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饗李
2024-02-02 01:29:10
1576文字
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しもやけた手と、
跡部夢、名前変換有。冬の日にあたためてもらう話。
饗李
暫くは過ごしやすかったのに、突然冷え込んだ日。廊下は寒いなと考えながら多量の書類を抱え込んで歩いていた。
「(
……
あ、景吾先輩)」
ぼんやりと歩いていたら、反対側から歩いてくる先輩を見つけた。職員室に用事でもあるのだろうか、このまますれ違うのだろう。
先輩は私をチラリと一瞥すると、手を軽く上げて挨拶してくれた。通りすがる度に何かしてくれるから、律儀な人だと思う。小さく頭を下げれば、そのまますれ違っていく
――――
はず、だった。
「アーン?
饗李
、その手はどうした」
「え?」
手? 突然なんのことだろう。首を傾げながら自身の手を見れば、真っ赤になっていることに気付いた。確かに、寒くて凍りそうな日だとは思って居たが。私の手が赤いこと、なんでわかったのだろう。この人の観察眼はどうなっているのか分からない。
「
……
なに惚けてるんだ」
コツコツ、と靴を鳴らしてこちらに近付いてくる。何をするんだろうなんて思いながら見ていれば、突然私の手に触れた。長い指が私の手の甲に触れる。そのまま滑るように、手の甲を包む。暖めるように、尚且つ私が書類を落とさないように。
「せ、んぱい
……
!?」
「何だ」
さも当然のように触れてくる手は、私より大きくて暖かい。
動揺だと照れだとか色んな要因で、私の腕の中からバサバサと音を立てて落ちていく書類。先輩はただ、ふっと目を細めてみるだけだった。
「相変わらずすぐ照れるな」
「い、きなりでしたから!」
慌てて言い訳をした後に、落ちた書類を拾おうとしゃがみこむ。それに合わせるように、景吾先輩もしゃがみ込んだ。まぁ、先輩のせいで落としたようなものだし。手伝ってくれるのは有難いなんて思いながら、それを纏める。先輩が拾った分も受け取って、その場に立った。
「生徒会室か?」
「そ、うですが
……
」
「丁度いい、着いていく」
「えっ、でも先輩は職員室に用事が
……
先輩!」
こっちが呆気に取られている間に、私の手から書類を抜き取って歩き始める。あまりにも手早いそれに呆気に取られてしまったが、慌てて背中を追いかけていく。
生徒会室に用事が? 職員室に行かなくていいのか、色んな事をぐるぐると考える。足早に歩く先輩の背中に追いついた、と思った時には既に生徒会室前だった。先輩、と声をかけてもそれを無視して部屋に入っていく。意図が分からなくて、首を傾げながら私も部屋に入り扉を閉めた。
書類を私の机の上に置いて、景吾先輩はいつものところに座る。それをぼんやりと見ていれば、声をかけられた。
「おい」
「は、はい」
「こっちにこい」
傍に寄るように言われて、大人しく従う。距離をあけて近寄れば、腕を掴まれて引っ張られる。
うっかりコケないように先輩の肩に自分の手を添える。膝の上に正面から向き合って座る形になって、ドキリと心臓がなった。
私を支えるように片方の手を腰に超えて、肩に添えていない方の私の手を取って握る。私より暖かい先輩の手が私の指をなぞって、ぎゅうと握った。体温がうつって自分の手が暖かくなるより、別の要因で体温が高くなっていく。そんな様子を見て、また先輩が笑う。
もし、かして。私の手が冷えていたから、温めようとしてくれているのだろうか? それにしては、あまりにも積極的すぎやしないか。
「本当にすぐ全身が赤くなるな」
「そ、れは、その」
愛おしいと言うような目線で、優しい声音でそう言う先輩にまた心臓がうるさくなる。さっきまで冷たかった手は、すっかり熱くなっている。ぐっと引き寄せられて、また距離が近くなった。キスが出来そうなくらい、近い距離。
目を逸らしたいくらい照れてるのに、離せなくて。心臓の音だけが部屋に響いているようだった。
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