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らい
2022-08-12 21:16:43
8094文字
Public
レオいず
本日のマラソン⑦「ペットのしつけ~Lesson 30~」
お題「禁欲」レオいず ※下品注意(18禁に相当する直接的な描写はありません)
「一生エッチしてやんない!」
フィレンツェの朝に似つかわしくない、吐き出すような怒号が響き渡る。パジャマ姿の泉がキスマークの証拠をつきつけると、作曲に明け暮れていたレオはすぐさま困り眉になった。五線譜がつづられた紙を「なんでだよ~っ!」と放り投げ、幼児のごとく駄々をこねはじめるものだから、泉のこめかみに血管が浮きあがる。
「俺はもう決めたからねえ!」
「やだったら、やだ~っ!」
泉の怒りをよそに、レオは両脚をじったんばったん動かしながら、天井をめがけてグーの拳で抗議する。十九歳にもなって、床に転がるやつがあるか。レオが散りばめた楽譜の雨に打たれながら、泉は口角をひくひくと痙攣させた。
そもそも、悪いのは誰だ。腰が立たなくなるほど抱き潰し、全身にくまなく所有印を残したほうが悪いのではないのか。首筋、鎖骨、胸のくぼみ、太ももの裏。まるで嵐が去ったあとの爪痕のようだ。数えだすとキリがない。
近々グラビアの撮影を控えているというのに、今回ばかりは許せなかった。たとえ作曲のカンヅメ明けで、性欲を持て余していたとしてもだ。それに付き合いはじめのころ、『絶対にキスマークを残さないこと』と約束したはずだ。セックスの最中も、あれだけ嫌だといったのに。見える位置に跡をつけるなんて、信じられない。
事の重大さを理解していないレオは、クッションを抱き締めながらくちびるを尖らせる。母性本能をくすぐる愛らしいまなざしが泉を射抜いたが、これはあくまでも昼の顔。ベッドの上では獰猛な獣になって、泉が「もうだめ」と果てるまで食らい尽くすのだ。絶対に、なにがなんでも騙されてなるものか。泉は美しい眉をきりっと吊り上げて、レオにびしっと指を差す。
「とにかく!あんたの激しいエッチには、もうこりごり!」
「ええ~?セナだって、『れおくん、来て
……
』ってノリノリだったくせに~
……
」
「そりゃあ、俺もご無沙汰だったから
……
って、それはそれ!これはこれでしょ~!?」
「じゃあ、おれは『あれ』!」
「それもこれもあれも一緒!」
「ど
……
」
「『どれ』もダメ!こそあど全般ダメ!抜け道を探そうとするな!」
「う~っ!理不尽いじわる大魔王~っ!妖怪棚おき月下美人~っ!」
「うるさ~い!とにもかくにも無期限エッチ禁止!」
「なんでだよ~っ!
……
いや嘘、おれが悪かった!作曲でハイになっちゃって、セナのことがだぁい好きな気持ちが、温泉みたいにド~ンとあふれちゃったせい!本当にごめんなさい!
……
セナぁ~、本当にごめんってば
……
。おれが悪かった!だから、許して~
……
」
「
……
うっ」
「セナぁ~
……
ぐすん」
舌ったらずの甘え声に、一瞬ほだされそうになる。だが、泉は心を鬼にした。頼りなげに「セナぁ~
……
」と訴えてくるレオを遮断するようにドアを閉じると、さっさとベッドに寝転んだ。
約束を守れないペットは、しつけする必要がある。せっかくだから、飼い主の『待て』にどこまで従えるのか、実験してやろう。はち切れんばかりの股間を押さえながら、せいぜい反省するといい───生意気な人間をとことんいびるのが好きな泉は、ふふんと鼻を鳴らしながら眠りについた。
