彼は、村人から全く役に立たない男だと思われていた。狩人の息子だというのに、弓の一つも覚えなかったからだ。ただ父親について一緒に山を巡っていたが、獲物を仕留めたことなどない。たまに大きな荷物を背負って戻ってきたかと思えば、籠いっぱいにイガグリを拾って帰ってきたり、草がたっぷり入っていたりした。
栗も草もその日の食卓に並んだので、全く無駄ではなかったが、家の助けになっていないのは確かだった。どうして獣の捌き方ひとつ教えないのか村人は不思議がったが、そこは他人の家のこと。
口を出すことはしなかった。
息子が成人するくらいの歳になった頃、狩人の家に役人がやってきた。そのくらいになると、家を出て一人で暮らし始める年齢だ。何もできない息子が一体何になるのか、皆が興味を持っていた。
その興味は半分以上が、きっと何者にもなれなくて今更困るに違いないという意地悪な気持ちから来ていた。
しかし、狩人の息子は大半の予想を裏切った。
役人が来たのは、息子が彼らに手紙を書いたからだ。その中身は、周辺の植物や動物についてまとめたもので、役にたつ知識がぎっしりと詰まっていた。王都で暮らしてる学者たちは、そうした壁の外にあるものに無知だった。
だからこそ、狩人の息子のような山を歩き回る力があり、知識が深い人間を探していたのだ。狩人は息子のいうことを半分も理解してはいなかったが、その振る舞いに信頼を置いていた。
彼は学者の手伝いとして、壁の向こうに行った。
正確には違うのだが、王都のことに詳しくない村の人たちは狩人の息子は役人になったのだと思った。王都で働いている人間は全員役人だ。
役立たずから一点、村で一番の大出世である。
人々は口々に賞賛したが、狩人は息子が役立たずと言われて気にしなかったのと同じく、そして、息子が理解できないことにのめり込んでいたのをそのままにしたのと同じく、頓着しなかった。
彼が向き合うのは獣だけだ。そうして今日も出かけて行った。今までと何ら変わりなく。
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