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namaeggg
2019-01-02 23:21:49
2236文字
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エンドロールには早すぎる
アカデミー卒業後のホワロ大人AU予告編。5期までの設定を踏襲したりしてなかったりしています。
Introduction.
「
――
まだ終わってませんわ。ルビー」
場面が暗転し、館内は一度呼吸を止めたように静寂になる。悲愴なラストを映し出したスクリーンはゆっくりと、それが悪夢だったかのように黒く飲まれて塗り潰されていく。
正義感の強いジャーナリストとスパイの女性議員が許されざる恋に落ち、つかの間の愛を享受したのち戦争に傾倒していく社会に引き裂かれる物語。
やがて郷愁を煽るインストゥルメンタルとともにクレジットタイトルが静かに流れていく。立ち上がりかけたルビーの右手を掴んで、ワイスはそれを制した。
「もうエンドロールだよ」
小さく苦笑を震わせながら、ルビーは促されるまま再び席に着く。
「エンドロールの後に、どんでん返しが待ってるかもしれませんもの」
「認めたくないの? バッドエンドだったって」
「見終わるまでは、信じていたいですわ。トゥルーエンドを」
白い字幕に仄かに照らし出されたルビーが冷やかすように語尾を上げて、眇めているのがわかる。彼女に合わせるように気取って返事を投げれば、
「
……
意外とロマンチストだよね。ワイスって」
「“意外”は余計でしてよ」
声を落としてからかうように、ルビーがにっと白い歯を見せた。
映画館でおしゃべりするのは本来ならばマナー違反だろう。それは心得ているつもりだけど、貸切の予約をした覚えはないのにこの時間の客はどうやら二人だけのようで、休日だというのにうら寂しい。
封切りされてからずっとワイスが気にしていた映画で、けれどもアカデミー卒業を控えた二学期は慌ただしく、結局今日まで足を運ぶことができなかった。上映が終了してしまった劇場も多く、やっと見つけた場所は道楽経営のこぢんまりとした古く懐かしい施設だった。
アクションやファンタジーを好むルビーにとっては動きが少なく小難しくて退屈な映画だったに違いないけど、熱心なワイスに付き合った彼女は途中で厭きて寝ることもなく集中して観てくれたようだった。なにか、感じ入るところがあったのだろうか。だとしたらチョイスした本人として、嬉しい。
「じゃあさ。エンドロールの間だけ、手を握っててもいい?」
「
……
ええ」
耳元で囁く声で尋ねられて、小さく頷くとワイスの左手にルビーの右手が重なった。そしておずおずと指の間に指が滑り込んで絡められる。ぎゅっと固く、簡単には振り解けないくらい、きつく。
「それからね、」
まるで悲恋であったことを慰めるように、エンドロールは穏やかに過ぎていく。決して大きいとは言い難いスクリーンに映し出された映像の微かな光だけが彼女達を照らして、二人分の息遣いだけが今、この狭い世界のすべてのように満ちる。
「エンドロールが終わるまで、」
返事をする前に、握られた手を引き寄せられて。
――
キスしてても、いい?
初めての感触が、柔らかくしなやかに触れ合う。
BFF。永遠の親友だなんて昔、彼女は言っていた。
でもそれは、目を閉じる前の関係。
唇はまだルビーに押し付けられたまま。ワイスは応えるように甘く押し返す。
きっと今、ルビーも目を閉じている。だけど、エンドロールが終わって目を開いたら。
新しい関係が、はじまる。
//
『号外:シュニーダストカンパニー、ジャック前社長逮捕』
『後継指名は白紙となり、新代表には次女のワイス氏が就任。ジャック派閥への牽制か』
『当面、アトラス政府が行政指導として経営介入するものとみられる
――
』
険しい高嶺より吹き下ろす風がルビーの頬を切るように撫でつける。温暖な島育ちにはあまりに堪える冷え込みに思わず身震いしていると、一羽の鴉がルビーの遥か頭上で旋回し緩やかに滑空しているのを見つける。それは地上に着地する直前、人へと姿を変えた。
「ニュースペーパーなんざ読んで、殊勝なこったな」
「
……
別に。昔の記事だよ」
広げていた新聞の切り抜きを折り畳んで、ルビーはそれを乱暴にポケットに押し込んだ。
そーかい。軽薄な相槌を打ちながら彼はごそごそと胸元を探り、こんな時でも酒を呷った。曰く、手っ取り早く体を温めるには度数の高いアルコールに限る。だそうだ。この任務が終わったら、精密検査のために入院させてやりたい。そんなことを別の頭で考えながら、ルビーは前方の鋭利な山脈を見据える。
「もうすぐアトラスだ。気を引き締めていけよ」
山を越える以外にも険しい道のりになりそうだ。あちらこちらで遠雷のごとく響き渡るグリムの嘶きに耳を傾けながら、彼は平たいスキットルを元の場所にしまい込んで忠告した。
「クロウおじさんこそ。私の足、引っ張らないでよね」
「そりゃ頼もしい」
ふん、と鼻を鳴らして、クロウはもう一度鴉となって飛び立った。
叔父が先行して辺りの偵察を行い、その後をルビーが追跡する。徒歩で高山を越えるのは骨が折れるが、国境調査も兼ねているためこればかりはやむを得ない。ハンター学校を卒業して最初の任務がこれだなんて無謀だと自分でも思うけれど、どうしてもやり残した「宿題」が、あの稜線の向こう側にあった。
ダストを巡る事件を追いかけていれば、いつか辿り着けるんじゃないかって思っていた。
「
――
ワイス。」
白い息がひとつ切実に零れて、細く立ち揺らぎながら鈍色の空に滲んでいく。奮い立たせるようにルビーは悴んだ手でクレセントローズを強く、握りしめた。
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