石垣に座り込んだ。
流れる人たちの中には、仲間たちの姿もある。俺たちに気付いては、大きく手を振って通り過ぎていく、最中。麦わら屋は手にあるものを頬張り、僅かに浮いている足をバタつかせていた。そこで、なんとなく、

「お前、金持ってるんだな」

なんてことが声になった。

「ん?」
「いや、だって」

前、言ってた通りになってる。
俺が金出すから、と電伝虫の先からの声。
でもそれは、大儲けするという前提の元のものだったはずだってのに。殆ど、麦わら屋の食い物に消えていった金は、俺の為にも使われていた。お面に酒、焼き鳥に、飴。潰れちまったカジノで大儲けなんて無理だっただろう。なのに、

「ナミがよ、特別にって一万ベリーくれたんだ」
「ナミ屋が?」
「おお。こっそりくすねて来たって言ってた」

何を?

「だから、一万ベリーはもってんだ!」

と言ったやつはその直後、ふと上へと視線を馳せ、しゅんと俯いちまう。

「どうした?」
「や、あのホテルに泊まろうと思ってたのによ」

言葉に思い出す。
そういえば、そんなこと言ってたな、と。
麦わら屋が見た先にあるのは、それはもう豪華絢爛なホテルだ。
すげぇホテルがあるから、そこに泊まって花火見て、えっちしようなんてことまで言い出した。
つか、本気だったのか、あれ。

「大儲けしようと思ってたんだけどよ。すごかったってのになぁんか、俺の嫌いなとこでよ」

それで、あの新聞記事に至るってわけか、となんとなくな想像をしながら、

「無理しやがって」

と、またさっき小突いた場所を突けば、微かに傷が残ってるところだと気付いたやつは、あ、と声をあげ、ししし、と笑う。

「まぁいいじゃねぇか。お前が居れば十分だろ」
「俺?」
「デート出来てるしな」
「そっか?金ねぇぞ」
「ある分だけでいいんだよ、そんなもんは」
うん、そうだな」

いつの間にか空いた片手が、石垣についていた俺の手に重なる。
そうして、二人でまた流れる人を見る。
祭りの、風景。
いつもにはない、光景。
その向こう側に聳え立つ、豪華なホテル。
確かに一万じゃ無理だろうな、と思っていたら、麦わらも似たようなことを言い出した。

「でも、ホテルには泊まりたかったんだよなぁ、俺。一万ベリーじゃダメだよなぁ」
「なにそんなに拘ってんだ?」
「だって、トラ男言っただろ?」
「俺?」
「誘うならもっとうまく誘えって。ムードとか雰囲気とか考えろってよ」

あ~確かに言った記憶はあるな。覚えてたのか、こいつ。

「だからよ、サンジに相談したんだ」

黒足屋??

「そしたらよ、知らねぇよそんなもんって怒ったのに今度合流する島にいいところがあるから、そこから花火見ながら押し倒しちまえって」
「はぁ
「って、なんだよー俺これでも結構まじめに!」

って、お前がまじめってな。
そんなに、

「ん?トラ男、顔赤いぞ?酔ったか?」
「馬鹿」
「ん?んん?水でも貰って来ようか?あ、俺のソーダ飲むか?」

ってか、黒足屋には悪いことしたというかまさかこいつがそんなこと相談してるとは思ってもなかった。らしくもねぇなとは思ったんだ。すげぇホテルって、花火って、そこでえっちしようだなんて。成程、そういうわけか。なんだよ、本当に。お前そんなに俺を、

「おーい!ルフィーーー!!!!」

そこに声を掛けてきたなのは、鼻屋とトニー屋だった。手には綿あめ。おーいおーいと手を振りながら、こちらまでくる。その後ろには、ペンギンとシャチ、そして今しがた名前が出た黒足屋の姿もあった。

「おお!ウソップ、チョッパー!いいもん持ってるな!」
「これ、ルフィとトラ男にと思って買って来たんだ」
「俺たちに?」
「すごいだろ!」

と、トニー屋が差し出したのは、トニー屋の姿を象った綿あめだった。

「おおお!チョッパーだ!」
「俺様が借りて作ったんだぜ」
「すっげぇウソップーーー!!!」
「まぁな」

ふふん、と長い鼻をますます伸ばしながら鼻屋が自慢してる。まぁ確かにすげぇなと見ていれば、おいローと黒足屋に手招きされた。

「?」
「いいから、ちょっと」

更に手招きされて、一体なんだ?と麦わら屋から離れ、少し離れた場に居る黒足屋の元に行けば、

「これ」

と、掌に落とされたもの。

「鍵?」
「ああ、あのホテルのキーだ」
「なんでこんなもん」
「ルフィが泊まりたい泊まりたい言ってたからな。ナミさんからの提案だ。恰好良かったからご褒美だってよ」
「褒美?」
「部屋とお前」
「俺もかよ」
「約束してたんだろ。ああ、ちなみにお前んとこのクルーたちも一枚噛んでる」
「は?うちの?」
「お前、わかりにくく楽しみにしてたんだって?」
俺は、別に」
「照れるな照れるな。まぁ野郎同士のことなんて知らねぇが、幸せそうでなによりってことで。頼んだぜ」
「おい、黒足屋」
「もう少しで花火の時間だ。特等席なんてもんじゃねぇよ、その部屋。夜空に咲く大輪の花を二人占めしてきてくれ」

二人占めって、

そんな部屋よく取れたな」
「わがままな天竜人が当日キャンセルしたらしい。ラッキーだな」

って、天竜人が泊まるような部屋をとったのか?
麦わら屋のとこもうちだって、そんな金ねぇだろうに。

悪いな」
「そう思うなら、早くうちの船長も喜ばせてやってくれ」
「ああ」

俺が頷いたのを確認してから黒足屋は、ナミすわぁぁぁぁんロビンちゃぁぁぁぁぁんと何処かへ飛んで行ってしまった。
改めて、掌のものを見る。
てめぇの船長に渡せばいいってのに。
俺に誘えってのか?とは思ったが、でもまぁ偶には、

「トラ男ー!これこれ!」

どうやら鼻屋たちも人波に戻って行ったらしく、一人で麦わら屋がさっきの綿あめ片手に駆け寄ってくるから、手、と告げた。

「手?」

なんだ?と差し出した掌にぽんと落とす。

「鍵?」
「あのホテルのだってよ」
「え?なんで?え??」
「ご褒美って言ってたな。お前、何したんだ?」
「俺、別に何もしてねぇぞ」
そうか?」
「そうだ!でも、嬉しいなぁこれ」
「じゃあ、行こうか?」
「おう!」
「花火も始まるし、……えっち、するんだろ?」
お、」

誘う言葉と共に鍵を握り締めたままの掌を繋げば、俺からの言葉にぽっと頬を赤らめ、うん、と笑って早く行こう!と駆け出すから、きっと、と思う。

きっと、夜の花が咲き終わるまで待てないんだろうな。
お互いに。
まぁ、それも悪くねぇ。
花火を見ながら、ってのもいいかもしれない。
うん、悪くねぇ。


悪くねぇな。



2016.07.29 Ree.MORITA

ほんと、花火よりお祭りメインになってしまってすいませんです