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ふうすい
2018-11-09 00:17:37
1207文字
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世界樹
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【昔の作品】金鳥と眼帯レン子の話(世界樹1)
そういえばテキストフォルダに入ってたなと、十年近く前に書いた金鳥と眼帯レン子の話(世界樹1)置いておきます
酒場に、見覚えの無い詩人が居た。
髪を伸ばして、女みたいな顔の頼りなさそうな男。
古びたリュートを持ってる。
私は何だかその人が気になって
狩りと採集でクタクタな体を引きずって、彼に話しかけてみた。
「お兄さん、こんにちは」
「こんにちは」
笑顔になると、余計に頼りなく見える。
「見ない顔ね。エトリアには観光に?」
「ええ
…
そんなところです。
あなたは
…
冒険者ですか」
「ええ、そんなところ」
適当に話しながら、私は何故エトリアで冒険者なんかをやっているのか、ちょっと考えてしまった。
誰とも組まず、ギルドにも入らず、毎日樹海へお小遣い稼ぎ。
家を出た時の、あの情熱的で野心家な少女が今の自分を見たら、失望して憤慨しただろう。
弟への仕送りは続けてるから、あいつに満足な生活をさせてやるっていう夢の一つは達成できてると思うんだけど。
盗賊稼業から足を洗って、せっかく名誉も財産も手に入るチャンスを掴める所に来たのに。
「隣
…
いい?」
「どうぞ」
私は
…
ただ、逃げてるのかも知れない。
私を捨てたあの男の思い出から。
そんな事で情熱を無くしてしまった自分から。
もう怒りや恨みは抱いてない。
というか、怒りを通り越して呆れてしまって、どうでも良くなってしまった。
情熱を無くしたのはその時かな。
「お兄さん、一曲歌ってよ」
「いいですよ
…
どんなのが良いですか?」
私は少し考えて
「思いっきり暗いヤツお願い」
彼は苦笑して、リュートを構える。
そこで、気付いた。
私はこの人の目つきがずっと気になってたんだ。
観光にしては真剣過ぎる。
張りつめた何かを、この人の周りに感じる。
「
…
お兄さん、観光って嘘でしょ」
彼は歌い始めようというところで思いがけない指摘を食らい、顔をこちらに向けた。
は?っていう顔だ。
「誰かを捜しに来たんでしょ」
思い切り当てずっぽで言ったんだけど、男はとても驚いた顔をして
「どうして分かったんですか?」
なんて返してきた。
私は笑いをこらえながら、女の勘よと言ってみた。
「で?
別れた恋人でも捜しに来たの?」
詩人はちょっと俯いて、それからいきなり顔を上げて、
冗談を言うような明るい口調でひそひそと
「実は生き別れた弟を捜してるんです」
と答えた。
私も同じようにひそひそと、見つかるといいわねと言った。
冗談に決まってるから、軽い気持ちで。
詩人は私の言葉に微笑んだ。
一つ思いついて、言ってみた。
「お兄さん、樹海に潜る気無い?」
「予定は有りませんが、どうしてです?」
「あなたが行くんだったら、私がついていってあげる。
こう見えて、弓の腕はちょっとしたもんなのよ」
何でこんな事を言う気になったのかは分からないけど、
「じゃあ、その時はお願いしますよ」
って彼が笑うのを見て、この言葉を冗談で済ます気は無くなった。
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