ひろか
2024-02-03 08:59:59
3250文字
Public 観劇録
 

*観劇録*『先輩、コントしましょうよ。』感想。

寺木慧佑さん脚本・演出『先輩、コントしましょうよ。』の感想です。⚠︎内容に関するネタバレと深読みを含みます。

⚠︎内容に関するネタバレ・深読みを含みます。


寺木慧佑さんプロデュース、役者さんによるコント公演。

プロデュースだけでなく脚本演出も手がける寺木さんが、タイトル通り「先輩、コントしましょうよ。」と呼びかけたメンバー(一部後輩)が集う。
その中に大部恭平さんと湯本健一さんという見知った顔があり、この2人が参加するなら絶対楽しいだろうと気になっていた。

そんなわけで急遽当日券で飛び入り参加。
思ったよりもがっつりコントで、がっつり漫才で、お笑いライブのようでお芝居でもあって、なんだかとにかく新感覚だった。
一本ずつのコントとしても楽しめるし、全編通して"こいつら"の物語としても楽しめる。一度で二度おいしい。大部さん湯本さんはもちろん、本作を手がけた寺木さんをはじめとする今回はじめましてのみなさまもそれぞれ個性が爆発していて面白かった。


お笑いにおいて、多少なりともボケとツッコミの分担があるものだと思う。その役割が固定されている芸人さんもいれば、ネタによってローテーション的に役割が変わる芸人さんもいる。『先輩、コントしましょうよ。』は後者で、どの役者さんも基本的にボケもやるしツッコミもやる(大部さんは終始ボケだった気がする)。ボケをやるかツッコミをやるかで、それぞれの役者さんが見せる表情が全然違うのが印象的だった。


オープニングコント「本音と建前」は、寺木さんが鵜飼主水さんと湯本健一さんに本作のオファーを出す、という本作の前日譚的なコント。
二つ返事でOKする湯本さんに対し、出演を断固拒否する主水さん、というコントにしてはシリアスな始まり方に思わず固唾を飲んでしまった。あれ、もしかしてコントではない?もしかしてコントというタイトルの演劇作品?と一回疑った。主水さんは寺木さんの先輩として、彼が自分たちを起用しようと思った理由が彼の本音ではないのではないかと指摘する。あれだけ断固とした姿勢を崩さないのに本音でぶつかってこいよと語りかける姿は優しい先輩で、寺木さんがようやく本音を語りだす。
「巨万の富が欲しい!!!!!」
はい、立派にコントでした。
見事に騙された。
思いもよらぬ本音に動揺を隠せない主水さんと湯本さんをよそに、寺木さんは富への欲を髪を振り乱しながら熱く語る。しまいには声が裏返る寺木さんの吹っ切れっぷりがいっそ清々しいくらいだった。ドン引きしつつも「言っていいことと悪いことが」と諭す主水さんは本当に優しい。ちょうどこの日は前説が寺木さんと主水さんだったので、先輩に振り回される寺木さんと元気な主水さんのイメージが一変した瞬間だった。
そして本音を露わにした寺木さんに触発されて「僕は出たくない!!!!」と言い出す湯本さん。湯本さんは寺木さんの話を聞きながら後ろで怒ったような顔をしていたので、さすがに"お金になるからオファーしました"と言われていい気がしなかったんだろうなと思いきや、こちらもこちらで相当の破天荒ボーイだった。しかも寺木さんに対して本音を爆発させる機会をいただきありがとうございます!と言う始末。この時の湯本さんの笑顔がまぁ清々しくていい顔だったのがまた面白くて。「お前ぺっかぺかの笑顔すんなよ」のツッコミが言い得て妙すぎて吹き出してしまった。

そこからも愉快なコントが続く。語彙力と広辞苑で殴ってくるタイプのヤンキーをはじめ、自分が繋いだ友人2人とルームシェアを決めたのにジブチに渡る男、横柄な態度の有名人と作家先生、居酒屋の店員みたいなバーテンダー、怒られる心当たりがありすぎる会社員、はたまたバーテンダーのような居酒屋店員……キャラが濃いとはまさにこのこと。コントなんて登場人物のキャラクターがあってこそだとは思うけれど、ここまでいろんなキャラクターが出てくるとなんだか全員愛おしく思えてしまう。


