ree_1116
2016-03-26 02:35:47
3426文字
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さよならのかわりに、#02 (ルロー)

初見のお方は閲覧前に『はじめに』( http://privatter.net/p/1293798 )を、一読願います。お世話になっているゆずきさんへの(勝手な)贈り物の続編。ただ恥ずかしいだけのお話し(笑)


「・・・・格好悪ぃ」


戻った、自船。船長室。
そこで、ぼそりと呟いた言葉に思わず笑ってしまった。


「なんだよ」
「いえ、なんでも」


ないです、と言いつつも帽子のツバで顔を隠せば、ますますぶすっとするから、笑いが止まらない。
口を尖らせて、頭からタオルを被ったまま。そっぽを向く。
駄々っ子のように、文句を連ねてるけど。


「助かって良かったじゃないですか。もうあんな無理しないでくださいよ。いくら心臓があっても持たないですから」
「・・・・麦わら屋にあんなこと言うんじゃなかった」


俺の声と重なるように落とされたのは、そんな言葉で。


「麦わらになんて言ったんですか」
「知らね」


問い掛ければ、頬まで膨らんでて。
いいじゃないですか。格好悪くたってなんだって。






今にも雨が降り出しそうな、曇天の中。
きっともうすぐ嵐になると、電伝虫を使って沖合いに居る奴らを呼び寄せたのは、少し前のことだった。
あちこちから粉塵があがってる。未だ繰り広げられている戦闘の最中。状況を見つつ、一人を探していた。結論を下してもらうため、だ。


「あ、」


駆け回ること、数分。
その人は、一人、突っ立っていた。
既に、荒れ狂っている海を横目に、一番でかい音のする方へと体を向け。


「キャプテン」
「・・・ペンギンか。潮時だ、引くぞ」
「了解です」
「お前は伝令に向かえ。麦わら屋の船で待ち合わせの場所へと行く」
「はい」


俺も人のことは言えないが、目の前の人も相当な怪我を負っていた。
取り敢えず、この場で出来る治療をと思ったが、掌ひとつ翳すことで封じられる。


「引くのが先決だ。行け」


即され、頷こうとしたその時、だった。
一際でかい音がしたと思ったら、空を何かが舞った。
何かって、


「麦わら?」


真っ黒い中を、海の方角へと向かって飛んでいく。
拙い、と救出に向かう為、走り出そうとしたが、


「お前は伝令だ。俺が行く」
「行くって、」
「後のことは任せた」


どう見ても、ギリギリのところまで体力を消耗しきっている人は、無理矢理能力を展開させ、あっという間に消え去ってしまう。


「クソっ」


薄く広がった先、その端で船長が麦わらを受け止めるのは見えたが、その後は一直線に落ちて、


「無理心中でもするつもりですかっ」


麦わらを捕らえることが出来てもあの状態からどうやって、


「クソ、クソ」


余り動かなくなっている体を奮い立たせ、二人が落ちてしまった崖の方へと向かう道すがら、出会ったやつらに伝令を頼む。引け、と叫びながらも、走って走って走った、先。ロビンさんが手を崖に向けて下ろしている様が見えた。あの下に居るのかと、近付こうと思ったが、彼女が立っている場所もひびが入っているのが伺える。これ以上体重をかけるわけには、と懐から取り出したのは、電伝虫だった。さっき連絡を入れていた奴らへともう一度、緊急で用件を伝える為に。万が一、を考えてのことだった。繋げた先は、もうかなりこちらへと近付いてきているようで、先刻よりも声が鮮明に聞こえた。だから、もしかすると船長たちが海に落ちるかもしれないと告げ急ぎ潜水しこちらへと、場所を指示した。用件のみの言葉だったが、ジャンバールは違えることなく、理解してくれてて。なんでも、落ちてきた船長をあの波の中、浮かべた潜水艦の上で受け止めてくれたらしい。


その報告を受けたのは、麦わらの船に乗る直前。
同盟相手に告げてないのにはちゃんと訳があって、






「まぁでもこれで、麦わらも少しは自重してくれるんじゃないですかね」
「は?」
「なんでもかんでも行き当たりばったりで。この先だって、ずっとそんなんじゃ困りますからね」
「・・・って、ペンギン。お前な、」
「今回のことだって、そうでしょう。もっと戦力をって話しをしたはずだってのに、どうにかなるで動かれたんじゃ、たまったもんじゃない」
「今回の件は俺も了承して動いた。だから」


