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namaeggg
2023-11-26 13:32:46
1496文字
Public
アークナイツ
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Summer Bear
2023.11.23のネクスト・オペレーションSP2023にて配布したSSです。今年の夏は暑かったですね…。
独居用の小さな冷蔵庫を勝手に開ける。バタンと無造作に閉める。
「足。」
ワンルームの室内からすぐさま一語、飛んできた。
仕方ねぇだろ。今両手が塞がってんだ。
口を開くのも億劫で、ズィマーは心の中で言い訳をする。
右手にはバニラ味。左手にはイチゴ味。
これまた勝手に拝借したスプーンを口に咥えたまま、ん、とカップアイスを両方目の前に突き出すと、喉まで出かかっていた小言を無理矢理飲み込んで、
「左。」
渋々といった具合に、ロサは目だけを動かした。
「勝手に人の部屋の冷蔵庫を開けるものではないわよ」
カップの蓋を開けると、その下にビニルの蓋が現れる。自分の給料で少しだけ奮発した、少しだけ高級なアイスだ。それをベリベリと勢いよく捲り付着しているアイスをひと舐めすれば、白髪の少女は案の定眉を小さく寄せた。
「細けぇこと気にすんじゃねえよ。大体そいつはアタシが買ってきたモンだ」
暑苦しい小言を聞き流して、茶髪のウルサスはアイスを掬う。シャリという音が立って、冷たい感触がバニラ風味とともに口の中に広がる。瞬間、清涼感が火照った体を慰撫した。けれどもアイスが溶けるのと同時に、口の中に残った甘ったるさが不快に舌に纏わりついて堪らなくなった。
額から流れる汗の存在を打ち消すようにして二人は黙々とアイスを食べ続ける。食べ切るまでの短い間、狭い室内には西日と小さな咀嚼音だけが満ちていた。
「
……
あっちぃ」
口の中の甘さを持て余しながら、ズィマーは呼吸をするように不平を零した。そうしたところで、ウルサス人にとってウルサス以外の土地で過ごす夏は想像以上に過酷だ。それは隣にいるロサも同様だろう。日頃は平然と振る舞っている元令嬢も、そうね、と珍しくうんざりとした様子を隠さず同調して、汗で貼り付いた前髪を気怠い所作で払いのけている。
せっかく手に入れた清涼感も瞬く間に雲散してしまった。空になったカップを雑にゴミ箱に投げ入れて、立ち上がったついでに体もベッドに投げやる。開け放っていた窓から入り込んだ外気にさらされていたシーツが剥き出しの腕に触れると、存外ひんやりと感じて快かった。
「なんだよ?」
大の字になってしばしその心地よさを堪能していると、複雑そうに顔を歪めているロサと目が合った。光彩異色の宝石のように美しい瞳の中に、ちぐはぐな逡巡が浮かんでいる。すなわち、礼節を欠いた態度を咎めるべきか、抗いがたい誘惑に従うべきか、という躊躇いである。
結局、ロサは後者を選んだ。
「おわっ! 急に飛び込むんじゃねえって!」
ロサを受け止めたシングルサイズのマットレスが大きく跳ねた。
「
……
ふふ」
大きな体を揺らして、いたずらが成功した子供みたいにロサは笑った。すっかり毒気が抜けて、ズィマーも呆れたように溜息をついた。
「気持ちいいだろ?」
「ええ」
すりすりとシーツに顔を埋めて、小獣のように頬ずりをする。ひんやりと冷えていたシーツは触れた箇所からじわじわと体温が伝播してすぐに温くなっていく。さらなる清涼感を求めて寝返りを打てば、同じタイミングでズィマーも体を転がして、思いがけず顔の距離が近くなってぎくりと心臓が跳ねた。
そっぽをむいた拍子に露わになった耳朶に、ソニア、と氷菓子を融かしたような音がぴたりと触れる。触れた箇所から熱が伝わっていく。
「こっち、むいて?」
目を泳がせたズィマーの手に、ロサの手が重なっていた。
「
……
あちぃって」
言い訳がましく呟いた言葉は微かに残ったアイスの味と混じり合って、ひとつに溶けていく。
end.
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