そして見どころのひとつがコントの合間に入る回変わりの漫才だ。毎回演者の誰かが、寺木さんと漫才を繰り広げる。私が観に行った回は、一本目が大部さん、二本目が佐々木さんの回だった。

寺木さん×大部さんの漫才は、今をときめくiPhoneが話題に。永遠にiPhoneを正しい名称で言えない大部さんと、それほどと言いつつめちゃくちゃ詳しい寺木さんの掛け合いは軽快かつ巧妙だった。大部さんってどこの現場でも変わらない"大部節"みたいなものを持っているんだなぁ。いつもは大部さん主催の団体で観るので、外現場の大部さんは新鮮だった。それに振り回されない寺木さんも上手い。賑やかで口が回る大部さん相手に淡々としつつツッコミつつ、自分のペースを守りながら漫才として編み上げている。すごい。

寺木さん×永石さんの漫才は、アイスクリーム屋さんになりたい佐々木さんの夢の話。「僕やりたいことがあるんですよね」から始まるのはある意味漫才の王道パターンだから、ライトな漫才好きの私は、おっ、と思わず気持ちだけ身を乗り出す。マイペースな永石さんは寺木さんの話を基本的に聞いていなくて、スルーしながら自分の話を進めて行く。そういえばこの人、ルームシェア持ち掛けておいてジブチに行こうとした人だった。そして彼のペースにはさすがの寺木さんも巻き込まれてツッコミがどんどんヒートアップしていく。漫才の組み立てやボケツッコミのあり方が私の好きな漫才師さんの漫才に似ていて楽しかった。


2本の漫才も含め、おもしろく、楽しく過ぎていく時間はあっという間に終盤戦。最後のコント『等身大』は、旧知の仲の主水さん、湯本さん、五十嵐さんが居酒屋で飲み交わす設定のコントだ。主水さんがルームシェア相手がジブチに行く話をしたかと思えば、五十嵐さんは出張先でそいつに会ったと話す。湯本さんは理不尽な上司にお茶の種類で怒られた話をして……ここまで『先輩、コントしましょうよ。』を観てきた身としては、あっっ!!と思わざるを得なかった。どの登場人物にも心当たりがありすぎる。中には姿こそ出ていなかったけれど、あのエピソードの裏の人だ!というのもあって。湯本さんが相変わらず鞄の奥底に辞書を潜ませていて、相変わらず辞書で殴ろうとしているのは笑ってしまった。

ここまで見てきて、なんとなく役者さんがボケとツッコミの立場を変えながらコントをしていた意図が見えたような気がした。
要はこの『先輩、コントしましょうよ。』は、鵜飼さんと湯本さんの二人を主人公とした舞台作品でもあったのだ。二人が過ごす日常をコントという形で見せているからこそ、ボケとツッコミが入れ替わるように客席には見える。けれど彼らはただ自分たちの日常を生きているだけ。日常を生きる上でボケかツッコミか、という役割分担は生まれないわけで、だからその時々でボケになったりツッコミになったりするのか!と勝手に目から鱗だった。

『等身大』。見栄を張り過ぎて苦しくなってしまった五十嵐さんの心の結び目を、主水さんと湯本さんがゆっくり解いていく。そんな二人に応えるように五十嵐さんも"等身大"の自分を語り始めるあれ、コントなのになんでこんなに胸が熱くなるんだろう。

コントというものは基本的に大袈裟にやってなんぼみたいなところがあるし、そこが観客にうけるのだと思う。ここまでも彼らの日常を楽しく愉快なコントとして覗き見していたけれど、結局のところ等身大、それが大事なんだと寺木さんは訴えかけたかったのかもしれない。

けれどきっと、この作品に深読みはあまりするものではないのだろうとも思った。
だってこれはあくまで"コント"。
笑って、笑って、笑って楽しむものだから。


〈『先輩、コントしましょうよ。』公演情報〉※敬称略
公演期間:2023年11月2日〜11月5日
会場:ブルースクエア四谷
作・演出:寺木慧佑