まぁ、そうなんですけどね。でも、最初は駄目だと言ってたでしょ、あんた。なのに、なんだろうなぁ。確かに麦わらの言葉には、強さがある。いけるんじゃないかと思わせるような、何かがあることは俺もちゃんと知ってますけどね。


「この先は、運や奇跡に頼っちゃ駄目でしょう」
「・・・・わかってる」


開かれた扉の向こう。皆が皆、動き回っている。中にはひどい怪我を負ったやつだって居て。
失う怖さを知ってるからこそ、今回のことは船長も身に沁みてることだってちゃんとわかってるんですよ。でも、今後のことを思えば、ある意味、この結果はよかったとも思ってる。特に麦わらにとっては、


「それじゃ、俺は麦わらたちに船長の無事を伝えに」
「それはちょっと待て」
「はい?」
「もう少し、」


どんな顔すればいいのかわかんねぇと言うから、心の準備が出来るまで待とうと思ったけど、


「あーーーーーー!!!!」


突然の大きな、声。
え?と振り返れば、扉口に立っていたのは麦わらんとこの船医で。


「トニー屋?」
「とっとっとっトラ男~」


どもりながらぶわっと涙を浮かべたと思ったら、ルフィーーーー!!と一気に駆け出して行ってしまった。


「ああ、見つかっちゃいましたね」
「お前な」


はぁと溜息を零して、立ち上がろうとするから、どうしたんですか?と問えば、隠れると言う。


「隠れるって何処に?」
「何処でもいい。まだ、会いたくねぇ」
「って、あんたね」


全く、と肩を上げれば、真横からにゅっと何かが伸びてきた。って、・・・これ、


「ぐっ!」


立ち上がり掛けた船長が、変な声をあげたと思った瞬間、


「トラ男ーーーーーー!!!!!」


と、伸びた手の主が飛び付いた。


「っ、麦わら屋っ!?」
「トラ男っトラ男っ!!」


ぎゅうぎゅう抱き付いて、名前呼び合ってる。


「良かったぁ」


いつの間に戻ってきたのか小さな船医が横に居て、


「サンジがローが生きてたお祝い宴やるってはりきってたぞ」
「そうか」


トラ男トラ男、と目の前でぐりぐりされてる船長に、向こうさんにも愛されてますよねと思いつつ、並んだ小さな体をひょいと抱き上げ、踵を返す。


「ん?なんだ?ペンギン?」
「お邪魔になっちゃうからな」


トラ男トラ男、と繋がっているだけだった言葉は、いつの間にか、もう離さないからなとか勝手なことすんなとか俺もっと強くなるからとか、終いにはずっと一緒に居ろとか、更には結婚しようとまで連なってて、


パタン、とドアを閉める手前の隙間から見えた最後の風景は、完全に押し倒されている姿だった。


「あ~あ、このまま結婚かな」
「え?ルフィとロー、結婚すんのか?」
「多分、押し切られるんじゃないかな、あの様子だと」
「おおおおお、すごいな。じゃあ、これからもずっと一緒だな」
「嬉しいのか?」
「嬉しいぞ!あ、みんなに伝えないと!!」
「ははは、そうだな。それじゃうちのコックにも宴の準備してもらわないとな」


おう、とそれはもう嬉しそうに自分の船へと戻っていく小さな背を見送りながら、食堂に入れば、変な顔で見られた。


「なんだよ、シャチ」
「いやぁなんかニコニコしてるからよ」
「・・・船長、結婚するみたいだ」
「え?マジか!」


そりゃめでてぇなとシャチがでかい声出すから、わらわらと皆が集まってきて、祝杯だ宴だと騒ぎ出す。結婚式か?とコックが言い出し、ケーキ焼くかと腕まくりする始末。まだ決定じゃないんだけどなと思いながらも、既に飾り付けまで始まってるし、くす玉までもう吊るしてるし。


「全く、」


まぁ、でも多分そういうことになるんだろう。


「なんだかんだでラブラブだよな」


あの二人、と隣りで笑うシャチに、そうだなと頷き、ペンを取り出す。


「ん?なにすんだ?」
「一応な、印」


壁に掛かった、カレンダー。
キュッと、花丸を付けた先は、三月の二十五日。



「結婚記念日だ」




2016.03.26 Ree.MORITA


ただただ恥ずかしいだけのお話しになっちゃいました
大変失礼しましたっっ!!!(逃)