ところが泉のしつけ計画は、大いなる誤算に苦しむことになる。
まずは、禁止令三日目。齢十九にして地団駄を踏むような男だから、てっきり七十二時間で根を上げると予想していたのに。雑誌を読んでいる泉をちらりと見やって「むらむら
……
」と独り言をこぼすことはあれど、「セナぁ~
……
」と直訴することはなかった。すこしばかり意外だったけれど、この時点では泉も楽しんでいた。いつまで持つかねえ。我慢してるれおくん、チョ~おもしろい♪───ページの隙間から観察するぐらいには、ゆとりがあった。
次に、禁止令七日目。あれだけ駄々をこねていた男が、なんと一週間も耐え抜いた。台所に立っている泉の背後から「いいにおい♪」と抱きつきこそすれど、エプロンの下に指を忍ばせることなく離れていく。レオの陽だまりのような子どものにおいに、逆に泉が反応してしまう始末だったが、それでも泉にはまだ余裕があった。ふぅん、約束を守るじゃん。従順なペットとして、しつけたかいがあったよねえ───人知れず、したり顔にひたることができたのだ。
だが、泉の涼しげな表情は、徐々に崩れ落ちていくはめになる。禁止令十四日目、二十一目。刻々と時が流れても、レオは一向に誘ってこないのだ。
泉は、だんだん心配になってきた。もしかすると、愛想を尽かされてしまったのではないかと考えた。とくに最近の朝はなぜだか不機嫌で、仏頂面のまま起きてくることが多い。おはようと挨拶をしても、さっさと洗面所にひきこもってしまう。
まさか、俺以外の奴で満たしてるの?そうなの?───レオの部屋に掃除に入ったとき、ゴミ箱に大量のティッシュが捨ててあった。性欲処理をしている様子はこっそり観測できるのだけれど、その対象が誰なのかは判然としないのだ。泉はたまらずスマートフォンで『セックス 誘われない なぜ』と検索したが、似たような悩みを抱えた質問者に対する「あなたではもう興奮しないのでは?他の女性と浮気しているのかもしれません」というベストアンサーが山ほど出てくる。
俺以外に勃起するなんて、いい度胸だよねえ!───頭に血が昇ったものの、ほんとうに嫌気が差したのかと不安になった。「あいつ、彼女とかセックスフレンドとかできたのかな?」と周囲に聞き込みをしたが、女の影はなし。仲良しの凛月に聞いたら「月ぴ~はセッちゃんと結婚してるんだから、不倫はないでしょ」といじられ、斑に尋ねても「レオさんがその気なら、海外のナイスバディ
―
を紹介してやるがなあ」と豪快に笑うだけ。
泉だって、年ごろの男だ。エッチ禁止令を高らかに宣言したのは泉本人であるのに、四週間を過ぎたころには、すっかり我慢できなくなっていた。まさか本当にいいつけを守って、一ヶ月も放置されるとは思うまい。正直なところ、久しぶりにセックスがしたかった。
禁止令三十日目。条令破棄の決意を固めた泉は、いよいよレオに夜這いを仕掛けることにした。翌日はふたりともオフだし、セックスを解禁するにも絶好のチャンスなのだ。
泉はごくりと喉を鳴らして、レオの部屋をノックする。ややあって、「いいよー」とのんきな返事が響き渡った。
「は
……
入るよぉ」
初夜でもないのに、緊張してしまう。泉は、どくりと脈を打つ胸を抑えながら、ゆっくりとドアを開けた。レオはベッドにあぐらをかいて、一冊のノートに作曲している。
(いや
……
これ、エッチに持ち込める空気じゃなくない
……
?)
