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らい
2020-09-22 21:13:52
1965文字
Public
レオいず
今日のレオいず♀⑧「たまにはお姫さま」
お題「虫」※泉女体化(性転換、呼称改変注意)
オレンジ色のかたまりが、ベッドの上でひれ伏している。
夕食のナポリタンを作り終えた泉は、エプロンを外してレオのそばに歩み寄った。着ていたはずのジャケットは脱ぎっぱなしで裏返り、上品な材質のショルダーバッグも、床に放り投げられている。「ちゃんと片付けてよねえ」と注意しても、「あ~」とか「う~」とか、意味をなさない呻き声ばかりが聞こえてくる。仕事から帰ってきたレオは、ずっとこの調子であった。
もちろん、だんご虫状態になってしまった経緯としては、それなりの事情がある。
先日、レオはひとつの仕事を請け負った。得意分野の作曲ではなく、スーツブランドのイメージモデルを務めることになったのだ。新作発表会に登場したレオは、本人いわく「きゅうくつ」なスーツに袖を通し、黙っていれば品のある顔でしっかりと仕事をこなした。
問題はその後。本日、ネットニュースに掲載された写真。高身長の本職モデル二人に挟まれたレオは、心ない人間たちに「公開処刑」と揶揄されたのである。
女子の平均身長と並べば、169cmはそれなりに見上げる身長といえよう。しかしながら、180cm以上がごまんといる男性モデルと肩を並べては、どうしても比較されてしまうものだ。泉だって、匿名掲示板にしょっちゅう書き込まれる。海外志向のくせにチビだとか、所詮はアイドル出身の女だとか。まったく傷つかないといえば嘘になるが、それでも、悪意を受け流す方法はある程度、心得ている。
だが、レオは違うのだ。男の自尊心を傷つけられると、たまに不貞腐れてしまうときがあった。
「れ~おくん。ご飯、できたんだけどぉ?」
「うん
……
ありがとうセナぁ
………
」
「今日は、ウィンナーをたっぷり入れといた。目玉焼きも乗せてある」
「プリン
……
」
「食べたい!食べたい!ってうるさいから、作ってやったけど?」
「よぉし
……
食うかぁ
……
」
のそり、のそりと起き上がり、レオがベッドから這いずっていく。まるで、オアシスのない干ばつ地帯に追いやられたワニのようだった。無理やり調子を出そうとしているのか、足元がおぼつかない。髪のしっぽは、炒めすぎたキノコよろしく、しなっている。
さぁて、どうしたもんかなぁ。こいつの場合、寝たら直りそうではあるけど───泉は、ふと気配を感じて、壁を見やる。
天井から、今度はまっくろな塊がぶら下がっていた。
胴体から伸びる細長い脚が八本。クモである。目がどこにあるかわからないが、「こんにちは!」と挨拶されたような気がして、泉は背筋をぞわっと震わせた。
「わひゃっ!?」
「んあ!?」
頼りない足取りで食卓に向かうレオに、思わず抱きついてしまった。後輩の司ほどではないが、決して虫は得意ではないのだ。突然、背中に飛びつかれたレオはバランスを崩しそうになり、けれども踏ん張って、泉を抱き留める。
「おお~、どうした?ナルみたいな乙女ちっくな声だして
……
」
「クモ!」
「ツモ?久しぶりにみんなで麻雀やりたいな~、おれリッツに一度も勝ったことないんだよ
……
」
「クモ!節足動物っ!糸で巣をつくる虫っ!」
「むし?
……
って、おおおおおお~」
レオは少しばかり驚いたあと、クモに近づいた。右から眺めて、今度は左から三秒ほど。最後は下から観察して、「おまえ、どこから入ってきた~?忍者だな~」とのんきに笑う。
「はい、これ袋!友好を図ろうとしてないで、とっとと退治してよねぇ!」
「ぷりぷり怒るなよ
……
。今すぐやるから、ちょっと待ってろって」
「早くして!」
「わかったわかった。
……
クモくん~、こっちにおいで~。セナはとってもうるさいけど、おれはちぃ~っとも怖くないぞ~」
レオは泉から受け取ったビニール袋を、クモにこっそりと近づける。ティッシュで瞬殺することなく、その命を大切に、ゆっくりと。
おとなしく捕獲されたクモは、透明な空間のなかで静かに『おすわり』した。よしよし、いい子、とレオは微笑む。いくつになっても、少年さながらの純粋さを忘れない。
「セナのあったかナポリタンとふわふわプリン、いますぐに食べたいところだけど。外にこいつ、逃がしてくる!」
「れおくんって、ほんとうに優しいよねえ」
「だって、クモに罪はないだろ。おれも間違えて、お偉いさんの会議室に乱入しちゃったことあるし」
「それは、あんたがアホなだけでしょ~。
……
まぁ、でも」
泉は、外に出ていこうとするレオの袖を掴む。
「れおくんの、そういうところ。格好よくて、嫌いじゃないけどねえ」
周りの奴らがなんと言おうと、あんたは私の大切な騎士さま。
レオは髪のしっぽを躍らせて、軽やかにスキップしながら玄関を出ていった。
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