rei0103
2015-04-15 03:15:41
1232文字
Public
 

真夜中は脆弱


 このごろわたしはすこし滅入っている。
 というのも、滅多にメールすら寄越さない恋人がなんと思いがけず珍しく、奇跡的に自分からいついつ会えるか、と連絡をしてきた。それだけなら嬉しさのあまり天にも昇るような気持ちなのだが、あいにく指定された日はこちらの都合が悪かった。
 それを伝えると信じられないことに別の日を提案してきた。まさに奇跡と呼ぶに相応しい。そもそもメールを連続して三通やりとりするというのがすでに奇跡と呼べなくもない。しかもいつもならば私が恋人の家を訪ねるのだけれど、今回は恋人がわたしの家に来ると言うではないか。ここ一年そんなイベントがあっただろうか。いや、ない。
 かくして週の頭からずっと恋人と過ごせる週末を楽しみにしてすごしていた。それはもう、通常の三倍のスピードで仕事をこなす勢いで。恋の力は偉大である。
 しかし水曜日頃から雲行きが怪しくなってきて、木曜日には炎上した。つまり、仕事が。家に帰れないほどではないものの、どうやっても残業は免れない。なんとしてでも週末を守り抜きたい一心で頑張ってみたが、圧倒的仕事量の前に努力は華と散って金曜日の今日。非常に、心から、甚だ不本意なのだけれどもわたしは昼過ぎに恋人へメールを一通送ることになった。今日は会えなさそうですごめんね。
 深夜一時のいまになっても返事はない。返事はないが、恋人が返事をよこさないときは九割の確率で了解しましたという意味なのであまり気にしていない。
 金曜日の夜に会うということは、つまり土曜日を一緒に過ごすということに他ならない。だから無理ではないはずだった。ただ、帰りが遅くなるだけで土曜日にゆっくり過ごせばいいだけの話だ。本来なら。しかし今回はそうもいかない。一筋縄では太刀打ちの出来ない魔物がいるのだ。
 炎上したプロジェクトの金曜日には魔物が棲んでいる。
 その名前を、休日出勤といった。

 
 重く深くため息を一つ落として、わたしは自宅のドアを開ける。会えなかったな、とすこし悲しくなった。最後に会ったのはひと月前で、次はいつ会えるだろう。殺人的に忙しい恋人が都合良く土日祝日にスケジュールを空けることができるのは。来週か、再来週か、来月か。あるいはもっと先か。
 なかなか会えない恋人はふたつ先の駅に住んでいる。だから会おうと思えばいつだって、例えば明日にでも、会いに行くことができる。一瞬だけ顔が見れたらそれでいい、と何度そうしようと思ったか知れない。
 だけど、しない。一瞬だけ顔を見て帰るなんてなんだか余計に寂しくなりそうだったし、恋人の仕事を邪魔したくなかった。それにわたしが会いたいからといって恋人もわたしと会いたいとは限らない。ああ、でも、ほんと、顔を見るだけでもいいから会いたい。今日は特に。
……え」
 ぱちんと玄関の灯をつけたら、コンクリートのたたきに一足のスニーカーがあった。もちろん、わたしのものではない。
「ミク……?」