ウィルは、ミルクティーから立ち上る湯気の向こう、幸せそうに笑いながら寝ているリュヴァルトをじっと見ていた。リュヴァルトは、ふふ、と時々声を漏らして頷いたりしているので(単に小さな寝返りかも知れないけれど)、見ていて飽きないし、この大きな大人のリュヴァルトがなんだか可愛くも見えてくる。
リューはいつもにこにこしているけど、夢の中でも楽しいことを見つけているんだぁ、いいなぁ。そんなことを思いながらウィルはハチミツ入りの甘いミルクティーをすする。
こたつはあったかいし、アンが淹れてくれたお茶は甘いし、ミカンがあってリューも寝ているから、冬のお休みの日ってとてもいいと思う。
「リュー、手が空いてるなら
――」
「しー」
だからキッチンから顔を覗かせたアネッサに向かって、ウィルは唇に人差し指を当てて見せた。
「リュー、なにか楽しい夢をみてるみたいなんだ」
アネッサはミルクティーの匂いと一緒にこたつのところまでやって来て、突っ伏して寝ているリュヴァルトの顔を覗き込む。ちょうど彼がふふっと笑った。
「ね?」
楽しそうでしょう? と同意を求めたが、見上げた先にあるアネッサの眉間には皺が寄っている。
「子供じゃあるまいし」
そう言って立ち上がる叔母の反応は存外厳しい。が、ウィルが心配したのも束の間、彼女はダイニングテーブルの椅子に引っかけてあった膝掛けを手に戻ってきた。そしてそれをリュヴァルトの肩にかける。
ああよかった。こんなところで寝てはだめだと、リューが叱られるのかと思った。
しかしアネッサの優しさには続きがあった。安堵するウィルの視線は叔母が掴んだひとつのミカンに移る。
暖房で温んだミカンはアネッサの手によって無事?リュヴァルトの頭上に移住させられ、意外と安定してそこに鎮座した。
「ウィル、リューの代わりにちょっと手伝ってくれる?」
「うん
――ねぇ、どうしてミカンを載せるの?」
ちょっと離れて見ると、リュヴァルトの髪が白っぽいせいもあってこたつの上に鏡餅が置いてあるようにも見えた。一段しかないけど。
「リューが起きたときにミカンがうまいこと後ろに転がって落ちれば、」
「うん、」
「半纏の襟からミカンが入っていくだろ」
「
……リュー、びっくりするかもね」
「そうそう」
どんな真面目なおまじないなのかと思いきや、どうやらあれはアネッサのいたずららしい。
「あんなところでうたた寝してるからいけないんだよ。ウィルはまねしちゃだめだよ」
アネッサがわざと真剣な表情で耳打ちしてくるものだから、ウィルはおかしくなって声を殺して笑った。
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