溶けるもの 触れるもの

410字ほど 一次創作BLのss.001 わたし×彼 相手への身体感覚は人それぞれだなというような(?)

 匂い。
 微かな匂い。
 柔らかい匂い。
 彼の匂いをそう感じるのはわたしが、彼の傍にいるからで、離れたら、その柔らかな匂いを感じることはできない。

 伸ばした手の、指のあいだをすり抜ける花びらのようだ。
 つかむことはできない。
 のどかな光といっしょで、実体のない、彼の一部を、今のところ、こころは確かに記憶している。

 その肩に顔を寄せてから、すぐ離れる。
「どうした?」と彼が微笑む。綿菓子みたいだ。

 ほのかに、シャーベットみたいに溶けていく。こころが、微かな、柔らかい匂いに浸っていたいと言う。

 誰よりも、きっと、彼の傍にいられるように。
 失いたくない。
 失えない。

 わたしの肩に、彼が笑って顎をのせてくる。
「なんか……わかんねえの」拗ねたように言い、指が確かめるみたいにわたしの首元に触れて、ゆっくりと、満足したように離れていった。