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望月 鏡翠
2024-01-26 23:57:51
822文字
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日課
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#1249 「西瓜」「偽物」「粉屋」
#毎日最低800文字のSSを書く
近所に住む気のいい老夫婦のもとに、頂き物のそうめんを分けに行った。夏場の食欲が減退する時期に、そうめんはいくつあっても困らない。とはいえ、同じものばかり食べていても飽きてしまうからだ。
それなら美味しく食べてくれる人と分け合った方が、よほど良い。ということで、そうめんを持って行った。
隣の家の夫婦は、ちょうど西瓜を冷やしていた。息子の家からもらったのだが、もう年をとった二人で食べるには大きすぎるということで、一玉そのまま貰ってしまった。家で切り分けて食べやすくして、四分の一くらいをまた渡しにくればいい。
隣家とはこうして、ものを渡してお返しして、無限にやり取りがある。
喉を潤す水の塊ひとつ、大切に持ち帰る。
隣の家だから、すぐに家には着くはずなのにその日は妙に距離が遠い。暑いからふらついているのだろうか。
玄関のドアからドアへ。その道中で声をかけてきたのは、粉屋の主人だった。
「いいもの持ってるな。少し俺に分けてくれないか。半分こ仕様じゃないか」
首を傾げる。妙なことを言うものだ。
私は粉屋の主人の姿をまじまじと見つめたあと、その正体に気がついた。
「あんた偽物だろう。あの男は仕事中にこんなところにやってこないぜ」
そして西瓜も好まない。うどんにしか興味がないから、今日だってずっとこねているはずだ。うどんに合わせるなら、西瓜よりもスダチの方がいい。彼ならそう答えるはずだ。
粉屋の主人から耳が生えた。毛が生えて尻尾が生え、そして体が縮んで別の姿になった。蹲っていたのは、小さなたぬきだった。すぐにバレる変装をして一体何をしにきたのだろう。
「いいなぁ、西瓜食べたかった」
たぬきになってしまったので、表情がわからないが逃げ出そうとするたぬきに私は声をかける。
「そんなことしなくても、普通に西瓜を食べたいといえばいいだろ」
大きな西瓜だ。子狸に切れ端を分けてやるくらい、どうということはない。
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