演技の合間に映しだされた客席にネットは騒然とした。各SNSではトレンドを一瞬あるふたつの人名がトップに躍り出て、未だ衰えることのない人気の程が知れた。いや、むしろ、彼らの現役時代を直接には知らない層にも「刺さった」と言ってもいいかもしれない。
『勇利くん…すごいきれいになってる…』
『言いたいことはわかるけど、ごめんけど勇利くん元々美人なんで』
『これが…人妻の魅力…?』
『デコ助に嫁にやったつもりないんですけど?!』
『オーーーーーイ◯されるでフォロフガチ勢に…』
『結婚したのか…俺以外のやつと…』
『むしろお前としねーーーヨ誰だ貴様くらすぞ』
『てか何年経ってんのよ嫁いってから…』
『拠点の移動=結婚』
…と、一瞬の映り込みでSNSは一気にお祭り騒ぎになったし、それをきっかけに過去の演技動画を紹介しあう流れも加速した。
勝生勇利が全日本の観客席に──の騒ぎを本人より把握していたのは勿論そのコーチだ。
「大人気だねぇ、俺のこぶたちゃんは」
いや、もう、元コーチだが。
「よく見つけるよねぇ。ヴィクトルならわかるけど」
勇利は苦笑してコーヒーカップを傾ける。
「俺なら絶対勇利を見つけるけど」
「それはヴィクトルだからでしょ」
表情こそ困ったようなものだったけれど、勇利の台詞に謙遜は見当たらない。愛されていることに疑いがわかないということだ。
ヴィクトルは微笑んで、ギュッと勇利を抱きしめる。
「何〜、ヴィクトル。僕変なこと言った?」
くすぐったそうに笑う勇利に、そんなことないよ、とだけヴィクトルは言った。
実に幸せそうに、歌うように。
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