冬になってから流行病で多くの人が苦しんでいた。その年は不作で、皆に十分な栄養が行き届いていなかった。それもあって弱いものからバタバタと倒れていった。幸いまだ死人は出ていないが、時間の問題だ。
事態を解決するために、村の大人たちは話し合って魔法使いに助けを求めることに決めた。村で一番体力の残っていた子供が、使いに出された。確かに高地にある家に送るにはふさわしくないし危険かもしれない。
だが、偏屈な魔法使いは子供が相手ならひどいことをしないし、断らないと言われていたのだ。
子供は、貢物の品々を手にして山を登っていった。
彼がどうしてそんな不便なところに暮らしているのかは、誰も知らない。毛が長い高山生の草食獣を家畜にして、一人で生活している。
子供が訪問したとき、魔法使いは縁台でお茶を飲んでいるところだった。麓から人が尋ねてくるのは、大概が面倒ことを頼まれるときだ。だからとても嫌そうな顔をした。
偏屈な魔法使いが怖い顔をしているので子供は怯えた。だが魔法使いを連れずに戻ってきてはいけないと言われているし、山道を日が暮れる前にもう一度下って帰ることもできそうにない。
勇気を出して話しかけるしかなかった。
「あの、あなたが魔法使いの人ですか」
「さあな。人違いだ」
縁台の椅子に座っていた男は、顔を顰めたまま返事をした。
男の返事にますます困惑する。人違いのはずがない。
「でもこの山に住んでいる人は、一人しかいないって」
「確信があるなら、いちいち尋ねなくてもいいだろう」
ため息をつきながらもテーブルに招く。
怖いような気もしたが、それ以上にとても寒いと思っていたし、テーブルの上で小さな鍋を温めている火は温かそうだったので、子供は席に着くことにした。
「いつも言ってるけどな、俺は魔法使いじゃない。ただの薬師だ」
ミルクで煮出したお茶にはわずかに塩味があった。旨みが濃い味だ。
「そのお茶だって、言ってしまえば魔法使いの薬草なんだぜ。まあいい。ともかく今回は何を持ってきたのか、見せな」
テーブルの上に、捧げ物を並べる。
魔法使いはその値打ちをみて、断ることのできない気配を察し、深々とため息をついた。
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