両手を自由にしておかなければならないから、内部に入るのに懐中電灯はもっていけない。代わりにヘルメットにつけたヘッドライトが光源だった。入り口に照明を建てておく。これは中に人がいることを教えてくれるし、もし内部で迷ったときに、最後の頼りになるかもしれない。あまり強い光ではないが、太陽光で稼働する。
安全性が確保された場所ではないから何が起こるのかわからない。
ロープを敷きながら行くが、鋭い岩に当たってちぎれて道を失ってしまう可能性は十二分に考えられた。
ここに一年前、私の友が踏み入った。それを最後に連絡がない。
最悪の事態を想定しなければならない。というよりも、一年も連絡がなくて、生きているわけがないのだ。生存者の創作は警察の仕事だった。私の役目は、彼らができなかった生死の確認と、遺体の回収だ。
鍾乳洞はまだ探索されていない未開の場所で、安全性が確保されていない。だから警察も中に入ったらしいことは突き止めたが、内部までは探していない。
ヘッドライトをつけると、洞窟の内部が白く照らされた。石灰質が水にとけ、洞窟の内部を覆って全体をうっすらと白くしているのだ。常に水が滴り落ちる場所は、氷柱を逆さにしたような石筍が
日が差さず、常に湿った内部は外と比べて気温がグッと低くなる。吐き出した息が白くなる。気温が低いからか、常に湿った場所にも関わらず、カビ臭さはなかった。
おそるおそる中に進む。
観光地とは違う。天井が突然崩落する可能性もあれば、足元が崩れて出られない場所に落ちてしまう可能性もある。友人もそうして命を失ってしまった可能性が高かった。
だがさほど奥までいかないうちに、私は彼と再会した。
深みに足がはまって抜けなくなったか、あるいは別のところで死んでここまで流されきたのかもしれない。
風船のようにぶくぶく膨れた水死体を想像していた私の目の前にあったのは、作り物のような肌をした綺麗な友人だった。死蝋化現象という言葉を知らなかった私は目の前にいる死人が、本当に死んでいるのか確信が持てず、触れてしまった。
きっとそれが間違いだったのだろう。
死んだ原因がそこにあることを、私は想像するべきだったのだ。
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