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らい
2020-09-27 21:12:26
1849文字
Public
レオいず
今日のレオいず♀⑬「ザ・ノンフィクション」
お題「ドラマ」※泉女体化(性転換、呼称改変注意)
『すき』
『えっ?』
「き
……
聞いとら~~~ん!」
「はあ?」
レオは、液晶画面のなかで繰り広げられているキスシーンに、唇をわなわなと震わせた。駅の改札を通る男をまちぶせして、首筋にすがりつき、無邪気にくちづけをする女。よくあるドラマの展開なのだが、よりにもよってこの女を、泉が演じているのである。
抱きしめていたクッションを膝に置き、コーラを飲み干すと、レオはうらめしそうに画面を見やった。男に想いを寄せていたヒロインが看板の後ろに隠れ、Knightsの主題歌とともに、エンディングロールが流れはじめる。
毎週月曜日、夜九時からの恋愛ドラマ。泉がサブヒロインとして出演するというから、レオは楽しみにしていたのだ。ヒロインの片思いを邪魔する役どころと聞いていたので、悪役なんてセナにぴったりだ~だの、意地悪だけど美しくて芯のある女は大好きだ~だの、そんなことで、のんきに盛り上がっていたころが懐かしい。まさか第一話から男にぐいぐい迫るどころか、がっつりとキスをするとは思わなかった。
「ええ
……
。あれほど言ったじゃん、恋愛ドラマだって
………
」
「そういうことじゃないんだよなあ~!
……
って、ああ~っ!」
次回予告。泉の演じる女が、「ねえ。あのときのキスの意味
…
わかるでしょ?」と男の背中に抱きついている。レオは鯉のようにぱくぱく唇を動かしながら、グラスを手に取る。とっくの昔にコーラはなくなっていて、恥ずかしげにトン、と戻した。
「いや、意味がわからん!急にキスすんな!なんでだよ!?主人公の女の子も、突然のことで傷ついちゃっただろ~!?」
「あのねえ。私が演じる女の子は、男のこと高校時代から知ってるのぉ。強気な性格が災いして、突っぱねちゃうこともあるけど
…
。それでも、一途に想い続けてきたってわけ。まるで、ゆうくんを想う健気な私だよねえ
…
♪」
「こら~っ、登場人物を増やして事態をややこしくするな~っ!」
この後、fine天祥院英智登場!優雅なテロップとともに、トーク番組のCMが流れる。大御所タレントと紅茶を飲みかわす英智に、レオはぎりりと歯ぎしりした。おれの苦悩もしらないで!
「?
……
とにかく、仕方ないでしょお。これは『仕事』なんだし、キスしようが何しようが、私の勝手じゃん。子どもじゃないんだから、ワーワー言わないの」
「ぐぬぬ
……
」
「あんたがなにを心配してるのか、知らないけどさぁ。男役の俳優の子は、少なくともいい子だしぃ?」
「いいこ
……
」
「そ。年下の男の子なんだけど、『瀬名さんとのキスシーン、緊張しますけど、頑張ります』って一生懸命にさぁ
……
」
「なんだと!?」
「デビュー間もないのに月9出演とか、事務所のゴリ押しじゃん~って思ってたけど
……
。ふふ、本人もそう思われたくないからって、死に物狂いで努力してるみたい。弟みたいで、守ってあげたくなっちゃうよねえ」
「くあぁっ、セナのニブチン~っ!」
相変わらずの鈍感ぶりである。「素直じゃないってこと、わかってよねえ」と理解を求めるくせに、「基本的には許すけど、おれ以外の男と過剰に接するな」というこちら側の要求は、ちっとも叶えてくれないのだ。というよりも、本人には決してそのつもりはないのだろう。男とのキスシーンだって、きっと『過剰』の範疇に入っていないのだろう。せめて一言くれたら、心の準備ができたのに。
レオはソファーに横になり、柔らかいクッションに顔を埋めた。あっけらかんとしている泉にもむかむかするが、もっとも嫌なのは、嫉妬の炎を燃やしつづける自分自身の、みにくさだった。
「れ~おくん」
「やだ」
「なにが『やだ』よ。ねえ、顔あげて」
「やだ」
「れおくん」
「やだ!」
「れおくん!」
悲しいことに、レオは世界で一番、「れおくん」によわいのだ。障子の向こうにいる鶴をのぞくように、真っ暗なクッションの視界から、ゆっくりと視線をもどす。
目と鼻の先に、蒼の瞳がきらめいた。ちゅ、と音が鳴り、やわらかな感触が伝う。泉から、キスされていた。
「あれは、ドラマの話でしょお?」
寝そべっているレオの腰に、泉はすこしだけ赤らんだ頬をすりよせた。
「実際にこういうことするのは、れおくんだけなんだからねえ」
部屋着越しに胸のふくらみを押しつけて、泉は楽しげに笑ってみせる。レオのほっぺたはたちまち熱くなって、ぷしゅっと蒸発しそうになった。
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