レオは上機嫌に鼻歌を奏でながら、左右にるんるんと身体を揺らしていた。画用紙にクレヨンで絵を描く幼児のような無邪気さを放つものだから、泉はいきなり尻ごみしてしまう。しかし、こんなに幼く愛らしいレオも、夜になれば雄の性愛を一心不乱にぶつけてくるのだ。記憶のなかで熱を帯びるふたりの蜜事が、待ち遠しくて仕方ない。泉は、意を決してベッドに乗り込んだ。
「れおくん。あのさあ」
「ん~?」
「俺に
……
なんか言うことないわけ?」
プライドの高さが邪魔をしているのはもちろんだが、一ヶ月前にエッチ禁止を命じたのは泉本人である。「れおくんとセックスしたい」なんて直球で誘えるはずがない。どうにか向こうから「セナとエッチがしたい!」と切り出してもらうべく、遠回しに攻めることにした。
なにせ三十日間も我慢させているのだ。発令当日に「やだ~っ!」と駄々をこねていた十九歳のことだから、「そんなに見つめられたら、むらむらする
……
」と欲情するに違いない。都合のよい算段とともに、泉はぐいっと身を乗り出した。
「セナに
……
言うこと
……
」
レオは、ボタンをふたつ外したパジャマの隙間を見下ろしている。かかった!───泉は釣り人のごとくパッと顔を綻ばせたが、レオは右手のパーに、左手のグーを振り下ろした。ポン!と軽快な音が鳴り響く。
「
……
あっ。ポッドのお湯、ちょっとしか残ってないのに入れ替えるの忘れてた!」
「はあ~!?何度も言ってるよねえ?ついでに玄関の靴も脱いだら脱ぎっぱなし!玄関が美しくないと、気が悪いでしょ~!?せめて端っこに揃えるとか
……
って、そうじゃない。ムカつくけど、そうじゃなぁい!」
ぽかんと口を開けるレオの肩を揺さぶって、泉はくちびるを噛みしめる。どうやったら察してもらえるだろう。脳をまるごと支配する焦燥と戦いながら、泉は必死に考えた。しかし、いくら思考を働かせたところで、誘い文句が見つからない。なにせ自らベッドに招き寄せた回数は、片手で足りるほどしかなかった。風邪の看病をしてくれたから、お礼に一回。音楽祭で賞を総なめしたので、ご褒美に一回。たいていはレオに押し倒されて、「ちょっとだけだからねえ」なんて悪態をつきながら致すことがほとんどだ。平時の流れがわからず、泉は冷や汗をかいてしまう。
そうこうしてるうちに、レオが不服そうにくちびるを曲げた。
「ポッドの水は足しておくし、靴も散らかさないようにちゃんと気をつける。本当にすまん。
……
でも、今はちょっと作曲させて!おれの音符たちが、可憐なお姫さまたちの舞踏会に向かってる!赤い靴をはいたインスピレーションが、魅惑のワルツをくるくると踊りはじめたところだから!」
ふたたび曲作りに専念しようとするレオに、泉は狼狽した。天才作曲家は一度スイッチが入ったら、なかなか現世に帰ってこないのだ。ペンを握り締めるレオの手首をつかんで、泉は「ストップ!」と叫ぶ。
「ちょっ
……
ちょっと待って!ダンスパーティーの前にまずは俺の顔を見て!その
……
ほらっ、想像力を働かせてっ!俺になにか思うことがあるんじゃない!?」
「う~ん
……
やっぱりセナはお月さんみたいにきれい♪」
「ふふん、当たり前でしょ
……
って、そうじゃないってば。もっと近くに寄ってっ、俺を見て!ほらほらっ、億の顔にピンとこない?」
「ピンと
……
?おまえ、指名手配犯にでもなったのか?スオ~のお菓子没収罪?後輩のミドリいびり罪?いや美しすぎて数多の男を惑わす罪か!被害者多数!この極悪犯め~っ、わはは!最後のは正直あんまり笑えないけど!」
「ああ~っ、もう!ピンときたら110番じゃなくってさぁ!違うでしょ、秘境の温泉みたいにブワッと湧き上がるもの、あるでしょ~!?」
「あるあるっ!いい湯だなっ、ビバノンノン♪お風呂は百を数えるまで浸かってっ、いち、に~っ、さんっ
……
あぁ~っ舞い降りてきた~っ!おれのステージを豪華絢爛に彩る、美の旋律たちが
……
!」
「そうじゃなくってぇ~!」
泉の交渉もむなしく、レオは身を屈めて作曲を再開してしまう。これでは色っぽいムードに持ち込むどころではない。セックスを待ち詫びている男と、曲づくりに明け暮れている男のすれ違い。仏壇のリンがチーンと鳴る幻聴が聞こえるほどに、悲惨な結末を迎えつつあった。
俺は、なんだってこんな奴に抱かれてきたんだろう
……
。
泉は、ふいに幻滅しそうになる。だが、体内への侵入をさんざん許してきた男を目の前にして、夜の営みを思い返さずにはいられない。「おまえは、おれにどうされたい?」「おれは、おまえとひとつになりたい」「なあ、おれの形を覚えて」「おれだけを見て」「大好きだ、愛してるよ」「セナ」───低い声で囁かれたら、なにもかも許してしまう。認めるのは悔しいが、それほどに好きなのだ。
「ああっ、もう!れおくんのわからず屋!」
こうなったら騎乗位を畳みかけて、実力行使に出るしかない。強制執行の意思を固めた泉は、美しく整った眉をきつく吊りあげた。
「俺のペットなんだから、飼い主の求めてることぐらい察してよねえ!」
