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のま
2022-08-15 23:21:17
4382文字
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みすだてみす
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漸進、或いは急進
付き合うってなんだっけ?なみすだて。
未遂ですが性描写有、R-18つけておきます。
「あのさ、真」「水澄」
図らずも同時に口を開いてしまって、また一緒に口をつぐんだ。妙な沈黙を破ろうと意を決したのに、余計気まずくなってしまったな、と水澄は唇を噛む。同じく伊達も黙って隣で俯いている。
夜、ベッドの上で、つい数日前に付き合うこととなった恋人とふたりきりで隣に座る──絵に描いたような絶好のシチュエーションだよな、と水澄はやけに冷静に思ったが、そんな絶好の機会も目の前にしてみるとなかなか狼狽えるものなのだと初めて知った。
こくりと生唾を飲み込んだ音が、やけに部屋に大きく響いた気がして、慌てて咳払いをしてごまかした。
数日前に、付き合おう、とお互いの関係性の名前を変えた水澄と伊達だったが、いざ付き合うとなっても何を変えたらいいのかわからず水澄は内心戸惑っていた。高校生の身分だし、部活も忙しい。今更ながら、付き合うってどういうことだっけ、と自らに問いかけてみるが答えは出ず、何も変わらない日常を数日間過ごしている。友達だった頃と同じように、クラスで話もするし、部活もするし、一緒に帰る。これまでと何も差はない。
ただ一つ明確に変わったのは、今まで何も考えずに毎日のようにしていた、互いの部屋に行くという行為がしづらくなったことだった。付き合いたいと切り出したあの日から、なんとなく互いの部屋に上がり込むことに躊躇してしまい、帰宅後は一人で過ごしている。
せっかく付き合うと言ったのにも関わらず、このままだとどんどん距離が離れていきそうで、一抹の不安を覚え、水澄は自室のベッドに転がった。
「あー、考えてもよくわかんねーや」
真の方からなんかしてくるってことは、ねーよな──そう考えて、スマートフォンを弄る。今から来られる? と簡単にメッセージを送り、とりあえず部屋に伊達を呼び出すことにした。
数分後、玄関をガチャリと開け、伊達が入ってくる。
「どうした水澄? いきなり呼び出して」
「おう、いや、なんでもねーけど
……
」
ベッドから起き上がり、隣に座るようポンポンとマットレスを叩いて促す。伊達の顔があからさまに迷った表情に変わっていくのを見て、いや、なんもしねーからと隣に座らせたが、なんもしねーから、の方がいかにもなんかしそうだよな、と思い、やけに気まずい沈黙が流れた。
シンクからぽた、と水が落ちたのが、やけに大きく部屋に響いて、それを皮切りに口を開く。
「あのさ、真」「水澄」
同時に喋り出し、同時に黙り込む。
そういうわけで二人は、絶好のシチュエーションとは裏腹な重い空気の中、絶妙な距離を保ちながら隣同士でただ座っているのだった。
気を取り直して、もう一度声をかけたのは水澄の方だった。
「俺たちさ、付き合った、じゃん?」
「ああ」
「付き合う、ってなんだろうな?」
「
……
お前の方が知ってるんじゃないのか?」
「いや、実花は短かったし、なんか付き合ったっつーか
……
?」
実際実花とは付き合ったけれども、期間は数週間と短かったし、恋人らしいことをしてみようとして、すぐ合わないなと気づいたから、付き合っていた時間よりも距離を置こうと四苦八苦していた時間の方が長かった気がする。だから、付き合うということの意味は、いまいちわからないままだった。
付き合うってなんだ──水澄は自分が発した言葉に改めて考え込んだが、頭のよくない自分がそんな抽象的なことを考えようなんてハナから無理だと早々に諦めかけたその時、
「水澄」
突然小声で名前を呼ばれて、ベッドの上に無造作に置いた手を、上からきゅっと掴まれた。自分とは違う体温を持ったその感触に、伊達に手を繋がれたのだ、と少し遅れて脳が認識した。
「
……
俺の中では、付き合うってこういうことだと思っていたんだが」
わざわざそっぽを向いた伊達の耳が赤いのを見て、心臓がどくんと音を立てた。突然のことに反応できずにいると、「あ、気持ち悪かったか? 悪いな」とパッと手を離された。弁解したくて、慌てて離された手を掴み返した。
「いや、気持ち悪くねーって! ただびっくりしただけだし俺もその
……
」
「なんだ」
「もうちょっと、してみたい、って言ったらおかしい、かな」
ちらりと顔を覗き込んで、戸惑って泳ぐ伊達の視線を捕まえる。何回も繰り返してきたアイコンタクトのお陰か、これは進めていいやつだな、と手に取るように分かった。
少し離れた距離の肩をそっと抱き寄せて、顔を近づける。まず鼻がへにゃりと当たって、それから唇がぶつかった。顔に息がかかる。
「
……
真、息当たってる、童貞かよ」
「
……
うるさいな、そういうお前はどうなんだ、水澄」
「あ? そういうのは、ねーよ」
はじめてのキスは肝心の唇の感触よりも、当たった鼻や、思わず鼻から漏れた息の感触ばかりが残るものだった。けれども、頬を紅潮させ視線を狼狽えさせる伊達の表情に、付き合うってことは、俺らは二人ともこういうこともしたかったんだ、と確信できて、悩む気持ちはもう無くなった。
もう一度、今度は肩が触れるくらい距離を詰めて座り直し、きちんと唇を押し当てた。
