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饗李
2024-02-02 01:16:49
2497文字
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幼いきみと、お留守番
跡部夢、名前変換有。跡部景吾のいとこの女の子と生徒会室でお留守番する話。
饗李
饗李
氷帝学園の、生徒会室。
基本的に入る人が限られているその教室に、珍しい幼い声が響いていた。
「おねーちゃんっ」
「どうしたの~?」
にこ、と笑った少女に目線を合わせるため、しゃがみこむ。手を伸ばして来たと思えば、こちらの頭を撫でてきた。
キョトンと首を傾げていると、また少女は笑みを浮かべる。
「いいこ、いいこ!」
「
……
! ありがと! お返し~~っ!」
お返し、と言うのは名ばかりでやや乱暴に、しかし丁寧に頭を撫で返す。きゃ~! なんて声を上げればぎゅうと抱きしめ、そのまま抱き上げた。嬉しそうに声を上げる少女の目線が窓に向けられているのをみれば、外が見えるように近付いた。
……
どうやら、テニス部はもう片付けを始めているらしい。景吾先輩が来るのももう少しだろう。
「おにいちゃん、もうすぐ帰ってくるよ」
「ほんと!?」
「うん。いい子で待って、褒めてもらおうね」
「うん!」
抱きしめたまま頬を寄せれば、嬉しそうな声が聞こえる。とりあえず仲良くはなれているようだ。
――
時間は遡ること、数時間前。
生徒会室にて書類をまとめていたと思えば、突然入ってきたのはユニフォーム姿の景吾先輩
……
と、幼い可愛らしい女の子。
一緒に連れられてきた可愛らしい女の子は跡部先輩のいとこらしく、かなり懐かれていているらしい。今日は食事会の予定だったが、この子が景吾先輩に会いたいのを抑えきれず学校にまで来てしまったそう。
親は居たのだがちょっとした野暮用で学校を離れざるを得なくなり、下校時間に迎えに来るから
……
と預けられてしまった。部長という立場でもあるし部活をほっぽり出す訳にもいかないからと思案した結果、私のところに預けるという選択肢になったのだという。
初対面ですよ? の問いに対し「いずれは顔を合わせる関係だ」と言ってのけた先輩は早々に部活に戻ってしまった。こっちを照れさせるだけ照れさて
……
と文句のひとつでも後で垂れてやろうか。
ゆきです! 四歳です! と元気に自己紹介してくれた彼女は、小さい子特有の好奇心で沢山話しかけてくれた。私も小さい子と遊ぶのは好きだし、あっという間に意気投合して。
話の節々から景吾先輩に懐いているのだろうな
……
と微笑ましくなる反面、よくこういう年齢の子が言いがちな「将来結婚する!」なんてことを景吾先輩に伝えてないか心配になってしまった。小さい子に嫉妬するなんて、大人げない。
「おねえちゃん」
「ん?」
「けーごおにいちゃんのこと、おどろかせよ?」
突拍子もない発言に首を傾げる。
……
どうやら、これから来るのであれば隠れて驚かせよう、という話らしい。
「
……
いいね! やろう! どこに隠れる?」
「えーっとね」
こそこそと二人で身を屈め、秘密の話し合いをする。すぐばれないところがいいよね、なんて話した結果、景吾先輩の机の後ろに隠れることに。
驚いてくれるかな、なんて息を潜めながら喋っていれば、足音が聞こえてくる。
ゆきちゃんと顔を見合せ、更に小さく身をかがめた。
「戻ったぞ。
……
アーン?」
怪訝そうに口癖を呟く先輩に笑いそうになるが、ここで笑ったら作戦にならない。近付いてくる足音に耳を済ませ、せーと、と口パクで合図する。
「わぁ!」
「わ!
……
お疲れ様です、景吾先輩」
「
……
隠れてたのか」
驚いたように少しだけ目を見開く景吾先輩を見れば、やったねとゆきちゃんとハイタッチをする。ハイタッチをした後に私の傍から離れたと思えば、待ってましたかのように景吾先輩の足元に駆け寄った。可愛いなぁ、なんて先輩に抱っこをせがむ彼女を眺めつつ、自分も傍に近寄る。
「ゆきちゃん、まだかなまだかなっていい子で待ってましたよ。沢山褒めてあげてくださいね」
「うん! ほめて!」
「言いつけをしっかり守れたのか? 偉いな」
その言葉と共に、手慣れた様子で抱っこする。面倒みのいい所もあるんだなと感心していれば、ふと先輩と目が合った。
「
饗李
も"いい子"で待ってたか?」
「
……
! そんな子供じゃないですよ、私は」
「俺様から見たら十分子供だ」
「一個しか離れてないですけど!」
いきなりの子供扱いに頬を膨らませれば"そういうところだ"なんて笑われてしまって。
お付き合いしてるんですけど!? なんて言葉を言おうとすれば、ちょうどそれに合わせるようにチャイムが鳴った。
「帰るぞ」
「あ、私荷物教室なので。お疲れ様です、また明日」
「? おねえちゃんと一緒に帰らないの?」
純粋な疑問を飛ばしてきたゆきちゃんに面を食らう。二人はこれから食事会なわけで、一緒に帰れるわけでは無いと思うのだが。
「えっ、二人でこの後食事会ですよね? 私はついていかな
……
」
「何言ってんだ、
饗李
、お前も来い」
「
……
はい??」
あまりにも突拍子がない。首を傾げていれば、そんな私を置いてくように背中を向ける。
「ちょ、待ってください!」
「アーン?」
「き、聞いてませんけど!」
「言ってねぇから当たり前だろ。事前に言ってたらお前はありとあらゆる言い訳を用意するからな、特に跡部家絡みの食事会と言えば」
「うっ
……
それはそう、ですけと
……
!」
「それに、俺様とゆきの願いだったら断れねぇだろ?」
図星だ。景吾先輩と付き合ってはいるけれど、先輩の実家の、規模の大きさに慣れず尻込みしてしまうことが多い。まさか、こうすれば断れないとわかった上での行動だったのだろうか
……
?
そんな私の苦悶も知らず、景吾先輩に抱き抱えられてるゆきちゃんは嬉しそうな顔した。
「おねえちゃんもくるの? うれしい!」
「ほら、ゆきもそう言ってるじゃねぇか」
「う~~っ
……
荷物もってきます!」
彼らの隙間を縫って教室を出る。
コケるなよ、なんて先輩の声と、まってるね~! なんてご機嫌なゆきちゃんの声を聞いてしまえば、断ることなんてできないのだから。
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