泉は声を荒げて、レオの肩を引き倒そうとする。ところが、レオはとつぜん姿勢を変えた。急にインスピレーションを受信したのだろう。楽譜を天井に向けながら、「これだっ、これ~!」と仰向けになったのだ。
「ちょっ
……
うわっ!?」
「え?わわっ
……
わ~っ!」
行き場のない両手をすかして、バランスを崩してしまう。泉は、レオの下半身に折り重なるようにして倒れこんだ。
むぎゅっと柔らかな音が響き渡る。泉は、美しく伸びた指先で、レオの股間をわしづかみにしていた。
ふたりのあいだに沈黙が流れること数秒。五線譜が綴られたノート、愛用のペンをぽとっと落としたレオは、天井に掲げた腕を静かに下ろす。そうして寝そべったまま腕を組むと、粉雪に吹かれる地蔵のような渋い顔をした。
「なにしてんだ、おまえ
……
」
呆れ半分、恥じらい半分の怪訝なまなざしが、泉に直撃する。
ふにふにと、それでいて今にも固くなりそうな下腹部の膨らみが伝うてのひら。そして眼下に組み敷いているレオを交互に見つめながら、泉はぼんやりと状況を整理する。先月まで、泉の肉壁に埋まっていたそれ。幾度も繰り返してきた熱い夜の記憶がよぎる。泉は頬をかぁっと紅潮させながら、レオの胸倉をつかんだ。
「わ、わざとじゃないし!ていうか仕方ないでしょ~!?」
「でたぞ、でたでた!お得意の開き直り!セナのお家芸!」
「伝統みたいに言うな!
……
れおくんが、俺の意図を察してくれないのが悪い!」
「ええ~
……
?」
どうしておれが怒られなきゃいけないんだ。この期に及んで、そんな顔をしている。げんなりと首を傾げる姿に苛立った泉は、半ばやけくそにレオの腰にまたがった。
「無期限エッチ禁止令を出したのは、俺だけどさあ!そろそろしてもいいよって解禁オーラ出してんだから、とっとと気づきなよねえ!」
パーカーの首元を揺さぶりながら悪態をつくと、レオは眉をゆがめた。翡翠の瞳に含まれる無垢の色が、いびつに揺らぐ。レオの肩をゆさゆさと動かしているうちに、パジャマ越しの尻がこすれて、図らずも上下運動になってしまったのだ。これではまるで、交尾したくてたまらない野生動物のようではないか。羞恥心に耐えられなくなった泉はくちびるを引き結び、レオの上半身からさっさと退こうとする。
ところが、泉の視界はくるりと半回転した。柔らかなシーツに肩がぽふんと着地して、黄昏色のしっぽが飛びこんでくる。鋭くとがった眼差しに射抜かれながら、レオに押し倒されていた。
「れ、れおくん
……
?」
「だってセナ。なかなか『もういいよ』って言ってくれないから」
おおきく開かれた両脚のあいだに、レオが割り込んでくる。森の演奏会に登壇する可愛らしい小動物は、狙った獲物は逃さないとばかりに牙を剥くライオンに食べられてしまったらしい。ずっと待ちわびていた甘い夜の導入に、泉は花のような笑みを咲かせそうになる。しかし、セックスに期待していると悟られたくなかった。性にだらしない男だと思われたくなくて、泉はふん、と苦しまぎれに鼻を鳴らす。
「あ
……
あんたはペットなんだから。飼い主の気持ちぐらい、ちゃんと理解しなくっちゃダメでしょお
……
」
「無茶いうなよ。
……
強引に抱いて、セナに嫌われたくないし」
月色の髪をそっと撫でながら、レオはまっすぐに泉を見つめる。嘘偽りのない真剣なまなざしに、泉はひそかに安堵した。
もしかすると、他の女性に心変わりしたのかもしれない。かねてから抱いていた疑惑のかたまりが、粉々に砕け散っていく。一ヶ月間の禁欲を強いられたことで、泉に興味を失ったわけではない。むしろ、レオなりに我慢していたのだ。
「おれは、作曲一辺倒って評価されがちだけど。おれだって、れっきとした男だし
……
えっち禁止令を出されて、ほんとうに大変だった。突然むらっとしたとき、セナを見ないようにするのに必死だったんだぞ。一週間めの時点であまりにも辛いから、台所に立ってるセナをぎゅっと抱き締めて、むりやり栄養補給したこともあったけど。でも、逆効果だった。一晩中セナのエロい夢を見て、朝ぱんつが大変なことになって
……
」
ここ最近、みょうに不機嫌に起きてくるレオを思い返す。点と点が線になって、泉はなるほど、と納得した。
「しょっちゅう洗面所にこもってたのは、夢精しちゃってパンツを洗ってたから
……
ってこと?」
「わ
……
わざわざ言葉にすんな~っ!なんでもない一日を過ごした翌朝、大切に育ててきた息子が未曽有の大事件に巻き込まれていた
……
そんな父親の痛み・苦しみ・切なさの三重奏が、おまえに聞こえるか~っ!?情けなくって、おれの音符たちも『つの』が折れたまっくろくろすけになって、一目散に逃げていく~
……
」
下半身事情をいじられると、無性に恥ずかしくなるらしい。両手いっぱいに顔を覆いながら、レオが首をぶんぶんと振った。
五線譜に跳ねる音符たちがただの黒い球体になって、レオの頭上から逃亡する。そんな姿を想像して、泉はふふっと笑いを押し殺した。
「え?