あ、人の唇ってやわらかくてつめたくて、それでいて中は少し濡れているんだな──ようやく知ったその感触が、呆れるくらい水澄の心臓の鼓動を早めた。
「なぁ
……
真、もうちょっとしようぜ」
「少し、だけだぞ」
ゆっくりと肩に体重をかけて、ベッドに筋肉質な体を押し倒した。見た目よりも案外簡単に倒せたその体に、真も思ったよりこの展開に乗り気なのかもしれない、なんて馬鹿な想像をこっそりして、胸が高まってしまった。
狭いシングルベッドに80kgの男が二人も乗ろうとすると、どうしてものしかかる形にならざるを得ない。あまり体重をかけないように気をつけながら、伊達の腰を跨ぎ、上から何度も唇を合わせる。さっきはゆっくりと感触を味わったキスだったのに、何回も繰り返していくと特別な感触は消えていって、それでももっともっとと求めたくなってしまって不思議だった。夢中になるにつれ、腰のあたりに見覚えのある重だるさを感じる。
キスだけですっかり痛いほど張り詰めてしまった下半身を、たまらなくなって伊達の下半身に押し付けてみた。同じく硬く張り詰めているそこに、伊達も同じくこの状況に興奮しているんだと分かって、背筋が粟立つ。押し付けて少し体を前後させるだけのその行為は、直接的な快感は少ないが、脳みそをダイレクトにゆさぶられるかのようで息が上がった。そのまま本能的に、お互いのものを布越しに掴み合って緩く手を上下させる。他人の手に触れられる快感は、すごくもどかしくて、そのもどかしさが余計気持ちよさを駆り立ててくる。どうしよう、こんなに気持ちよくていいのだろうか。
ついに互いを隔てる布が鬱陶しく感じて、Tシャツを思わず脱ぎ捨てた。
「お前も脱げよ」
伊達の白いTシャツも脱がすのを手伝ってやる。相変わらず立派な大胸筋と、割れた腹筋が現れた。何回も見たそれだが、部屋の蛍光灯の下ではやけに白くて艶かしく見えた。
そのまま素肌と素肌で抱き合ってみる。びっくりするくらい汗がびしょびしょで、そのまま胸板同士を擦り合わせると、どちらのものともわからない汗がぬるぬると潤滑油のように滑って、凄くいやらしい気がしてくる。胸を合わせたまま、部屋着のボトムスのゴムを掻い潜り、下着越しに伊達の熱を掴んだ。
「あ、すっげ、ガッチガチじゃん」
「あ
……
う
……
みすみ、お前もだろ
……
!」
薄い下着越しだと熱さと形がさっきよりもはっきりとわかる。そのままずりずりと手を動かすと、それに合わせて伊達も、あ、みすみ、と浮かれたように名前を繰り返してくる。お返しとばかりに、ズボンに手を突っ込まれるが、下から触るのはどうもやりづらいのか、掴み損ねた手がぐりっと滑って偶然水澄のいいところを強く擦った。
「んあっ! ちょっ、ずりぃ待てよ!」
ふぅふぅと息を荒げて、目線も鋭く伊達がこちらを見てくる。布越しの刺激がいい加減焦れったい。はやく直接触ってほしい──そう思い、水澄は上体を起こして自分のパンツのゴムに手をかけた。
と、その瞬間、立てた膝がマットレスの縁で嫌な滑り方をした。
「いっでぇ!」
片膝がマットレスから滑り落ちて、ドシンと音を立てて体が床に落ちた。幸い、落ちた高さはそこまで高くないからか大事に至った様子はないけれども、それでも打った膝と脛と尻がジンジンと痛む。
「おい! 大丈夫か?」
突然のことに、伊達も心配そうに起き上がって、水澄に手を差し伸べて起こした。
「あー、多分どこも怪我はしてないけど。
……
ッテェ
……
ダッセーな俺
……
ベッド狭すぎねぇ?」
「二人で使う用にできてないってことだな」
「音大丈夫かな
……
下の部屋誰だったかな
……
」
打った箇所をさすりながら、ボソボソとやりあう。さっきの熱は嘘のようにどこへやら引いてしまった。こんな状況で半脱げの自分達の姿が、突如滑稽に感じて、床に投げ捨てられたTシャツを雑に被った。つられて伊達も、布団の上でくしゃくしゃになったTシャツをもぞもぞと被る。
煌々とついた蛍光灯が目に眩しい。──勢いに任せてやってしまったな、と頭が徐々に冷えていくのを感じる。
「あー、なんかごめん
……
もう寝るか、帰る?」
「ああ、そうだな、明日も朝練あるしな
……
」
着衣を整えて、お邪魔したな、と伊達がのろのろと玄関に向かう。その後ろ姿に、このままでは今日来た時よりも余計気まずくなるんじゃないかと直感して、咄嗟に声をかけた。
「真! 明日空いてる?」
「明日
……
? 多分何もないぞ」
「
……
あー、明日もまた来いよ」
照れ臭くなって、頭に手をやると、伊達もおう、と頷き目を伏せた。そのまま玄関でじゃあな、おやすみと交わして、扉がバタンと閉じられる。
急に訪れた静寂に、俺やりすぎたかな、もっとキスだけとかで止めた方がよかったかな、いや、真も乗り気だったし大丈夫だよな、もしかして、去り際にハグとかしてみればよかったのかな、などとぐるぐると水澄は考え込んだ。
一人になってすっかり広く感じる部屋で、ぱたんと布団の上に大の字に倒れ込む。考えるよりも、さっきまでの温もりを保った布団の感触に、一回収まったはずのいけない気持ちが途端にむくむくと湧いてくる。帰らせなければよかったのかもしれない、なんて少し後悔してしまった。
思い返せば、先に触れてきたのは伊達の方だったなぁ──その事実と、伊達の硬い体と存外柔らかい唇を思い出し、湧き上がってきたこの欲をなんとかするべく、水澄はパンツに右手を突っ込んだ。
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