……
ふふ、なんかごめん」
泉が詫びると、レオは十本指のすきまからこっそり泉をのぞいた。
「
……
でも、おれが悪いんだ。大量の跡をつけちゃったから。
……
だって、部屋にこもって作曲ばっかりしてたら、セナが恋しくて愛おしくて、仕方なくなっちゃった。急に、ひとりじめしたくなった。明日のぶん、明後日のぶん。それどころか来月、来年、来世のぶんまで、たっくさん予約しておこう♪って気分になっちゃって
……
」
「予約って、あのさあ。俺は売り切れ必至の通販製品じゃないんだけどぉ?
……
まっ、それぐらい愛してくれないと、飼い主としても納得いかないけどねえ」
「うん。おれはセナのことがだぁい好き。だから、『一生エッチしてやんない』とか言わないで~
……
うう~、セナぁ~
……
ごめん
……
」
愛嬌のある八重歯をのぞかせて、レオがしょんぼりと眉を下げる。メスに威嚇されてうなだれる、威厳の失われたオスライオンのようだった。
愛されていることが嬉しくて、嫌われるのを恐れているのがいじらしくて───泉の心臓に、きゅうんと甘い弦が跳ねる。
「まぁ
……
厳しいしつけを施したあとは、ご褒美をあげなくっちゃね」
泉は不敵に笑って、レオの唇に人差し指を押し当てた。一見するとさくらんぼが似合う、可愛らしいくちびる。それでいて、身体のあちこちに電流を浴びせるような、ねっとりとした愛を囁いてくる肉食動物に、『待て』を命じる。
「しっかりと反省してるなら、許してやってもいいけど?」
「ほんと!?」
「こぉら。まだダメ」
髪のしっぽをぴょこんと揺らすレオを制止して、泉は問いかけた。
「そのかわり!あちこちに跡をつけない・無茶しない!れおくん、約束できる?」
「うん
……
がんばる」
「だったら、いいよ。
……
『待て』は、今日でおしまい」
禁止令の撤廃は、キスの押印で決まり。レオの首筋に両手を回すと、泉は柔らかなくちびるにちゅっと口づけた。触れるだけのキスを皮切りに、レオはいきなり歯列のすきまから舌をねじ込んでくる。口内を深々と荒らされそうになった泉は、とっさにレオを押し返した。
最初からこの勢いはまずい。挿入する前から、快楽に導かれてしまう。恍惚としながら危惧する泉をよそに、レオは熱っぽい息を吐く。そうして、くちびるの端に垂れたよだれを拭うと、泉の耳たぶを甘噛みした。
「一ヶ月分の『だぁいすき』、全部ぶつけてもいい?」
低い声で囁かれたら、うなずくしかない。泉は、後頭部の結び目から夕焼け色のしっぽをほどく。ざっくばらんな髪がばらけたのを合図に、レオは「愛してるよ」とつぶやいて、泉にがっつくのだった。
ちなみに一ヶ月前と同様、泣いて懇願するまで抱き潰されたのはいうまでもない。
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